ダイナフォントストーリー

カテゴリー:連載コラム「ぬらくら」
2023/01/19

ぬらくら第142回「MoMAの出来事」

新年明けましておめでとうございます。
本年も当コーナーをご愛読くださいますよう、よろしくお願いいたします。

最新のディスプレイ・グラス(メガネ型の表示装置)をかけて、スマートフォンをインターネットに接続、そこから時間ができたらゆっくり見たいと思っていたMoMA (* 1) の「ヴォルフガング・ティルマンス/恐れずに見ること (* 2)」の会場に入ります。

ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans 1968-)はロンドンとベルリンを拠点に活動するドイツ出身の写真家です。

会場に入ると、そこは今までとは次元の異なる展示方法で作品が展示された空間です。
夜の歓楽の恍惚としたイメージや、カメラを使わずに生み出された抽象的な画像、建築物に投影された繊細な肖像写真、艶かしいヌード写真などなど、幅広い(広過ぎる)主題と作品が、従来とは全く異なる新しい方法で展示されています。

壁には額装されていない剥き出しの作品がテープで留めてあったり、切り取られた形でピンで吊り下げられていたり、額に入れられた写真は高く積み上げられた雑誌の横に無造作に転がっています。さらに、壁やテーブルの上に雑然と置かれた無数の写真の山。それらはカラー画像だったり白黒画像だったり、投影画像だったりと、ほんとうに様々です。

もっとよく見ようと顔を作品に近づけたら、ディスプレイ・グラスが乱雑に飾られた写真の額にぶつかって外れてしまいました。ディスプレイ・グラスが外れて床に落ちた途端に、体はMoMAから弾き出されてしまったのでした。

『ディスプレイ・グラスをMoMAに置いてきてしまったナ……』


* 1) MoMA
The Museum of Modern Art、ニューヨーク近代美術館
https://www.moma.org/

* 2) ヴォルフガング・ティルマンス/恐れずに見ること
Wolfgang Tillmans/To look without fear
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/5440

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
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