連載コラム
2013年04月24日

ぬらくら 第30回 ポイント

Brilliant、Gem、Diamond、Pearl...ぬらくら子にはとんと縁のない宝石の話を 始めるような書き出しですが、話題急転。
印刷物の制作にWYSIWYG (ウィジウィグ/What You See Is What You Get/見たままが得られる) という 概念とともにDTP (Desk Top Publishing) が導入されたのは1980年代の中頃の ことでした。
この時期にApple社のパソコンMacintosh、Adobe社のページ記述言語PostScript、 Aldus社のページ・レイアウト・ソフトウエアPageMakerの三つが揃ったことが その背景にありました。
DTPの世界で文字の大きさを指定するときにポイント (point/pt) という単位が 使われます。
この文字の大きさの単位ポイントは活字のサイズに由来する単位です。
1ptが1/72inchに近いことからMacintoshはモニターの解像度を72dpi(dot per inch) とし、モニター上の1dotを1ptであるとしました。
初期のMacintoshのモニターは白黒(二値)表示でグラデーションを表示する ことができませんでした。
MacintoshのプリンターImageWriterも白黒印刷しかできない72dpiの ドット・インパクト・プリンターでしたが、モニターとプリンターの解像度を 合わせることによってWYSIWYGを実現していました。
この1pt = 1/72dpiという単位を今はDTP Pointと呼ぶようです。 具体的には 1pt = 1/12pica = 1/72inch = 0.013888inch = 0.3527mm です。この数値は実際の活字のポイント・サイズとは異なります(後述)。 活字の大きさの単位ポイントには国際規格が無く地域や時代によって異なります。 歴史的にはフランスのピエール・シモン・フルニエ(Pierre Simon Fournier, 1712-1768)が提唱したフルニエ・ポイント (Fournier's point) が最も古く、 その後これもフランスのフランソワ=アンブロワーズ・ディド (Francois-Ambroise Didot, 1730-1804)とその息子フィルマン・ディド (Firmin Didot, 1764-1836)によってフルニエ・ポイント・システムを改良した ディドー・ポイント・システムが1780年代初めに提唱されます。
フルニエ・ポイントの実際の寸法は諸説あって定かではありません。
ディドー・ポイント・システムは広く欧州各国で採用されてきたサイズです。
具体的には 1point = 1/72 French Royal inch ≦ 0.3759715104mm ≒ 0.3759mm です。
欧州大陸で普及したディドー・ポイント・システムですが、 このポイント・システムが提唱された後もアメリカやイギリスでは採用されず、 活字の大きさの基準が統一されない時代が100年近く続きます。
1871年のシカゴ大火が契機となり、1886年に全米の活字鋳造業者がナイアガラに 集まって、ジョルダン社 (MacKellar, Smiths & Jordan Co., Chicago) が 提唱する「パイカ活字の1/12を1ptとする」ことが採択され、ようやくアメリカの 活字サイズの基準が定まりました。
具体的には1pt = 1/12 Traditional pica = Exactly 0.01383inch = 0.35136mm です。 これをアメリカン・ポイント・システムといいます。
イギリスも1898年にこのポイント・システムを採用します。 ディドー・ポイント・システムもアメリカン・ポイント・システムも1ptを インチ (inch)に換算すると割り切れない数値になるのは、活字の寸法そのものを 基準にしているからです。
ポイント・システムが確立されるまでアメリカやイギリスでは活字のサイズ それぞれを固有の名前で呼んでいました。
冒頭にあげたBrilliant、Gem、Diamond、Pearlがその一部です。
以下が活字の大きさとその呼称の一覧になります。

 
ポイント 呼称
3 Minikin, Semi-nonpareil
3.5 Brilliant, Half-minion
4 Gem
4.5 Diamond
5 Pearl
5.5 Ruby, Agate
6 Nonpareil
6.5 Emerald
7 Minion
8 Brevier
9 Bourgeois
10 Long Primer
11 Small Pica
12 Pica
14 English
16 Two Line Brevier, Columbian
18 Great Primer
20 Paragon
22 Double Pica
24 Two-line Pica
28 Two-line English
36 Two-line Great Primer
44 Two-line Double Pica
48 Canon, Four-line Pica

【参考資料】
『海外広報の時代』
松岡紀雄 著、財団法人経済広報センター 1982年刊
 
タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

著者
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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