フォントデザインがブランド価値をいかに高めるかを探求した実りある時間
「現在、人々のフォントに対する認識は、過去どの時代よりもはるかに深いものになっています」
これは世界的なフォントメーカーであるMonotypeのエグゼクティブクリエイティブディレクター・Charles Nix氏の「WOW TYPE 国際フォントフォーラム」での言葉です。
ダイナコムウェアとMonotypeの初共催による「WOW TYPE 国際フォントフォーラム」が2024年11月20日に台湾・台北文創ビルで開催され、会場に集まった100名以上のデザイナー、広告主、マーケティングのプロフェッショナルプロッフェショナル達により、フォントデザインという分野、そしてそれがブランディングの構築にどのように貢献するのかといった探求が行われました。
ダイナコムウェアではこれまでフォントデザイナーが、公で積極的に発言する機会が少なかったことについて、ダイナコムウェアの副社長(Vice President)である李安は会場で次のように述べています。
「ダイナコムウェアはこのおよそ40年間、フォント業界に黙々と貢献してきました。それは、当社のデザイナーが文字を磨き上げることにのみ専念した職人達だからです」
しかし近年、フォントデザインという専門分野が世間の注目を集めるようになり、フォント業界やフォントの活用方法について関心を持つ人達は確実に増えてきています。
およそ40年に渡ってフォントに深く関わり、豊富で貴重な経験を蓄積してきたダイナコムウェアではこうした社会の変化やニーズを汲み取り、その変化に対する方針として李安は次のように述べています。
「現在、人間とテクノロジーとの関係が目まぐるしく変化していく中、我々が長年積み重ねてきたフォントデザインの経験を発信し、文字がどのように人の感情や温もりを伝えることができるかを皆さんに知っていただきたいのです」
また、Monotypeのシニアバイスプレジデント兼マネージングディレクターのChristopher Kollat氏は会場にこそ来られませんでしたが、特別に録画した挨拶映像の中で両社の連携への期待を表明し、イベントを通じて達成したい目標について「フォントデザインとその技術の知見を共有し、独自性と影響力のあるブランド構築にそれらがどのように役立つかを分析することで、タイポグラフィを活用したブランドメッセージやブランドイメージの発信、または顧客体験の向上についての探求と交流をすること」と述べました。
そして最後に「我々Monotypeは台湾のデザイナーや企業、ブランドなどと連携することを期待しています。新しいアイデアの探求とともに、より開放的な発展、交流の一助になれればと思います」という言葉で締めくくりました。
▲ダイナコムウェア副社長(Vice President)・李安による開場挨拶
▲Monotype シニアバイスプレジデント兼マネージングディレクター・Christopher Kollat 氏による挨拶映像
フォントデザインのインスピレーションや理論からブランディング支援の具体事例まで「フォントデザインがいかにブランド価値を高めるか」を中心にして、多方面からアプローチした対談が繰り広げられていきました。
優れたフォントデザインは視覚的効果だけでなく、ブランドの市場拡大にも支援
The Brand Shopの調査によると、ブランドの第一印象の94%はデザインに影響されており、一貫性のある視覚的表現はブランド収益を33%向上させることができるとされています。これにより、視覚的言語がブランドイメージの構築とビジネス発展においていかに重要であるかが浮き彫りになりました。
Monotypeのエグゼクティブクリエイティブディレクターであり、「Helvetica Now」のタイプディレクターでもあるCharles Nix氏は「フォントデザインは単なる視覚的記号の創造ではなく、ブランド価値の表現媒介としても重要な役割を果たしています。優れたフォントデザインはブランド理念を伝え、多彩で印象的なブランド識別へと繋げてくれます」と述べました。
