VIDEO SALON2024年5月号 特集「映像と文字」より
取材・構成・文◎編集部 片柳 編集協力◎村松美紀 協力◎ダイナコムウェア株式会社
本記事は2024年4月19日に発売された「VIDEO SALON2024年5月号」から転載させていただいています。
映像内の文字で大きな役割を担っているが、意外とおろそかにされやすいフォント。今回、映像エディターのナカドウガさんに登場いただき、「DynaFont(ダイナフォント)」を例に、映像の魅力を高めるためのフォント活用法を教えてもらった。
こんにちは。ナカドウガです。私は約20年、番組制作会社に映像エディターとして務めていました。今回はその経験から文字やフォントにまつわる大切なことをお話ししたいと思います。まず映像制作における文字の役割はふたつあります。ひとつ目は映像にまつわる情報をテキストで補足すること。例えばニュース番組などで、事件現場の映像とともに日付や場所の情報をテロップで出す、などです。ふたつ目は映像をテキストでデザインすること。フォントや色などで画に装飾したり文字を動かしたりと、クリエイティブを加えて映像の雰囲気をコントロールします。それらの役割を果たせるように支えてくれるのが、フォントです。このフォントを扱う力を高めることで、映像のクオリティは大きく変わっていきます。
どのフォントを使用すれば良いのかケースバイケースで選択していく
では使用するフォントはどのように決めていけば良いのでしょうか。テレビ番組などでは、番組ロゴから派生したものや近しい形のものを選んだり、番組の雰囲気に合っているものを選んだりします。例えばホラー系の番組では、明朝体や筆文字などを使用すると雰囲気が出ますよね。フォント選びの参考になるよう、シチュエーション別フォントリストをまとめましたのでぜひ参考にしてください。またフォントにもトレンドがあります。ゴシック体でも、UD書体が多く使われる傾向があったり、そういったトレンドを抑えておくことも大切になります。
また文字の扱いで上手い下手が出やすいのは文字組です。カーニングや行間の詰め具合で、素人っぽさが如実に出てしまいます。一文字一文字微調整しなければなりませんが、実はそういった調整がすでになされているフォントもあります。フォントメーカーのダイナコムウェア社が展開しているDynaFontには、映像に適したフォントとしてテロップ書体が用意されています。これはアルファベットや数字が、漢字やかなに合わせた天地幅になっているので、とても可読性が高いです。さらに明朝体は横線やカーブの幅も太くなっているので、背景が動く中でも見やすさが維持されています。テロップ書体の活用で映像の見栄えも一気に変わってくるでしょう。制作会社時代、こういった微調整を数百枚、手作業でやっていましたが、1日かけても終わりませんでした。ですので、こういったフォントはとてもありがたいです。本当、いい時代になりました(笑)。
テロップ書体は、あらゆる画面表示において視認性に特化したフォント。英数字の字幅を拡大し、漢字や仮名に合わせて天地幅も調整。そして横画や曲線を太く調整していることに加え、ふところの面積も均等化。あらゆるサイズの画面表示で読みやすくした。2024年8月現在、テロップ書体は29種類で展開している。なおテロップ書体は今後も放送局や制作会社、映像クリエイターへのヒアリングを重ね、さらなる拡充を予定している。
・「テロップ書体」開発秘話はこちら
・DynaFontテロップ書体の紹介動画はこちら
このDynaFontですが、実は私自身、最初に入社した制作会社で使っていて、今でもDynaSmart Vという同社の年間ライセンスを持っているので、とても馴染みのあるフォントです。特に思い出深いのが綜藝体(そうげいたい)です。シンプルなゴシック体とはひと味違うポップさがあって、ひらがなも読みやすく、よくバラエティ番組で芸人さんが話すテロップで使用していました。番組ごとにテロップ表現にも色々な方針があるのですが、綜藝体は汎用性も高く、様々な場面で活用できます。例えば、とある対決企画で芸人のコンビ名と名前を表示させる場合、炎がメラメラしながら囃し立てる背景に「○○の○○」といった形で使うなど、効果的に使える場面が多かったです。
「超極太ゴシック体」や「青花ゴシック体」も愛用
