ダイナフォントストーリー

カテゴリー:【文字ジャーニー】文字の会社で働く人
2023/09/25

ダイナコムウェア株式会社 書体設計部

文字を作る:書体デザイナー 中村 陸人01
 
ダイナコムウェア株式会社 書体設計部に所属する書体デザイナー・中村 陸人。
大学在学中に書体デザインに興味を持ち始め、大学院ではタイポグラフィを専攻。
大学院卒業後の2021年4月から新卒としてダイナコムウェアに入社という経歴を持つ若干26歳、いわゆる【Z世代】と呼ばれる書体デザイナーである。
2022年11月には自身がデザインを手掛けた「龍門石碑体A」がリリースされるなど、書体デザイナーとしてのキャリアも順調にステップアップしている。
多くの人にとって、日常そのものである文字。
その “文字を作る人” である書体デザイナー・中村 陸人に文字を作る仕事を選んだ理由や、「龍門石碑体A」のデザイン、そして自身が理想とする書体についてインタビューしてみた。


 
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ー今回の文字ジャーニーでは、文字の会社で実際に “文字を作る人” としてダイナコムウェアの書体デザイナーとして働く中村 陸人さんをインタビューします。大学時代はグラフィックデザインを勉強されていたとのことですが、どのような変遷を経て、より文字に特化した書体デザインへの道に向かわれていったのでしょうか。
高校時代は美術部に所属するなど、元々、何かを描いたり作ったりするのが好きでした。そこで自分の好きな分野をもっと追求していきたいという想いから大学ではグラフィックデザインを専攻して勉強することにしました。入学後に色々なデザインを学ぶ中で、タイポグラフィーだったり、ロゴだったりと、デザインの中でも特に文字に関するデザインに興味を持ち出して、自分でも文字のデザインを勉強し始めました。より文字のデザインを追求したいと思って書体設計士の鳥海修先生が主宰する「文字塾」に入塾させていただいたり、大学院に進学してタイポグラフィーを専攻して勉強していく中、卒業後は書体デザイナーとして働きたいと思うようになりました。

ー書体デザイナーを志し、実際にダイナコムウェアで書体デザイナーになられたわけですが、文字の会社の中でもダイナコムウェアを志望された理由を教えていただけますか。
ダイナコムウェアが展開しているダイナフォントは、入社する前からシンパシーというか、自分自身がデザインしてきた書体の方向性と近しいものを感じていました。ダイナフォントが展開するデザインのバリエーションの斬新さには凄みというか、度量の大きさのようなモノを感じられて、ダイナコムウェアなら自分がデザインしたい書体も実現できるかなと思って採用試験を受けました。

ー入社前にデザインされた書体を何点か拝見させていただきましたが、ダイナコムウェアの特長の1つでもあるユニークさや斬新さなど、確かに近いモノが感じられました。それでは、実際に入社して、 “文字を作る” 書体デザインを仕事にしていく中、書体デザインに対する意識も変化していったと思うのですが、その辺りはいかがですか。
はい。文字に対する意識も変化していっています。学生時代は自分自身のアイデアを重視して、直感的にデザインしていく傾向が強かったのですが、入社して先輩書体デザイナーの考え方なども学ばせていただき、より文字の自然な流れを考慮したデザインを心掛けるようになったり、デザインをした書体に対しても俯瞰して見つめ直していけるようになってきました。仕事なので当たり前ではありますが、単純に文字と向き合う時間が学生時代と比べて段違いで増えています。また、自分自身の性格もあるのですが、デザインを追求して回答を導き出すまで、あれこれ悩んで思い詰めてしまうこともあります。そこで目線を変えたり気分転換することも必要だと思って、現在、週3日ほどジムに通って汗を流すことで気持ちをリセットしたりしています。最近では友人の影響もあってキーボードも始めました。まだ始めたばかりの初心者ですが、キーボードを弾くことがどこか書体デザインに似ているなぁと感じる部分もあったりして、自分の中では意外な発見でした。

ー文字の存在というのは日常というか、その文字を作るという仕事もどうしてもプライベートと切り離しずらい部分もあるかと思いますが、やはり良いデザインを生み出すためにはプライベートも大切ですよね。目線を変えるとは少し違うかもしれません、業務として、対外的な書体セミナーの講義もされていますよね。こちらの取り組みについてはいかがですか。
書体を利用していただいているデザイナーさんに向けて書体に関する知識や見識を深めてもらうための講義という位置付けで、自分は主にデザイン書体についてのお話しを担当しています。デザイナーさんとのリアルな交流を通じて、ダイナフォントに対する意見をダイレクトにいただけるので、大変貴重な時間だと捉えています。人前でお話するのは緊張する面もありますが、こうしたセミナーなどから得られる体験を通じて、自分自身の書体デザインもアップデートしていければと思って精一杯、臨んでいます。

