ダイナフォントストーリー

カテゴリー:連載コラム「ぬらくら」
2024/02/21

ぬらくら第154回「書籍『明朝体の教室』」

大きな地震と航空事故で開けた辰年、これで今年起こる災害は出尽くしたと思いたい新年の幕開けでした。罹災した皆様とお亡くなりになられた方々には心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 ***

このコーナーでも度々取り上げてきた「明朝体の教室」が本になりました。

2018年11月に連続講座として始まった「明朝体の教室」は書体設計士の鳥海修 (* 1) さんに質問するという形式で小宮山博史 (* 2) さんが「漢字編」を、日下潤一 (* 3) さんが「ひらがな・カタカナ編」を展開した明朝体のデザインセミナーです。

漢字から始まり、ひらがな、カタカナを含む全ての講座が終わったのは2023年3月です。足掛け五年というロングセミナーでした。そして、毎回のセミナーの内容はその都度小冊子にまとめられ頒布されてきました。

それらの小冊子を底本にして加筆、一冊の本にまとめられたのが『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体はどのようにデザインされているのか』です。出版社は Book & Design(* 4)、発売日は2024年1月10日です。

綺麗な本です。
簡潔な本です。
足掛け五年の教室の空気がぎっしり詰まっています。

明朝体の教室 書影

明朝体の教室
画像提供:Book&Design

この本には明朝体を設計(デザイン)する時に判断しなければならないことの、出発点とも言うべきポイントが示されています。文字設計の道筋を示しながらも「こうであらねばならない」と書いていないところがこの本の芯です。

書体デザイナーを目指す人、既に書体デザインに関わっている人、編集者、デザイナーの皆さんには是非手元に置いていただきたい一冊です。ただ文字が好きという人にとっても、読み物としてとても面白い本です。

以下に同書の目次を紹介します。
詳細は Book & Design 社の公式サイト (* 4) をご確認ください。

まえがき
第1章 漢字の作り方
 ・書体デザインの基礎知識1 大きさ、骨格、エレメント、
  太さ 四つのポイントを概説する
 ・書体デザインの基礎知識2 錯視と黒みムラを調整する
 ・書体見本の作り方
 ・単体漢字の作り方
 ・左右合成漢字の作り方
 ・上下合成漢字の作り方
 ・字種拡張の方法
コラム 漢字とひらがなの3500年史
第2章 仮名の作り方
 ・仮名と漢字の親和性
[ひらがなを作る]
 ・言葉から始まるデザイン
 ・ひらがなの書き方
 ・横組み用ひらがな
[カタカナを作る]
 ・カタカナのパターン分類
 ・濁音半濁音、拗促音、長音、踊り字、ルビの作り方
 ・組版テストの方法
第3章 欧文書体、算用数字、約物などについて
 ・欧文書体と算用数字の作り方
 ・約物の作り方
あとがき
使用書体一覧
索引

* 1) 鳥海修(とりのうみおさむ)
書体設計士。1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。
1979年写研入社。1989年字游工房の設立に参加する。
ヒラギノシリーズ、こぶりなゴシック、游書体ライブラリーの游明朝体・游ゴシック体など、ベーシックな書体を中心に100以上の書体開発に携わる。
2002年佐藤敬之輔賞、2005年グッドデザイン賞、2008年東京TDCタイプデザイン賞を受賞。
2012年から「文字塾」を主宰し、現在は「松本文字塾」(長野県松本市)で明朝体の仮名の作り方を指導している。
2022年には個展「もじのうみ 水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリー)を開催した。
著書に『文字を作る仕事』(晶文社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』(河出書房新社、共著)がある。

* 2) 小宮山博史(こみやまひろし)
書体設計士、書体史研究家。1943年東京生まれ。國學院大学卒業。
1971年佐藤タイポグラフィ研究所に入所し、書体研究家・佐藤敬之輔に師事する。
書体デザインの成果は、平成明朝体、中華民国国立自然科学博物館中国科学庁表示用特太明朝体、韓国サムスン電子フォントプロジェクトなどがある。
書体史研究の成果は、『日本語活字物語──草創期の人と書体』(誠文堂新光社)、『明朝体活字字形一覧─1829年~1946年─』(文化庁)などに見られる。
2010年竹尾賞デザイン評論部門優秀賞、2011年佐藤敬之輔賞受賞。
弊社サイトに「活字の玉手箱」を掲載。
https://www.dynacw.co.jp/fontstory/fontstory_komiyama.aspx

* 3) 日下潤一(くさかじゅんいち)
グラフィックデザイナー。1949年香川県生まれ。
1974年~1976年渡米。帰国後、大阪にビーグラフィックスを設立し、1984年東京に移転。
装丁を手がけた書籍に『海峡を越えたホームラン』(関川夏生、双葉社)、『五体不満足』(乙武洋匡、講談社)、『孤独のグルメ』(久住昌之+谷口ジロー、扶桑社)などがある。雑誌では「芸術新潮」(1989年~2014年)、「小説現代」(2005年~20018年)などのアートディレクションを担当。 「印刷史研究会」を小宮山博史らと結成・運営、その成果は雑誌「印刷史研究」(全8冊)、書籍『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社)などにまとめられている。

* 4) Book & Design 社公式サイト
https://book-design.jp/
『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体は
   どのようにデザインされているのか』の直販サイト
https://bookdesign.theshop.jp/items/81737682

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
ぬらくらは、ダイナフォント News Letter(ダイナコムウェア メールマガジン)にて連載中です。
いち早く最新コラムを読みたい方は、メールマガジン登録(Web会員登録)をお願いいたします。
メルマガ登録はこちら
 
ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア株式会社
コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

月刊連載ぬらくらバックナンバー
連載にあたっておよび記事一覧
ぬらくら第137回はこちら
ぬらくら第138回はこちら
ぬらくら第139回はこちら
ぬらくら第140回はこちら
ぬらくら第141回はこちら
ぬらくら第142回はこちら
ぬらくら第143回はこちら
ぬらくら第144回はこちら
ぬらくら第145回はこちら
ぬらくら第146回はこちら
ぬらくら第147回はこちら
ぬらくら第148回はこちら
ぬらくら第149回はこちら
ぬらくら第150回はこちら
ぬらくら第151回はこちら
ぬらくら第152回はこちら
ぬらくら第153回はこちら