他にも、DynaFontの中で気に入っているのは、超極太ゴシック体や超極太明朝体です。極太だけでもかなり太いですが、超がつくこのフォントも、バラエティ番組での使用頻度が高いです。怒った表現などでこの力強いフォントがハマります。最近は青花ゴシック体も、今っぽい雰囲気でよく活用しています。これは横に読むデジタルデバイスでの使用が想定されているフォントです。ふつう、アルファベットやひらがなは漢字に比べて中心線が下がっているので、目線が縦に動きがちです。それが軽減されているので、読みやすく、モダンな印象にもつながっています。
綜藝体
ナカドウガさんがバラエティ番組でよく使用しているというフォント。
綜藝体W9の詳細はこちら
青花ゴシック体
今っぽい雰囲気を出したい時に使用しているフォント。
青花ゴシック体W4の詳細はこちら
DynaFontはバリエーションも豊富で、毛筆系書体ひとつとってもいくつも種類があるので、細かいニュアンスが出しやすくて重宝しています。いまフリーフォントを使っている方も、ぜひフォントメーカーのフォントを使ってみてほしいです。私もフリーフォントを使うことはあるのですが、使いたい漢字がなかったり、太さも少なかったりとフラストレーションがたまる場面も多いです。さらに毎週放送する番組などで、途中でライセンスが切れたりすると翌週から違うフォントを使わなければならなくなり、クライアントに迷惑をかけてしまいます。DynaFontは基本的にすべて自社開発しているので、そういう心配もありません。安心感を買うという点からも、フォントメーカーのフォントを使うことをおすすめします。あとDynaFontは、様々な言語に対応しているのもいいですね。以前ハングルと中国語の翻訳の依頼があった時も、フォントの雰囲気を統一しながらすぐに対応できました。またDynaFontの特徴のひとつがデバイスライセンス。これは1台のPCを契約すれば、そのPCを複数人で使用することができるんです。編集用パソコンにひとつインストールしておけば、誰でも使えるというのはとても大きなメリットですよね。
フォント上達の近道は少しずつの積み重ね
フォントの活用が上手くなるためには、様々な映像を見ることが大切だと思います。さらに雑誌やWEB、グラフィックデザインを参考にすると幅が広がります。映像だけでなく別の媒体も意識的に見る癖をつけましょう。私自身、雑誌などで目に留まったフォントがあると、どういう映像にマッチするかイメージして、自分のストックを増やすようにしています。そしてインプットしたら、実際に手を動かしてアウトプットも忘れないようにしましょう。少しずつ積み重ねていくことが、フォント上達の近道です。最後にフォント選びは楽しい作業だということをお伝えしたいです。どのフォントにすべきか決められないフォント迷子を経て、「これだ!」としっくりくるものに出会えた瞬間は、まるで探していた宝を見つけたような気持ちになります。そのフォント自体にも愛着が湧いて、自分の定番になっていくこともあります。撮影やカット編集などに比べて、どうしてもおろそかになりがちな“文字”をつくる作業ですが、扱えるフォントが増えるだけで世界が広がります。ぜひフォント力を高めて、映像制作のクオリティを高めていきましょう!
「DynaSmart V」は、国内外のアワードを受賞した優れたデザインのフォントや多言語フォントを含むダイナフォント全書体を収録し、映像・動画をはじめ、印刷物、Webデザイン、デジタルコンテンツ、ゲームといった幅広いコンテンツにダイナフォントを許諾対応した、安心の年間ライセンスです。
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・映像作品・動画での採用事例一覧はこちら○ナカドウガ氏に関連したダイナフォントストーリーのご紹介
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日本唯一の映像制作・動画編集のための月刊誌です。
「ビデオサロン 2024年5月号」の特集として、文字が印象的な映像作品にスポットライトを当て、映像をより印象づけるための文字の見せ方を紐解いていきます。
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