ー活動の全てが、文字を作るという仕事に繋がって集約されていく感じがしました。入社2年目となる昨年11月にはご自身がデザインした「龍門石碑体A」がリリースされ、LINE絵文字版も発売されていますが、「龍門石碑体A」について詳しく教えてください。
発表済みのダイナフォントから、かなをリ・デザインする企画が立ち上がり、自分もデザインを担当することになりました。そこでデザインしてみたい書体を何書体か候補を絞っていった中、特に手掛けてみたいと思ったのが「龍門石碑体」でした。従来の「龍門石碑体」のかなは自分の中で純朴な感じがしたので、より無骨さを引き出したデザインのかながあっても面白いかなと思い、チャレンジさせていただきました。そして実際に書体デザインに取り組み始めたのですが、中々考えていたようには上手くいかずに相当悩むことになりました。締め切りもあってどうして良いか途方に暮れていたとき、先輩デザイナーである新海さんから『一度、リセットして元の石碑の文字を徹底的に観察してみることも大切だよ』というアドバイスをいただいて、改めて穴が空くほど入念に北魏の楷書や石碑に彫られた文字の資料を観察しました。そして元の文字に対しての理解を深めていった結果、ようやく石彫りの文字の雰囲気のかなを自分自身も再現できたと思い、会社からもリリースへのGOサインをいただきました。「龍門石碑体A」をデザインして発表できたことは自信にも繋がりましたし、これから先も “文字を作る仕事” をしていく上でとても良い経験をさせていただけたと思っています。

ー生みの苦しみもあってリリースされた書体だったんですね。また先輩の書体デザイナーである新海さんとも上手く連携されていて、キズナも感じられるエピソードでした。社内にいると普段から仲の良さが伝わってきます。
実は新海さんとは「文字塾」でも一緒に勉強させていただいていて、ダイナコムウェアに入社する際も新海さんが働いてる会社ということで安心感もありました。新海さんには「龍門石碑体」に限らず、色々なアドバイスをいただいています。書体デザインに真摯に向き合っているや、妥協しない姿など、日々の仕事を通じて書体デザイナーとしてだけでなく社会人として、大切なことを学んでいます。

ー日々、勉強ですね。それでは中村さんが考える「理想の書体」とはどういった書体でしょうか?
長く使っていただける、そんな書体が理想です。長く使っていただける書体ってどうすればデザインできるのかを考えてみると、過去から受け継がれている文字に対する理解度をより一層深めていくことも大切だと思いますし、現在、どのような文字の形が支持されているのかも常にアンテナを貼っておく必要もありますし、これから先ではどのような文字の形が受け入れられていくのか模索していく必要もあると思います。そうした連綿と続いていく文字の歴史、現在、これからに想いを馳せながら、理想の書体を目指してデザインしています。

ーさて現在、ダイナコムウェアではダイナフォント30周年を記念した「文字と感謝と30年」キャンペーン第1弾として【金剛明朝体を使用して1行で表現する、あなたが思い描く理想の30年後】を2023年9月25日(月)~10月9日(月)までの期間に募集しています。そこで【金剛明朝体を使用して1行で表現する、中村さんが思い描く理想の30年後】を教えていただけますか?
直前のお話とも被ってしまうかもしれませんが、【30年後も愛用される文字を作った人】になりたいです。
30年後もダイナコムウェアでダイナフォントの書体デザインができるように精一杯頑張りたいと思います!

 
 
【金剛明朝体を使用して1行で表現する、中村さんが思い描く理想の30年後】
 
ー本日はありがとうございました。次の書体も発表も含めて、今後の中村さんの活躍に期待しています!

やりたい仕事を明確に見つけられなかったり、願っても叶わなかったり、志半ばで挫折したり、悩み、迷い、苦しんで新たなる道を見つけるなど、紆余曲折を経て進む旅もある。むしろそのような旅人の方が多いことだろう。
自らが志し、書体デザイナーとして旅を続ける中村 陸人は、他人の目からはとても順風満帆に見えたかもしれない。
多くの人にとって日常そのものであるからこそ難しくもある “文字を作る人” という道の中で、中村もまた悩み、迷い、苦しみ模索していたことが今回のインタビューを通じて感じることができた。
一方で、迷い、悩み、模索した先に導き出した「龍門石碑体A」のかなはとても力強く感じられた。
その経験を糧にした書体デザイナー 中村 陸人がこれから踏みしめていく一歩もまた、とても力強い一歩になることだろう。
中村がこの先、どんな書体をデザインしていくのか、次作のリリースが今から楽しみである。

 
○中村 陸人デザイン「龍門石碑体A」
龍門石碑体 書体見本
龍門石碑体Aの詳細はこちら

中村 陸人
中村 陸人
1996年生まれ。群馬県出身。大学在学中にフォント作りに興味を持ち始め、大学院ではタイポグラフィを専攻する。
大学院卒業後、ダイナコムウェアに書体デザイナーとして入社。
ダイナコムウェアの書体デザイナーとして主にデザイン書体の「かな」を担当しており、「龍門石碑体A」を手掛ける。

 

○中村 陸人デザイン「龍門石碑体A」

金剛明朝体で理想の30年後を表現して「創作無止オリジナルトートバッグ」をもらおう!
ダイナコムウェア株式会社はダイナフォント30周年を記念した「文字と感謝と30年」キャンペーン第1弾として【金剛明朝体を使用して1行で表現する、あなたが思い描く理想の30年後】を、2023年9月25日(月)~10月9日(月)までの期間に募集します。
また、本取り組みに御参加いただいた方の中から抽選で30名様に、文字でひらめく無限のアイデアを表現したデザインのトートバッグ「創作無止オリジナルトートバッグ」をプレゼントいたします。
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