連載コラム
2011年06月24日

ぬらくら 第10回 中国語圏の漢字事情

日本以外で漢字を使っている国と地域には中華人民共和国(ここでは便宜上、中国と呼びます)、台湾、香港、マカオ、シンガポール、マレーシアなどがあり、これらの国・地域を漢字文化圏として見ることができるでしょう。
しかし当然のことですが、漢字を使っていると言っても、それぞれの国と地域によってその実情は異なります。
北京の繁華街を歩いていると、赤い看板に「麦当労(*1)」と書いた看板を掲げている店によく出会います。
台北(台湾)に行くと同じ系統の店がやはり赤い看板に「麥當勞」と書いています。
どちらも中国語圏共通の話し言葉である普通話(中国標準語。日本では北京語と呼ばれることもあります。)でmai-dang-laoと読みます。
現地の人にはこれがMcDonald'sに聞こえるのでしょう。
中国語圏は何処に行っても話し言葉として普通話が普及していますが、文字のことになると事情が変わります。
同じ中国語圏なのに、なぜ北京(中国)と台北(台湾)ではマクドナルドを現す文字の形が違うのでしょう。
中国語を表記する漢字の体系には大きく分けて二つあります。
一つは主に中国で使われている簡略化された字体(簡体字)を含む体系、もう一つが台湾で使われている古典的な字体(繁体字)の体系です。
この二つは文字規格(文字コード規格)が全く異なり中国はGB18030という規格で、台湾はCNS11643という規格でどのような字形を使うのかを文字の集合として規定しています。
GB18030は2000年に制定された規格で27,484文字が収録されています。
2005年に改訂された規格では収録文字数が約七万文字に拡張されています。
CNS11643は1986年に制定された規格で13,735文字が収録されています。
1992年に改訂された規格では収録文字数が48,711文字に拡張されています。
台湾には1984年に台湾の資訊工業策進会(Institute for Information Industry)が制定したBIG-5というもう一つの規格があり、13,461文字を収録しています。
当時の台湾の五大パソコンメーカー、エイサー(宏碁)・マイタック(神通)・佳佳・ゼロワン(零壱)・FIC(大衆)が共同でこの規格を策定したことに由来してBIG-5と呼ばれています。
BIG-5は2003年にCNS11643の附属書で追認されるまでは公的な規格ではありませんでしたが、既に多くの産業界が採用しており、実質的な標準規格として普及してきた経緯があります。
中国のGB18030は台湾のBIG-5に収録されている文字を含んでいますが、台湾の字形とは微妙な違いがあるようです。
逆に台湾のCNS11643やBIG-5には中国で使用されている簡体字が含まれていません。
簡体字を使っている国には中国の他にシンガポールとマレーシアがあります。 繁体字は台湾の他に香港とマカオが使っています。
香港とマカオが今も繁体字を使っている背景には歴史的な経緯があるようです。
興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。
韓国の文字コード規格KSXも漢字を含んでいて、歴史的には韓国も日本、中国、台湾と並んで漢字圏に含まれますが、現在の韓国では日常生活で漢字を用いることはないようです。
意外に思われるかも知れませんが、中国、台湾、韓国の文字コード規格にも日本の「ひらがな」と「カタカナ」が収録されています。
これらの国・地域の文字コード規格に日本の「ひらがな」と「カタカナ」が収録されている本当の理由を知りませんが、漢字文化圏にとって「ひらがな」と「カタカナ」は無視できないものなのかもしれません。
(*1)正しくは「労」の初めの三点(ツ)が草かんむりになります。
日本にこの文字はありません。

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

著者
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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