連載にあたって
小学校に入学したばかりの最初の図画・工作の授業で『将来なりたい(就きたい)仕事』を描かされました。今も手元にあるその絵に描かれているのは飛行機の操縦士です。それが今はフォントの開発・販売会社にいる、何処で道を間違えたのだろう。
潜水艦の潜望鏡を造っていたことがあります。
正確には、大手の光学機器製造会社の潜望鏡組み立て部門に配属されていたことがあります。以下は今も忘れられないその時の話です。
潜望鏡の先端部にプリズムを組み込む職長(職人の親方)が熱を出して休んだ時のことです。替わって弟子の職人が設計図通りに組み込んだのですが、何度やり直しても仕様書通りの精度が出ません。
思いあまった課長(責任者)が弟子の職人と一緒に親方の下を訪ねて事情を説明しました。親方はいとも簡単に『私は、プリズムを固定するネジの下にピース(紙巻きタバコの銘柄)の銀紙を挟んでいます。』
教えられたとおりに組み立てたところ、仕様書通りの精度が出ました。
手仕事の難しさ、面白さを知った瞬間です。
手仕事の面白さと言えばオーディオ・アンプの組み立てとレコード鑑賞があります。
鉱石ラジオの組み立てに始まり、真空管アンプをいじり、今は買い溜めたLPレコードのジャズを市販のディスクリート・アンプで楽しんでいます。
我が家では音楽CDプレーヤーも使っていますが、デジタルの音楽CDよりもアナログのLPレコード盤の方が間違いなく音が好いのです。感性も問われているのかもしれません。
自動車よりも束縛の少ないバイクでの美術館巡りも楽しみの一つです。特に冬から春へ、夏から秋への季節の変わり目は、バイクだからこその文字通りの「風」になった気分に浸ることができます。過去に起こした事故を反省して今はもっぱら安全運転です。
1999年に開設した個人ホームページに写真と共に訪問した街での体験を残すのは自分史のつもり、2005年から始めたブログは横着者の行動記録になっています。
大した考えもなく引き受けた「ぬらくらコーナー」の執筆です。
今までに書いてきた記事を見ると、自分の世界の狭さが丸見えです。
この世界が少しでも広がるように、自分の手足目耳鼻口を総動員して書いて行きたいと思っています。
著者 Profile
mk88
ダイナコムウェア コンサルタント
1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
デザイン学校卒業後はグラフィック・デザイナーとして活字、写真植字、DTPによる印刷を経験してきた。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任、現在に至る。
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