ダイナフォントストーリー

カテゴリー:ダイナフォントストーリー
2025/02/05

3年連続でフォントを制作している大学生・茂木 駿太郎さんにインタビュー

2022年制作「もえがら」/2023年制作「ふぉーくろあ」/2024年制作「あきね」

2022年制作「もえがら」/2023年制作「ふぉーくろあ」/2024年制作「あきね」
東京工科大学の茂木 駿太郎さんがフォント制作ワークショップにて制作した2022年制作フォント「もえがら」/2023年制作フォント「ふぉーくろあ」/2024年制作フォント「あきね」

 
茂木さんはフォント制作ワークショップに3年連続参加
茂木さんはフォント制作ワークショップに3年連続参加
 
ダイナコムウェア株式会社が東京工科大学様との産学連携により2022年から2024年まで継続して実施している「ダイナコムウェア株式会社×東京工科大学デザイン学部 フォント制作ワークショップ」に3年連続で参加していただいた茂木 駿太郎さんが制作したフォントが「日本タイポグラフィ年鑑2024」および「日本タイポグラフィ年鑑2025」で入選を果たしました。
3年連続でフォントを制作している大学生の茂木 駿太郎さんに制作したフォントやご参加いただいたフォント制作ワークショップに関してお話を伺いました。

 
一日本タイポグラフィ年鑑2024および日本タイポグラフィ年鑑2025の入選、誠におめでとうございます。この度の入選やフォント制作ワークショップに3年連続で参加されていることなどから文字に関する高い熱量を感じとれるのですが、まずは茂木さんが大学で専攻されている分野などから教えていただけますか。
デザイン学科の視覚伝達コースで主にグラフィックデザインを専攻しています。フォント制作はワークショップに参加した時が初めてですが、高校の頃から作字をしていました。文字分野には特に興味があるので重点的に勉強してきました。

 
一以前から作字をされていたのですね。それでは最初のワークショップで制作されたフォントから教えていただけますか。
2022年のワークショップでは「もえがら」というフォントを制作しています。好きな小説や映画などをもとにイメージしてかな書体を作成しようというのがワークショップのテーマで、SF小説の “華氏451度” をもとに制作しました。小説の内容が焚書の話なので燃え縮れた文字にしています。カリグラフィーペンを使ってフラクトゥールをひらがなに当てはめることで表現しました。使う箇所が限られるかもしれませんが、自分が作ったフォントの中で一番特徴的なデザインだと感じていて気に入っているフォントでもあります。また単純に制作していて楽しかったです。

 
もえがら
もえがら
茂木さんが2022年に制作したフォント。フラクトゥールは中世ヨーロッパで使われた写本やカリグラフィーの書体を基にした活字体、ブラックレターの一種。華氏451度はアメリカ合衆国の小説家であるレイ・ブラッドベリによって1953年に発表されたSF小説。

 
もえがらの下書き1
もえがらの下書き1
もえがらの下書き2
もえがらの下書き2
 
一アートな感じでライブポスターなどにも映えそうです。こうして実際に作字とフォント制作の両方を体験してみて違いなどは感じましたか?
はい。作字はおもいっきり見せるための文字なので良い部分が突出していれば少しの粗などもごまかしが効くというか、粗も味になったりしますが、フォントの場合はそれが許されない部分があり、きめ細やかな調整が必要なことを改めて痛感しました。また自分がこれまで作字で作ってきたのが漢字中心だったのに対して、ワークショップはかな書体の作成だったこともあり、同じテーマで50音の文字を作っていくというのはこれまで体験したことがなかったのでその難しさもありました。

 
一難しさを口にされつつも2023年もワークショップに参加されるとはやはり文字に対する高い熱量が感じられます。それでは2023年に制作したフォントについて教えていただけますか。
2023年に制作したのが “遠野物語” をテーマにしたフォント「ふぉーくろあ」です。武骨でありつつもポップさや温かみも感じられる文字を目指したフォントです。“何で書くか、何に書くか” というワークショップの講義から派生して、筆で書いた文字のストロークの太さを、太い部分と細い部分による二極化させることで武骨さを表現しました。タイポグラフィ年鑑2024にも入選させていただき、自分の自信にもなったフォントです。

 
ワークショップで制作したフォントをブラッシュアップして見事タイポグラフィ年鑑に入選
ワークショップで制作したフォントをブラッシュアップして見事タイポグラフィ年鑑に入選
 
2023年制作「ふぉーくろあ」
ふぉーくろあ
茂木さんが2023年に制作したフォント。タイポグラフィ年鑑2024に入選。遠野物語は柳田国男による岩手県遠野地方に伝わる逸話、伝承などを記した説話集。フォークロア(ふぉーくろあ)とは古くから伝わる風習や伝承、またはそれを対象にした学問。  

