連載コラム
2013年12月20日

ぬらくら 第37回 Adobe-Japan1

街のショーウインドウがクリスマス飾りで華やぎ、丸坊主になった並木が 青や白のイルミネーションを纏っていよいよ年の瀬に突入です。
慌ただしい年の瀬を控えて皆様は年賀状の準備はお済みでしょうか?
年賀状と言えば素朴な芋判や木版で手を汚しながら一枚一枚手刷りした頃が 懐かしく思い出されます。
今やパソコンとプリンターで写真入りの年賀状が簡単に印刷できる時代、 年の瀬は筆文字が活躍する季節でもあります。
かつてぬらくらコーナーでチラッと触れたことがある日本の印刷業務用の 文字集合規格(*1)についてもう少し詳しくお話ししてみましょう。
この文字集合規格は“Adobe-Japan1”と言い、最新のWindows OSやMacintosh OSが 標準フォントフォーマットとして採用している日本語OpenTypeフォントに採用されています。
“Adobe-Japan1”はAdobe社が策定した文字集合規格で、正式には “Adobe-Japan1 Character Collection for CID-Keyed Fonts”と言います。
収録された文字の一つ一つにAdobe社が定めた固有の番号 (CID / Character ID / 文字識別子)が付いています。
収録されている文字数によって以下のように0から6までのバージョンがあります。


◆Adobe-Japan1-0
1992年に策定されました。
CID番号0から8,283までの8,284文字を収録しています。
OCF(Original Composite Format)(*2)フォントとの字形の互換性を目指して 策定されたものです。
Apple(Macintosh KanjiTalk Version 6)および富士通、NECが策定した JIS83(*1)を元にしたメーカー固有の文字集合をサポートするために必要な 文字を含んでいます。
◆Adobe-Japan1-1
1993年に策定されました。
Adobe-Japan1-0に、CID番号8,284から8,358の75文字が追加された 8,359文字を収録しています。
追加された文字にはJIS X 0208-1990(*1)で追加されたものや Apple(Macintosh KanjiTalk Version 7.1)、富士通、NECのメーカー固有の 拡張文字(*3)が含まれています。
◆Adobe-Japan1-2 これも1993年に策定されました。
Adobe-Japan1-1に、CID番号8359から8719までの361文字が追加された 8,720文字が収録されています。
追加された文字はIBM拡張文字(*3)などで、この追加によって “Microsoft Windows-31J”に対応しました。
◆Adobe-Japan1-3
1998年9月に策定されました。
Adobe-Japan1-2に、CID番号8720から9353までの634文字が追加された 9,354文字が収録されています。
追加された文字は縦書き用の文字や記号類、仮名などで漢字の追加はありません。
Adobe-Japan1-3の文字集合に対応したOpenTypeフォントを “OpenType Std(Standard)”といい、対応フォント名には“Std”が付いています。
◆Adobe-Japan1-4
2000年2月に策定されました。
Adobe-Japan1-3に、CID番号9354から15443までの6,090文字が追加された 15,444文字が収録されています。
追加された文字はJIS C 6226-1978(*1)からJIS X 0208(*1)までの文字を カバーするために不足する文字を追加し、さらにJIS X 0221-1995(*4)の 「付属書1(規定)日本文字部分レパートリ」にある漢字918文字を追加しています。
これらの追加は商業印刷物を作る際に必要とされる文字を極力収録しよう との方針の下になされたもので、ラテン文字の斜体や様々な記号類、縦中横組で必要になる三分の一幅と四分の一幅の文字、分数、などなど多様な文字を含んでいます。
Adobe-Japan1-4の文字集合に対応したOpenTypeフォントを「プロフェッショナル用」 と言うほどの意味で“OpenType Pro”といいます。
対応フォント名には“Pro”が付いています。
◆Adobe-Japan1-5
2002年9月に策定されました。
Adobe-Japan1-4に、CID番号15444から20316までの4,873文字が追加された 20,317文字が収録されています。
追加された文字は“Apple Mac OS X 10.2”の文字集合 (Apple Publishing Glyph Set / APGS)やJIS X 0213:2000(*1)、 国語審議会が2000年に答申した表外漢字字体表などに対応するためのものです。
Adobe-Japan1-5の文字集合に対応したOpenTypeフォントを“OpenType Pr5” といい、対応フォント名には“Pro-5”あるいは“Pr5”が付いていますが、 フォント会社によっては対応していないものもあるようです。
◆Adobe-Japan1-6
2004年5月に策定されました。
Adobe-Japan1-5に、CID番号20317から23057までの2,741文字が追加された 23,058文字が収録されています。
追加された文字はJIS X 0212-1990(*1)やU-PRESS(共同通信社の固有文字) に含まれる文字、その他JIS C 6226-1978(*1)およびJIS X 0213:2004(*1) に対応するために必要な文字が含まれています。
Adobe-Japan1-6の文字集合に対応したOpenTypeフォントを“OpenType Pr6” といい、対応フォント名には“Pro-6”あるいは“Pr6”が付いていますが、 フォント会社によっては対応していないものもあるようです。
以上を一覧表にまとめてみました。
バージョン名 収録文字数 追加文字数 CID番号領域 フォント名表記
Adobe-Japan1-0 8,284 0 - 8283
Adobe-Japan1-1 8,359 75 8284 - 8358
Adobe-Japan1-2 8,720 361 8359 - 8719
Adobe-Japan1-3 9,354 634 8720 - 9353 XXXX std
Adobe-Japan1-4 15,444 6,090 9354 - 15443 XXXX pro
Adobe-Japan1-5 20,317 4,873 15444 - 20316 XXXX pr5
Adobe-Japan1-6 23,058 2,741 20317 - 23057 XXXX pr6

最後に蛇足を。
“Adobe-Japan1”があるからには“Adobe-Japan2”があるのでは…、とお考えの貴方は鋭い。
実際に“Adobe-Japan2”のうち“Adobe-Japan2-0”だけが存在しています。 しかしこの文字集合規格は“Adobe-Japan1-6”が策定されるときに統合され、 現在は非推奨とされています。
“Adobe-Japan1 Character Collection for CID-Keyed Fonts”について、 さらに詳しく知りたいという方は、是非以下のリンク先をご覧になってみてください。
https://www.adobe.com/content/dam/acom/en/devnet/font/pdfs/5078.Adobe-Japan1-6.pdf
【*1】ダイナフォント News Letter(Vol.18)2012年3月30発行 「ぬらくらコーナー『符号化文字集合』」参照。記事はこちら
【*2】OCF(Original Composite Format) DTP普及期に利用された印刷用の和文PostScriptフォントのフォーマットです。初期のPostScript規格は日本語に対する環境が整っていませんでした。 和文フォントを実現するために欧文フォントファイルを多数重ねたような 構造にしてできたのがOCFフォントです。
【*3】メーカー固有の拡張文字 コンピューターのメーカーがJIS文字集合規格に収録されていない文字を、 規格を拡張して独自に収録した文字のことです。 パソコンの世界ではNEC特殊文字やNEC IBM選定文字などが知られています。 これらの文字は“Adobe-Japan1-3”に対応したフォント(OpenType Std)に収録されています。
【*4】JIS X 0221-1995 国際符号化文字集合(UCS)

 

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

著者
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言