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2024/10/16

理想の欧文を求めて -金蝶体B-

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ダイナフォント2024年新書体「金蝶体B」

理想の欧文を求めて -金蝶体B-
時間に追われがちな現代社会に詩情の趣を持つ文字でゆとりのある生活を見つめ直すという挑戦を行い、2024年グッドデザイン賞を受賞するなど大きな注目を集めているのが2024年春の新書体「金蝶体」となります。
・詩情のある空間を作り出し緩慢な生命の本質を取り戻す文字「金蝶体」が2024年グッドデザイン賞を受賞 その「金蝶体」はこちら

その話題の新書体「金蝶体」ですが、2024年の秋に早くもその新バージョンとなる「金蝶体B」が誕生しました。
台湾の有名な詩人である周夢蝶(1920-2014)の小楷から着想を得て、「金文体」や「甲金文体」、「金花体」など数々のダイナコムウェア代表書体を手掛けてきた姜 鳳怡(Olive)がデザインした「金蝶体」の新欧文を担当したのは若き書体デザイナー・中村 陸人です。
今回のダイナフォントストーリーでは、 “蝶” が運ぶ文字のバトンにより2024年10月に羽化したばかりの「金蝶体B」について、欧文デザインを手掛けた中村 陸人と共に紐解いていきます。

 
漢字と欧文の理想的なバランスを追求した「金蝶体B」
「金蝶体B」の欧文デザインのコンセプトは、漢字との理想的なバランスを持つ欧文です。
中村は漢字とのバランスを模索する過程で、「金蝶体」の漢字が持つ特徴的なデザインや雰囲気に欧文を馴染ませるという1つの答えを導き出しました。
そこで「金蝶体」の筆の動きに裏打ちされた特徴的な漢字のデザインを、欧文にも当てはめようと筆の質感が感じられる欧文のデザインを試みます。
しかし漢字と欧文では文字の構造が異なるため漢字の書き方や要素をそのまま当てはめることができず、欧文にあった方法を模索しながら、アプローチを続けていきました。
それでは「金蝶体B」が取り入れた欧文のデザインについて詳しく解説していきます。

 
○大胆な構成
はらいの表現
フトコロの狭さやはらいの伸びやかさを表現するためにxハイトに対してアセンダーやディセンダーを伸ばす
 
重心が高い長体の字形
xハイトを低くすると重心も低くなってしまうため、ベースラインをやや高くしたり、アセンダーやディセンダーの高さに注意してバランスを取りいれて調整
 
○線の質感の表現
速さのの表現
速さがありながらも真面目な印象にするために全体をやや傾けることで速度感を出す
 
線のコントラスト
太さのコントラストに手書きのニュアンスを加えるために一本の線の中にもゆらぎをつける
 
○手書きのデザイン
手書きのニュアンス
手で書いたような漢字に合わせるため、手書きのニュアンスがある古いセリフ体を字形の参考にデザインした
 
 
アナログ感をつくる
にじみを作ったり、エレメントの形に違いをつけたりして手書きの雰囲気を演出
大胆な構成や線の質感を考慮するなど漢字と欧文のバランスを追求し、漢字のデザインに馴染ませていくことで「金蝶体B」は情緒的なあたやかみがありながらもすっきりした印象の書体として完成しました。
 
○金蝶体B 書体見本

金蝶体B 書体見本
「金蝶体」は台湾の高名な詩人である周夢蝶氏の小楷書道から着想を得て、手書きの慎重さとぬくもりをそのままに “蝶” をコンセプトに、躍動する生命力を表現した毛筆系書体です。
「金蝶体B」では2024年の春に先行リリースした「金蝶体A」と異なる筆の質感にこだわり漢字の雰囲気により近づけた新たな欧文を収録しています。
・「金蝶体B」のフォントシミュレーションはこちら
・「金蝶体」について更に詳しく紐解いたダイナフォントストーリー「DynaFont PICK UP書体-金蝶体」はこちら

 
○欧文デザイン担当 書体デザイナー・中村 陸人へのインタビュー
2024年秋の新書体としてリリースに至った「金蝶体B」の欧文デザインを担当したダイナコムウェア書体デザイナー・中村 陸人本人に書体に関して質問していますので、ご紹介します。
―「金蝶体B」の特徴を教えていただけますか。
漢字のみずみずしい筆のニュアンスを取り入れた欧文のデザインがこの書体の特徴です。漢字に合わせて、コントラストをつけています。

一「金蝶体A」との差別化で心掛けたことを教えていただけますか?
「金蝶体A」の漢字・かなと欧文の関係は、一方は筆で書かれていて一方はセリフ体になっているという異なる作り方をしています。これはそれぞれの文字によってルーツが異なるためです。対して「金蝶体B」では、漢字やかなの作り方を欧文のデザインに取り入れ両者を馴染ませるように制作しました。

一「金蝶体B」の活用方法を教えていただけますか?
「金蝶体A」の欧文が鋭く端正なデザインであることに対して、「金蝶体B」は墨の雰囲気があり柔らかい形をしているので、漢字やかなの柔らかい印象と地続きで欧文を使用したい場合に向いていると思います。

一ダイナコムウェアではこれまで “かな” を中心にデザインされてきましたが今回、欧文のデザインを手掛けてきた感想を教えていただけますか。
かなと欧文は字形も作り方も異なる部分が多いため、思うようにいかない場面が何度もありましたが、制作の中で上手くスタイルをまとめられるようになったり、字形のバランスの取り方にかなとの共通点を見出したりと、今までのかなの制作で培った経験を活かせる場面があったことが印象に残っています。

一完成まで大変な苦労があったと思いますが、最後に「DynaSmart V」の新書体としてこの度、リリースに至った感想などいただけますか。
「金蝶体」は特徴的で独特なデザインをしているため、そこに倣いつつ単体の文字としても使える文字として完成させるのは大変でしたが、同時にとても興味深く、挑戦しがいもありました。検討を重ねて完成した文字は「金蝶体」の流れるような筆致を感じさせるものになっています。そうした文字と文字の関係を想像しながら使っていただけるとさらに味わい深い書体になると思います。今後は今回の欧の制作で得た経験をかなの制作に活かしていきたいです。

 
○金蝶体B 活用例
金蝶体B 活用例

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中村 陸人
中村 陸人
1996年生まれ。群馬県出身。大学在学中にフォント作りに興味を持ち始め、大学院ではタイポグラフィを専攻する。
大学院卒業後、ダイナコムウェアに書体デザイナーとして入社。
ダイナコムウェアの書体デザイナーとして主にデザイン書体のかなを担当し、「龍門石碑体A」「京劇体A」「POPミックスA」のかなデザイン、「金蝶体B」の欧文デザインを手掛けている。

「金蝶体B」を含め、ダイナフォントが全書体使える年間ライセンス「DynaSmart V」

「DynaSmart V」は、国内外のアワードを受賞した優れたデザインのフォントや多言語フォントを含むダイナフォント全書体を収録し、印刷物、Webデザイン、デジタルコンテンツ、映像・動画、ゲームといった幅広いコンテンツにダイナフォントを許諾対応した、安心の年間ライセンスです。
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