ダイナフォントストーリー

カテゴリー:連載コラム「ぬらくら」
2023/08/28

ぬらくら第149回「ChatGPTを使ってみた」

わずか三ヶ月の間に二度の引越しをしなければならなかったと、前回のこのコーナーで書きました(148回「リフォーム顛末記」)。引越しの何が面倒だったかと言うと、本の梱包と開梱でした。この本が全部電子書籍だったら……、梱包も開梱もいらないんだと、本についていた薄ボコリで黒くなった手を何度止めたことか。そんなことがきっかけで、今回は改めて電子書籍について考えてみました。

   ***

1980年代後半から現在に至るまでの電子書籍技術の発展について、具体的な経過を以下に示します。

1980年代後半 - 1990年代初頭:
初期の電子書籍は、テキストのみを表示するデバイスが主流でした。これらのデバイスは、特定の専門分野や業界向けに使われることが多く、一般的な読者には限られた普及しかありませんでした。

1990年代中盤 - 2000年代初頭:
インターネットの普及により、電子書籍の配信と購入がオンラインで行われるようになりました。初めての商業的な試みとして、電子書籍ストアが登場しました。しかし、デバイスの多様性やフォーマットの不統一性により、利用者の体験がまだ限定的でした。

2000年代中盤 - 2010年代初頭:
電子インク技術(電子ペーパー)の進化により、電子書籍リーダーが登場しました。これにより、ペーパーブックのような読書体験が実現し、テキストだけでなく画像も表示できるようになりました。
AmazonのKindleが2007年にリリースされ、大きな影響を与えました。Kindleは電子書籍市場を牽引し、利用者に簡単な購入とダウンロード体験を提供しました。
フォーマットの標準化が進み、EPUB形式が広く受け入れられました。EPUBはさまざまなデバイスで読書体験を一貫して提供するための基盤となりました。

2010年代中盤 - 2020年代初頭:
スマートフォンとタブレットの普及により、電子書籍のモバイル利用が急増しました。これにより、読者は手軽に電子書籍を持ち歩き、どこでも読書ができるようになりました。
インタラクティブな要素を持つ電子書籍や、音声や動画を組み込んだマルチメディアコンテンツが登場しました。
クラウドサービスの導入により、読者は複数のデバイスで同じコンテンツにアクセスできるようになりました。

2020年代以降:
人工知能(AI)との組み合わせにより、個別の読書習慣に基づいた推薦システムや、テキスト解析による要約・注釈の自動生成が進化しました。
オープン教育資源や自己出版プラットフォームなど、多様なコンテンツ提供方法が拡大しています。

これらの過程を通じて、電子書籍技術は劇的な進化を遂げ、利用者の需要と新しいテクノロジーの組み合わせによって、大きな変革を遂げてきました。

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W3C(World Wide Web Consortium)は、Web技術の標準を策定する国際的な組織であり、CSS(Cascading Style Sheets)もその一部です。CSSはWebページや文書のデザインやレイアウトを指定するためのスタイルシート言語であり、新しいバージョンのCSSが開発されている場合、新しい機能や改良が導入されることが期待されます。過去のトレンドや一般的な方向性に基づいて、新しいCSSの改訂で期待される可能性のあるいくつかの機能を以下に挙げてみましょう。

レイアウトの改善とフレキシブルなデザイン:
新しいCSSでは、より柔軟で複雑なレイアウトが可能になることが期待されます。グリッドやフレキシブルボックスモデルの強化により、レスポンシブなデザインや異なる画面サイズへの対応が向上するでしょう。

2D / 3D グラフィックスの強化:
CSSの新バージョンでは、より高度な2Dおよび3Dのグラフィックス表現がサポートされる可能性があります。これにより、アニメーションや視覚的なエフェクトを簡単に実現できるようになるかもしれません。

変数やカスタムプロパティの拡張:
カスタムプロパティや変数を使用することで、スタイルの再利用性と保守性が向上します。新しいCSSでは、これらの機能がより高度に拡張され、より複雑なスタイル設定が可能になる可能性があります。

テキストスタイルとフォント管理の改善:
テキストスタイルの設定やフォントの管理をより柔軟に行えるような機能が導入されるかもしれません。これにより、Webフォントの使用や異なる言語のテキストのレンダリングが向上するかもしれません。

アクセシビリティの強化:
新しいCSSでは、アクセシビリティを向上させるための機能が導入される可能性があります。スクリーンリーダーやキーボードナビゲーションなど、さまざまなユーザーのニーズに対応するための機能が強化されるでしょう。

