ダイナフォントストーリー

カテゴリー:連載コラム「ぬらくら」
2023/02/22

ぬらくら第143回「仮名字形一覧」

〈日本の印刷は奈良時代から始まった〉という導入から、〈漢字活字の誕生と伝来〉〈横浜の印刷物〉〈様々な活字と印刷物〉へと展開し、〈直彫からベントン・デジタルフォントへ〉と進む横浜市歴史博物館の企画展「活字 近代日本を支えた小さな巨人達 (* 1)」が間もなく終了します(2023年2月26日まで)。

ぬらくらコーナーの読者の中にも、既にこの展示会場に足を運ばれた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

この企画展開催には小宮山博史文庫の存在を無視することができません。

小宮山博史文庫は小宮山博史 (* 2) さんが長く所長を務めてこられた佐藤タイポグラフィ研究所が所有していた文字に関連する資料と、小宮山さんが個人で収集してきた資料を合わせて横浜市歴史博物館に寄贈された後、同博物館によって小宮山博史文庫と命名されたものです。
それは国内・国外で刊行された活字見本帳や活字関係の資料・文献などを含む総数2649点にも及ぶもので、活字史研究および活字書体研究に欠くことのできない資料群です。
その全容は「横浜市歴史博物館所蔵 小宮山博史文庫目録」という表題で『横浜市歴史博物館 調査研究報告書 Vol. 18 2022 (* 3)』として公開されています。

この企画展開催中に何としても公開したいと、関係者が力を注いだデータベースがあります。それは活字から集めたひらがな・カタカナの字形データベースです。
データベースの素材は小宮山博史文庫に含まれている数多くの活字見本帳です。その中から94点を厳選して、そこから60,000字以上のひらがな・カタカナを集めています。

これらのひらがな・カタカナをその素性と一緒に一文字ずつ表示してくれるデータベースは、関係者の努力の甲斐あって「仮名字形一覧 (* 4)」と名付けられ、横浜市歴史博物館の手によって2023年1月21日に公開されました。

仮名字形一覧で公開されているひらがな・カタカナが採字された94点の活字見本帳の一部を、活字製造・販売会社別に以下にご紹介します。

東京築地活版製造所
『二号明朝活字書体見本 全 明治二十五年一月改正』(1892)
『五号明朝活字書体見本 全 明治廿七年六月改正』(1894)
『改正三号明朝活字書体見本 全 明治三十九年五月改正』(1907)

秀英舎鋳造部製文堂
『活字類見本 未完成』(1894)
『明朝初号活字見本』(1903)
『明朝弐号活字見本』(1906)

秀英舎
『一号明朝活字見本帳』(1926)
『明朝初号活字見本帳』(1929)
『明朝三号活字見本帳』(1929)

大日本印刷
『活字註文用標準漢字表』(1942)
『和文活字』(1971)

精興社
『保存字母台帳 第八号 昭和廿八年六月三十日現在』(1953)
『和文活字 組版・印刷への手引』(1966)

大阪活版製造所
『三号楷書活字総数目録』(1897)

岩田母型製造所
『新聞活字母型』(1951)
『活字母型摘要字目録』(発行年不明)

青山進行堂
『活字摘要目録』(1908)
『富多無可思』(1909)

錦精社
『活字書体』(1960)

晃文堂
『字体帳 昭和37年版』(1962)

津田三省堂
『十八ポ正楷書』(1954)

築地活字
『築地活字の十一書体鑑』(1979)

凸版印刷
『活版略見本』(1933)
『新製活版見本帖』(発行年不明)

博文館
『明朝四号活字見本帖 大正三年改正』(1914)
『印刷機械各種活字定価表』(発行年不明)

モトヤ商店
『ベントン彫刻 明朝活字総目録』(発行年不明)
『活字摘要録』(発行年不明)

森川龍文堂
『龍文堂活字清鑒 邦文書体之標本』(1935)

日本硝子活字製造所
『硝子活字初号明朝見本帳 昭和三年十月完成発売』(1928)

以上、94点の活字見本帳から三割ほどをピックアップしてみました。

これらの見本帳は、以下にご紹介している「仮名字形一覧」にアクセスして《活字見本帳から見る》からリンクしているページに入ると、他の見本帳と共に全94点の見本帳の表紙を画像で見ることができます。
表紙の画像をクリックすると、その見本帳に収録されている仮名の一覧が表示されます。

この字形データベース「仮名字形一覧」で展開される仮名字形の一覧は、『明朝体活字字形一覧─1820年~1946年─ (* 5)』と対をなす仮名字形の一覧です。

「仮名字形一覧」は閲覧自由です。
以下のURLからアクセスして是非いじり倒してください。
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/katsuji/jikei/


* 1) 活字 近代日本を支えた小さな巨人達
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/katsuji/

* 2) 小宮山博史(こみやまひろし)
書体設計士、書体史研究家。
1943年東京都生まれ。國學院大学卒業。
1971年佐藤タイポグラフィ研究所に入所し、書体研究家・佐藤敬之輔氏に師事する。
書体設計に、平成明朝体、中華民国国立自然科学博物館中国科学庁の表示用特太平体明朝体、大日本スクリーン製造の日本の活字書体名作精選、韓国サムスン電子フォントプロジェクトなどがある。
書体史研究の成果に、『日本語活字ものがたり──草創期の人と書体』(誠文堂新光社)、『明朝体活字字形一覧─1820年~1946年─』(文化庁)、『本と活字の歴史事典』(柏書房)、『明朝体活字──その起源と形成』(グラフィック社)などがある。
2010年竹尾賞デザイン評論部門優秀賞、2011年佐藤敬之輔賞受賞。

* 3) 横浜市歴史博物館 調査研究報告書 Vol. 18 2022
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/koudou/study/publications/houkoku/tyousakenkyu18/

* 4) 仮名字形一覧
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/katsuji/jikei/

* 5) 明朝体活字字形一覧─1820年~1946年─
1820年から1946年の明朝体活字総数見本帳を元に、字種ごとに時代の古い順に明朝体漢字字形を並べた字形資料集。文化庁 1999年刊。

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア株式会社
コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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