ぬらくら第154回「書籍『明朝体の教室』」
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このコーナーでも度々取り上げてきた「明朝体の教室」が本になりました。
2018年11月に連続講座として始まった「明朝体の教室」は書体設計士の鳥海修 (* 1) さんに質問するという形式で小宮山博史 (* 2) さんが「漢字編」を、日下潤一 (* 3) さんが「ひらがな・カタカナ編」を展開した明朝体のデザインセミナーです。
漢字から始まり、ひらがな、カタカナを含む全ての講座が終わったのは2023年3月です。足掛け五年というロングセミナーでした。そして、毎回のセミナーの内容はその都度小冊子にまとめられ頒布されてきました。
それらの小冊子を底本にして加筆、一冊の本にまとめられたのが『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体はどのようにデザインされているのか』です。出版社は Book & Design(* 4)、発売日は2024年1月10日です。
綺麗な本です。
簡潔な本です。
足掛け五年の教室の空気がぎっしり詰まっています。
画像提供:Book&Design
この本には明朝体を設計(デザイン)する時に判断しなければならないことの、出発点とも言うべきポイントが示されています。文字設計の道筋を示しながらも「こうであらねばならない」と書いていないところがこの本の芯です。
書体デザイナーを目指す人、既に書体デザインに関わっている人、編集者、デザイナーの皆さんには是非手元に置いていただきたい一冊です。ただ文字が好きという人にとっても、読み物としてとても面白い本です。
以下に同書の目次を紹介します。
詳細は Book & Design 社の公式サイト (* 4) をご確認ください。
まえがき
第1章 漢字の作り方
・書体デザインの基礎知識1 大きさ、骨格、エレメント、
太さ 四つのポイントを概説する
・書体デザインの基礎知識2 錯視と黒みムラを調整する
・書体見本の作り方
・単体漢字の作り方
・左右合成漢字の作り方
・上下合成漢字の作り方
・字種拡張の方法
コラム 漢字とひらがなの3500年史
第2章 仮名の作り方
・仮名と漢字の親和性
[ひらがなを作る]
・言葉から始まるデザイン
・ひらがなの書き方
・横組み用ひらがな
[カタカナを作る]
・カタカナのパターン分類
・濁音半濁音、拗促音、長音、踊り字、ルビの作り方
・組版テストの方法
第3章 欧文書体、算用数字、約物などについて
・欧文書体と算用数字の作り方
・約物の作り方
あとがき
使用書体一覧
索引
* 1) 鳥海修(とりのうみおさむ)
書体設計士。1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。
1979年写研入社。1989年字游工房の設立に参加する。
ヒラギノシリーズ、こぶりなゴシック、游書体ライブラリーの游明朝体・游ゴシック体など、ベーシックな書体を中心に100以上の書体開発に携わる。
2002年佐藤敬之輔賞、2005年グッドデザイン賞、2008年東京TDCタイプデザイン賞を受賞。
2012年から「文字塾」を主宰し、現在は「松本文字塾」(長野県松本市)で明朝体の仮名の作り方を指導している。
2022年には個展「もじのうみ 水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリー)を開催した。
著書に『文字を作る仕事』(晶文社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』(河出書房新社、共著)がある。
* 2) 小宮山博史(こみやまひろし)
書体設計士、書体史研究家。1943年東京生まれ。國學院大学卒業。
1971年佐藤タイポグラフィ研究所に入所し、書体研究家・佐藤敬之輔に師事する。
書体デザインの成果は、平成明朝体、中華民国国立自然科学博物館中国科学庁表示用特太明朝体、韓国サムスン電子フォントプロジェクトなどがある。
書体史研究の成果は、『日本語活字物語──草創期の人と書体』(誠文堂新光社)、『明朝体活字字形一覧─1829年~1946年─』(文化庁)などに見られる。
2010年竹尾賞デザイン評論部門優秀賞、2011年佐藤敬之輔賞受賞。
弊社サイトに「活字の玉手箱」を掲載。
https://www.dynacw.co.jp/fontstory/fontstory_komiyama.aspx
* 3) 日下潤一(くさかじゅんいち)
グラフィックデザイナー。1949年香川県生まれ。
1974年~1976年渡米。帰国後、大阪にビーグラフィックスを設立し、1984年東京に移転。
装丁を手がけた書籍に『海峡を越えたホームラン』(関川夏生、双葉社)、『五体不満足』(乙武洋匡、講談社)、『孤独のグルメ』(久住昌之+谷口ジロー、扶桑社)などがある。雑誌では「芸術新潮」(1989年~2014年)、「小説現代」(2005年~20018年)などのアートディレクションを担当。 「印刷史研究会」を小宮山博史らと結成・運営、その成果は雑誌「印刷史研究」(全8冊)、書籍『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社)などにまとめられている。
* 4) Book & Design 社公式サイト
https://book-design.jp/
『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体は
どのようにデザインされているのか』の直販サイト
https://bookdesign.theshop.jp/items/81737682
タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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コンサルタント
mk88氏
PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
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