ぬらくら第146回「エスカレーターの人」
地下鉄千代田線の新御茶ノ水駅ホームから地上のJR御茶ノ水駅前に出るのに、長~いエスカレーターを利用します。このエスカレーター、全長41メートル、所要時間1分30秒だそうです。
〈上り〉はまだ好いのですが、〈下り〉は深いところに吸い込まれてゆくような心持ちで、足元を見ると『クラッ』とします。利用している人が少ない時の〈下り〉は到着点まで真っ直ぐに見通せるので『クラッ』が『クラクララッッ~』となり、手が自然に手すりベルトに伸びていきます。
地上に出るためにこのエスカレーターを利用している時のことです。
エスカレーターが間も無く終わるかという辺りで、〈下り〉に乗って降りてきた人がこちらに向かって微笑みかけながら会釈しています。咄嗟にこちらも小さく頭を下げたのですが、誰だろう、知らない人のようだし……、いや待てよ、知っている人だけど照明のせいで誰だか分からなかったのかナ? あるいは見上げているこちらの視角のせいで、知らない人に見えただけなのかな?
そんなことを思っているうちに、エスカレーターは容赦もなく、アッという間に会釈をしてくれた人とは離れてゆくばかりです。
このエスカレーターの〈上り〉で後ろを振り返るのも足元がすくむのですが、手すりにつかまって恐る恐る後ろを振り返ると、すぐ後ろ、はるか下まで誰もいません。手を振って微笑みかけてくれた人は既に下の下の彼方です。
改札口に向かいながら『あれは一体誰だったんだろう?』と首をひねることしきりだったのですが、誰だったのか思い当たらず、いまだに気になったままです。
それとも単に人違いされただけ?
タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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コンサルタント
mk88氏
PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
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