安定感のある “かな” による新たな水袖の文字 -京劇体A-
ダイナフォント2024年新書体「京劇体A」
2003年にリリースされたダイナフォント「京劇体」をご存じですか?
書体名の由来となる “京劇” とは中国の伝統的な演劇の1つです。その京劇で着られる衣裳の袖の端の白く長い絹の部分を水袖と言い、演目内で水袖がひらひらと揺らぐ姿はとても優雅な印象を受けます。
さてリリースから20年以上が過ぎ、人気書体として様々な場面で活用され、既に確固たる地位を獲得している「京劇体」が2024年の秋、かなを刷新した新書体「京劇体A」として生まれ変わりました。
新たなかなデザインを担当したのはダイナコムウェア書体デザイナー・中村 陸人です。
今回のダイナフォントストーリーでは、人気書体の新バージョンとなる「京劇体A」について、かなデザインを手掛けた中村 陸人と共に紐解いていきます。
従来の「京劇体」と「京劇体A」の違いは新しい “かな” を採用している点です。
それではどのような違いがあるのか「京劇体A」のコンセプトを紐解いていきましょう。
「京劇体」の漢字デザインは終筆へ向かって太くなるコントラストのある線や、線の傾き、太さのランダムを特徴としており、従来の「京劇体」のかなデザインでも漢字のランダムな部分を踏襲し、末広がりな線を採用しています。
対して「京劇体A」のかなデザインでは末広がりな線を継続しながら、ランダムだった部分を調整し、標準的な字形に近づけることで、安定して見えるかなデザインを採用しました。
とめやはらいをはっきりさせて安定させる
文字の下の部分を太くして安定感を出す
右上がりに角度を揃えて活発ながら整った印象に
「京劇体」はゴシック体をベースに、中国の伝統演劇である “京劇” で着用する衣装の袖に付けられた “水袖” と呼ばれる白い絹をモチーフにして喜怒哀楽を表現した人気書体です。
「京劇体A」では「京劇体」と異なる、安定感のある新たなかなを収録しています。
京劇体A W3のフォントシミュレーションはこちら
京劇体A W5のフォントシミュレーションはこちら
京劇体A W7のフォントシミュレーションはこちら
2024年秋の新書体としてリリースに至った「京劇体A」のかなデザインを担当したダイナコムウェア書体デザイナー・中村 陸人本人に書体に関してインタビューしていますので、ご紹介します。
―「京劇体A」の特徴を教えていただけますか。
ストロークに太さのコントラストがあり活発な印象がありながらも安定感も兼ね備えた点がこの書体の特徴です。
一従来の「京劇体」との差別化で心掛けたことを教えていただけますか?
従来の「京劇体」のかなは奔放で伸びやかなデザインが特徴でしたが、「京劇体A」のかなはそうしたデザインの特徴を控えめにして、ある程度の長さのある文章が組めるような落ち着きのある形を目指しました。
一「京劇体A」の活用方法を教えていただけますか?
デザイン性がありながら、やや落ち着いた形をしているので、「京劇体」の活発な印象をもたせつつ、ロゴタイプだけでなく、文字量が元の京劇体より多い、リード文などにも活用できると思います。
中村 陸人が手掛けるダイナフォント2024年秋の新書体フォントストーリー一覧
1996年生まれ。群馬県出身。大学在学中にフォント作りに興味を持ち始め、大学院ではタイポグラフィを専攻する。
大学院卒業後、ダイナコムウェアに書体デザイナーとして入社。
ダイナコムウェアの書体デザイナーとして主にデザイン書体のかなを担当し、「龍門石碑体A」「京劇体A」「POPミックスA」のかなデザイン、「金蝶体B」の欧文デザインを手掛けている。
「DynaSmart V」は、国内外のアワードを受賞した優れたデザインのフォントや多言語フォントを含むダイナフォント全書体を収録し、印刷物、Webデザイン、デジタルコンテンツ、映像・動画、ゲームといった幅広いコンテンツにダイナフォントを許諾対応した、安心の年間ライセンスです。
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