ダイナフォントストーリー

カテゴリー:ダイナフォントストーリー
2023/10/20

古籍書体10周年に向けて ~新海真司の挑戦~

DynaFont古籍書体B

古籍書体10周年に向けて ~新海真司の挑戦~

懐古的な書風への想いをきっかけにして2014年3月にリリースした「古籍書体」は、シリーズとして同年10月に「グッドデザイン賞」を受賞するなど、歴史的な価値をフォントデザインに融合させたことを高く評価していただいた書体です。
またリリースから現在までに、書籍などの印刷物をはじめ、ゲームや映像に至るまで幅広く活用されてきました。
ダイナコムウェア書体デザイナーとして「金剛明朝体」をはじめ、「UD明朝体」や「玉刻華宋」など近年のダイナフォントの数々の【かな】を担当する新海 真司は2024年3月に10年という節目を迎える「古籍書体」5書体の新たなかなに挑戦しました。
今回のダイナフォントストーリーでは、2022年秋に先行リリースした『古籍真竹B』、そして2023年秋のアップグレードでリリースとなった『古籍木蘭B』『古籍糸柳B』『古籍銀杏B』『古籍黒檀B』として、新たなかなの命が吹き込まれ誕生した『古籍書体B』について新海にその魅力を語ってもらいました。


 
古籍真竹B

新海:「古籍真竹」に限らず「古籍書体」のかなを新たにデザインする事が決まった時に、これまでの「古籍書体」とは新しい使い方をしてもらうことを意識して開発をスタートしました。「古籍真竹B」ではクラシカルな雰囲気のデザインながらもデジタルとしても使いやすいように配慮したデザインにチャレンジしています。かな本来の自然な動きで読みやすく、抑揚のある漢字とのバランスを考慮して中間を取りやすい字面サイズを心掛けました。お土産などのリード文として使用してもらうのも面白いのではと考えています。
古籍真竹BW3のフォントシミュレーションこちら



古籍真竹Bと古籍真竹A

古籍真竹Bと古籍真竹A
古籍真竹B 組見本

古籍真竹B 組見本
 
古籍真竹B 活用例

古籍真竹B 活用例
古籍木蘭B

新海:宋朝体に合わせるかなとして、シャープなキレのある鋭さと木に彫ったかのような純朴さと雄渾なイメージを同居させる文字を目指してデザインした書体です。「古籍木蘭」のベースになった【聚珍倣宋体】の漢字に合わせて右上がりの楷書の書き方を取り入れましたが、そのまま取り入れるだけでなく、活字として一旦整理することで、読みやすさを重視しながらアナログ感も意識的に残すように心掛けました。文字の形状やフトコロや線の太さなど細部まで気を配りながら文字が鮮明で美しくみえつつ、同時に古典的な趣も感じさせる書体として完成しました。宋朝体の伝統を受け継ぎながらも現代的な要素も取り入れたバランスの取れた書体なので幅広い用途に適していると思います。
古籍木蘭BW3のフォントシミュレーションこちら



古籍木蘭Bと古籍木蘭A

古籍木蘭Bと古籍木蘭A
古籍木蘭B 組見本

古籍木蘭B 組見本
 
古籍木蘭B 活用例

古籍木蘭B 活用例
古籍糸柳B

新海:流れるような楷書体にあわせてデザインした書体です。また伝統的なかな文字の美しさと現代で使う要求にも応えられる書体を目指した書体でもあります。かな書道の手本をもとに実際に書きながら書体の方向性を模索しつつデザインしていきました。かな書道は通常、連綿で書かれるものですが元の漢字のように連綿ではなく、一文字一文字が目立つように且つ綴られることで美しく見えるようなデザインを心掛けました。こうしたアプローチから、かな文字が連なっていく美しさを残しつつも漢字との調和により文字は滑らかで流れるように繋がるようになったと思います。用途としては見出しからリード文を想定しています。
古籍糸柳BW3のフォントシミュレーションこちら



古籍糸柳Bと古籍糸柳A

古籍糸柳Bと古籍糸柳A
古籍糸柳B 組見本

古籍糸柳B 組見本

 
 
古籍糸柳B 活用例

古籍糸柳B 活用例
古籍銀杏B

新海:「古籍銀杏」の漢字はオールドスタイルな長体明朝なので、線質に粘りを多分に残しぬくもりと風情を感じさせるデザインを心がけました。漢字が明朝体なので文字自体は整理しつつも、転折に墨が溜まったような黒みを残し情緒を残しています。温かみや感情を表現する場面に適していると思います。
古籍銀杏BW3のフォントシミュレーションこちら



古籍銀杏Bと古籍銀杏A

古籍銀杏Bと古籍銀杏A
古籍銀杏B 組見本

古籍銀杏B 組見本
 
 
古籍銀杏B 活用例

古籍銀杏B 活用例
古籍黒檀B

新海:「古籍黒檀」の漢字は扁平な明朝体なので、それに合わせて3/4扁平活字を規範に見出しで使ったときに黒みとインパクトが出るようにデザインしました。「古籍黒檀A」のかなの味わいとは異なる、より漢字に寄り添ったデザインを心掛けています。「古籍黒檀A」と比較して、長めに文字組しても自然かつきれいに見えるデザインになったと思います。用途は主に見出しとなりますが、縦で詰めて組んでも面白いかなと思います。
古籍黒檀BW7のフォントシミュレーションこちら



古籍黒檀Bと古籍黒檀A

古籍黒檀Bと古籍黒檀A
古籍黒檀B 組見本

古籍黒檀B 組見本
 
古籍黒檀B 活用例

古籍黒檀B 活用例

これまで多くの皆さまにご活用いただいてきた「古籍書体」ですが、かなが変わることでの新たな魅力の発見、そして書体を選ぶ際の楽しさも大きく広がったことがお分かりいただけたでしょうか。
2014年目に10年目を迎えるにあたり、新たなかなという装いを手に入れ、これまで以上に皆さまに愛される書体としてステップアップを続けていく「古籍書体」をどうぞよろしくお願いいたします。

ダイナコムウェア 書体デザイナー新海 真司Profile
ダイナコムウェア 書体デザイナー新海 真司
1985年生まれ。長野県出身。Web制作会社を経て、フリーランスとして日本および台湾で活動後、ダイナコムウェアに入社。鳥海修氏が主宰する「文字塾」にて書体デザインを学び、「タイプデザインコンペティション2019」では本文用書体で入賞を果たす。 ダイナコムウェアの書体デザイナーとして「かな」を担当しており、「UD明朝体」「青花ゴシック体」「玉刻華宋」「金剛黒体 Bold 6ウエイト」「金剛明朝体」「古籍書体B」を手掛ける。

「古籍書体B」も含め、ダイナフォントが全書体使える年間ライセンス「DynaSmart V」

「DynaSmart V」は、国内外のアワードを受賞した優れたデザインのフォントや多言語フォントを含むダイナフォント全書体を収録し、印刷物、Webデザイン、デジタルコンテンツ、映像・動画、ゲームといった幅広いコンテンツにダイナフォントを許諾対応した、安心の年間ライセンスです。
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