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現在のトレンドや技術の進化に基づいて、10年後の電子書籍技術と市場が以下のように進展する可能性があるかもしれません。

1.バーチャルリアリティ(VR)と拡張現実(AR)の統合:
10年後、VRとAR技術が更に進化し、電子書籍もこれらの技術を統合したインタラクティブな読書体験が提供されるかもしれません。読者は仮想的な図書館や環境で本を読むことができ、テキストやイラストが3D空間内で表示されることが想像されます。

2.AIによる個別最適化:
人工知能はさらに進化し、読者の嗜好や読書習慣に基づいてカスタマイズされたコンテンツが提供されるようになるかもしれません。AIは、読者が興味を持ちそうな本を推薦したり、テキストを自動要約したりする際に活用されるかもしれません。

3.ソーシャルリーディングの発展:
読者同士のコミュニケーションや共同読書の体験が重要視され、電子書籍プラットフォームがソーシャル機能をさらに強化する可能性があります。読者は本を共有し、感想や注釈を交換することができるようになるかもしれません。

4.持続可能性と環境への配慮:
紙の書籍と電子書籍の環境への影響についての議論が進行する中、電子書籍はさらなる持続可能性の向上に取り組む可能性があります。省資源型の表示技術や再生可能エネルギーを活用したデバイスの普及などが進むかもしれません。

5.複合メディアの増加:
10年後、電子書籍はテキストだけでなく、動画や音声、インタラクティブな要素を含む複合メディアコンテンツが主流となるかもしれません。これにより、より臨場感ある読書体験が提供されるでしょう。

6.セルフパブリッシングの成長:
インターネットの普及により、著者は自身の作品を直接読者に届けるセルフパブリッシングのプラットフォームが増える可能性があります。多様な声やジャンルが登場し、読者はより広範なコンテンツにアクセスできるようになるかもしれません。

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三つのアスタリスク(***)で挟まれた部分は “ChatGPT (* 1)” が以下の問いかけに答えてくれたものです。二つのアスタリスクの部分では追加の質問をしています。

【最初の問い】
貴方は日本の大手総合出版社の電子書籍開発部門の責任者です。
貴方は電子書籍ビジネスを成功させ大きな成果を上げ続けているわけですが、1980年代後半の電子書籍黎明期より電子書籍に取り組んでこられました。先ず、今日に至るまでの電子書籍技術の発展の経過をできるだけ具体的に詳しくお話しください。

この問いを入力してから20秒とたたないうちに最初の返事が打ち出されました。初めて ChatGPT に問いかけた時は『オ~ッ』と感動すら覚えました。

【二番目の問い】
さらに、W3Cが新たなWeb技術としてCSSの改訂に取り組んでいるそうですが、新しく策定されるCSSではどのようなことが実現できるようになるのでしょうか?

【三番目の問い】
以上のことを踏まえて、今から10年後の電子書籍技術と市場がどのようになっているのか、想像が入っても構わないので教えてください。

相手はコンピューターなので問いの一部を変更して何度問いかけても、丁寧に答えてくれます。

ChatGPT が答えてくれた内容をそのままここに記載しましたが、これを材料に手を加えて自分流の語り口にすれば ChatGPT 臭さは消えてしまうでしょう。ただし ChatGPT の答えの中に間違いが混じっていないかは確認したほうがよいでしょう。

すでに旬は過ぎてしまった感のある ChatGPT ですが、未だ触ったことのない方、是非一度試してみてください。

すでに出版社の中にも業務に活用して大幅なコストダウンに成功している事例 (* 2) も出てきています。また、Wikipedia にも ChatGPT に対する幅広い論評 (* 3) が載っているので目を通しておくのも良いかもしれません。

* 1) ChatGPT (Chat Generative Pre-trained Transformer)
生成可能な事前学習済み変換器。以下はChatGPT自身による自己紹介。
『私はOpenAIが開発したAIモデルであり、GPT-3.5アーキテクチャに基づいています。私の目的は、さまざまな情報や質問に対して人間のような自然な言葉で応答することです。一般的な知識や文脈から情報を生成し、質問に答えたり、会話をサポートしたりします。ただし、私はプログラムであり、人間のような意識や感情は持っていません。どのようなお手伝いができるか質問があれば、遠慮なくどうぞ。』
https://openai.com/blog/chatgpt

* 2) 事例
https://www.jepa.or.jp/sem/20230705/

* 3) 論評
https://ja.wikipedia.org/wiki/ChatGPT

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア株式会社
コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
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