 
ふぉーくろあの下書き1
ふぉーくろあの下書き1
 
ふぉーくろあの下書き2
ふぉーくろあの下書き2
 
一「ふぉーくろあ」は絵本やお土産のパッケージなどの使用も味わい深そうな気がします。2024年にはバリアブルフォントに挑戦されていますが、制作フォントについて挑戦の経緯も含めて教えていただけますか。
ワークショップを担当してくれている舟山先生がすごいバリアブルフォントを色々試作されているのを目の当たりにしていて、自分自身もフォント制作の中で新しいことに挑戦したかったのでチャレンジしてみました。そこで制作したのが芥川龍之介の短編小説 “藪の中” を題材にした「あきね」というフォントです。侍の死をめぐって語られるそれぞれの証言の食い違いや移ろう真実をフォントで表現しようと思って制作しました。フォントはよく声に例えられますが、同じ作品の中でそれぞれの声を違うフォントで表すと統一感が出にくくなってしまい、バリアブルフォントはその解決策にもなりうると思いました。各々が喋る口調であったり声の大きさであったり、そうした部分を平体と線の強弱で表現したフォントです。

 
2024年はバリアブルフォントに挑戦してタイポグラフィ年鑑に2年連続で入選
2024年はバリアブルフォントに挑戦してタイポグラフィ年鑑に2年連続で入選
 
あきね
あきね
茂木さんが2024年に制作したバリアブルフォント。タイポグラフィ年鑑2025に入選。バリアブルフォントは文字の太さや幅などを自由に調整できる新しいフォント。「あきね」では太さと平体を軸として設定。

 
あきねの下書き1
あきねの下書き1
 
あきねの下書き2
あきねの下書き2
 
一バリアブルフォントに挑戦の末、しっかりとタイポグラフィ年鑑2025にも入選され、結果も出されてすごいです! 3年間で作られたフォントの紹介、ありがとうございました。茂木さんはワークショップに3年連続で参加していただけていて、こちらとしてもとてもありがたいのですが、連続で参加していただけている理由などありましたら教えていただけますか。また3年間のワークショップでフォントに関する意識の変化などはありましたか。
フォントは作るのに覚悟というか、ひらがなだけでも50音作る労力を意識していかなければならないため、ワークショップという機会はフォントを作る上での原動力として活用させていただいています。先生やダイナコムウェアさんの書体デザイナーさん達にフィードバックをもらえるのも参加している理由です。また、年を追うごとにレベルが上がっていってるのもこのワークショップの醍醐味だと思っています。作字は高校の頃からしていましたが、その頃はフォントを作るのは大変すぎるからやらないだろうなぁと思っていました。それがこうしてワークショップという機会に巡り合ってフォントを制作する機会を得ましたが、想像していた通りとてつもない大変な作業が待っていて……、普段使用しているフォントの工夫の量の多さや、その情熱、労力は計り知れないものがあると改めて思うようになりました。


一こうしてフォント制作の大変さを感じならも3年間続けてこれたモチベーションはどこから来るものなのでしょうか。
やっぱり文字が好きという事に尽きると思います。文字は絵よりも直接的に伝わる反面、少し大事な場面を欠くというのが弱点だと感じているのですが、そこを補完できる字形を設計することに面白みを感じていて、それが制作する上でのモチベーションに繋がっていると思います。

一文字に対する熱意が強く伝わるコメント、誠にありがとうございます。それでは最後になりますが、今後制作してみたいフォントや差し支えない範囲でお考えの将来について教えていただけますか。
いずれ本文組の書体にもチャレンジしたいと思っています。ただ果たして学生の間にできるものなのかなど自問したりもしています。進路に関しては書体デザインに関わるのも面白いなぁと思ったり、文字を使う側として仕事をしていき書体デザインを趣味で続けていくかなど、色々と模索している最中です。


一おぉー、本文組の書体にっ!! 思わず唸ってしまいました。次のフォントも含めて、これからのご活躍も楽しみにしています。本日は誠にありがとうございました。

 
東京工科大学の茂木 駿太郎さんProfile写真
茂木 駿太郎
Profile●東京工科大学 デザイン学部 視覚伝達コース大学では主にグラフィックデザインを学ぶ。
文字に興味があり、作字やフォント制作を通して理解を深めている。

 
今回の記事の他に、茂木さんが冊子デザインを担当した「ダイナコムウェア株式会社×東京工科大学デザイン学部 フォント制作ワークショップ2023 記録集」採用事例に関する記事や舟山先生と茂木さんが語るワークショップの3年間の変遷に関する記事も公開中となりますので、ぜひご一読ください。
 

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