Charles氏はブランド運営におけるフォントの価値について、「差別化」の重要性を強調しました。彼は航空会社を例に挙げ、その企業が使用するフォントに「我々はただの航空会社ではなく、業界トップの航空会社であるのだ」というメッセージが内包されていると説明しました。
また、定番フォントの「Helvetica」の応用とリデザイン、さらには「M&M'S®」のブランドリニューアルを具体例として、フォントデザインとブランド構築との緊密な関係による分析を披露しました。
30年におよぶフォントデザインの経験を持っており、国際的なデザイン賞を数多く受賞しているダイナコムウェアのシニアフォントデザイナー・姜鳳怡(Olive)は、自身のデザイナーキャリアにおける代表作である「金文体」、「甲金文体」、「金花体」の創作過程を披露しました。
彼女はゼロから始まるフォントデザインの旅とそれらフォントの裏側に隠れていた真摯で濃やかな感情を語り、「フォントデザインは幸せを伝え、多面的に気持ちと思いを深く表現することができます。フォントを活用することで、より豊かな表現が可能になります」と述べました。
グローバル化時代における多言語フォントの必要性
グローバル化が進む現代社会において多言語フォントの開発は重要な課題となっています。ダイナコムウェアのフォントデザイナーである林偉駿と黃靖婷は「金剛黒体」を例にユーザー中心のデザイン理念を深く掘り下げました。
10年前にマレーシアから台湾に留学し、現在はフォントデザイナーとして活躍する林偉駿は、卒業作品の「軽妝黒体」は台湾の金點概念設計獎(Golden Pin Concept Design Award)を受賞した経歴を持っています。
彼はダイナコムウェアのフラッグシップフォントである「金剛黒体」のデザインディテールを掘り下げ、専門的な視点から「デジタル表示」と「グローバル化によるニーズ」に応えるための設計目的を全面的に解説しました。
「機能性重視のフォントとして、金剛黒体は美学へのこだわりだけでなく、視認性や可読性、シチュエーションを問わないレイアウトまた統一したデザインで各地域言語に対応することを目標に開発されています」と述べています。
「外国語のフォントデザインにおいて最も難しいのは、その文字の正確性を判断できないことです。私たちは母語話者やユーザーの視点から考えることができないため、文字の美しさや組版での効果を判断する基準を定めるのが難しいのです。そこで、ダイナコムウェアは外部からその言語の母語話者を外国語講師と顧問として招き、文字の書き方の正確性や、私たちが開発した多言語フォントは母語話者にとって快適に読めるフォントであることを確保します」
黃靖婷が披露したこの顧問達と擦り合わせを行いながらしっかり手を組んでフォント開発に奮闘してくエピソードはとても面白い内容で、会場は大きな笑いに包まれていました。
土井氏は講演の中で「優れた書体デザインは言語の障壁を超え、ブランドのグローバル展開のキーとなる視覚的表現を支援します」と述べています。
一方、ダイナコムウェアはアジアを拠点とし、文字という素晴らしい文化を受け継ぎ、中国語フォントから多言語フォントへ、台湾のデザインを世界へと押し出すべくフォント業界に貢献してきました。
今回の「WOW TYPE 国際フォントフォーラム」は台湾のフォントデザインにおける重要なマイルストーンであり、アジア太平洋地域全体を見ても非常に意義のある進展です。
国内外問わず多くのデザイン賞を受賞しているダイナコムウェアと世界的ブランドのMonotypeは、国境と文化を越えたフォント開発の専門家による交流が台湾のフォントデザイン業界により多様な視角を提供するとともに、デザイン業界に新たな視点を切り開き、ブランド価値の創造においてフォントデザインが果たす重要な役割を示すことの一助になれればと願っています。
ご来場いただいた方々の盛大な拍手と熱気に包まれ幕を閉じた今回のイベントは、両社にとって実りある時間となり、確かな手応えを感じさせてくれるものになりました。
そしてこれから先続く「デザインがもたらす啓発と可能性」にも大きく寄与し、より大きく美しく花開くことでしょう!
「WOW TYPE」ハイライト動画はこちら