PICK UP 書体
2020年06月05日

DynaFont PICK UP書体-UD明朝体

ダイナフォント2020年新書体「UD明朝体」

文字の世界では、誰もが平等である -UD明朝体


文字の世界では、誰もが平等である

日常生活のあちこちに溢れている文字は、何気ない瞬間に私たちの目に映ります。
車が動いている時に車内から道路標識や広告を見る時、強い光で視界がぼやける時、眼鏡を忘れて駅の案内板が見えない時、タグの印刷が薄くなって見えにくい時、製品パッケージの成分表の小さな文字を読みたい時、こういった場面の中で、誰もが一度は文字を上手く判別できなかったという経験があるのではないでしょうか。
一方で、文字をはっきりと認識できない人々にとっては、こうした場面は特別なことではなく日常的なことなのかもしれません。
全ての人がはっきりと読めることを目指すというコンセプトのUDフォントは、街中に文字があふれる中、文字環境において誰もが平等になれるような「理想郷」といえます。

 
違いを払拭するユニバーサルフォント
文字を読むことは、ほとんどの現代人にとってはごく自然なことですが、低視力(ロービジョン)や心身障害者、高齢者といった方々は、文字を認識するだけでも労力を費やすため、文字そのものが大きな障害になる可能性があります。 一方、文字を読むことに支障がない人々においても、光が眩しい時や移動している時、小さすぎる文字や、経年劣化による色あせや色むらによって判別が難しくなることがあるかもしれません。
1980年代に米国ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターの所長を務めたロナルド・メイス氏(Ronald L.Mace) がユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)という言葉を使用し、「ユニバーサルデザインの 7 原則」を発表しています。誰でも公平に使えること、使う上での自由度が高いこと、簡単に使えて直感的に理解できること、必要な情報がすぐに見つかること、単純なミスが危険につながらない、身体的な負担が少ない、接近して使える寸法や空間になっている、という原則は、その後、さまざまな分野のデザインに浸透していきました。
ユニバーサルデザインは、できる限り全ての人が使いやすいように考慮されており、さまざまな違いや障害の有無を問わず共存できるような環境を作ることを念頭に、「すべての人」を対象としたデザインとなっています。近年、フォント業界でもユニバーサルデザインの波が押し寄せていますが、世界各国のフォントベンダーは視認性(visibility、人目を引く、見やすい)、判読性(legibility、誤読しにくい)、可読性(readability、読みやすい)を追求してデザインを行っています。
DynaFontのUDゴシック体UD丸ゴシック体は、どちらもユニバーサルデザインに基づいたデザインであり、できる限り全ての人がどのような状況下においても読みやすい書体になっています。UDフォントは、シンプルで見やすいデザインを前面に出しているので、縦線と横線の太さが均等なゴシック体はUDフォント向きであるといえますが、逆に、三角形のうろこや装飾性のあるセリフ、太さが均等ではない明朝体はUDフォントの原則からかけ離れてしまいます。それではなぜフォントデザイナーは明朝体をUDフォントにしようと思ったのでしょう。



UD VS 明朝体?
ユニバーサルデザインはできる限り全ての人にバリアフリーの環境を最大限作り出すことをコンセプトにしています。漢字文化圏において、明朝体は日常生活においても大変重要な書体の一つであり、古くからの歴史に人間味のある雰囲気を持ち、多くの人々に愛されている書体です。そのため、広く普及している明朝体にもユニバーサルデザイン(UD)の理念を取り入れることで、より使いやすい書体にしていくことを考えていくことこそ、フォント開発者の使命であると感じたのでした。しかし、明朝体は、装飾的な筆画が多い印刷用に開発された書体です。ユニバーサルデザイン(UD)の原則に沿ったデザインにしつつもデジタル時代の生活様式に合う工夫も必要となります。
DynaFontのUD明朝体は、ふところを広げて空間を増やすことで筆画がつぶれないように配慮し、誤読しやすい形の文字をシンプルなデザインにしているだけではなく、そのほかにも細かな処理を施しています。明朝体は活版印刷の時代に文字を彫りやすいように横線が細く、縦線が太くなりましたが、現代のデジタルデバイスや特殊な環境下で表示させると横線が消えやすく判別しにくいため、線を太く加工することではっきりと表示できるようにしました。また、明朝体らしい三角形のうろこは、従来の尖ったデザインを丸く処理することで高解像度のディスプレイでも引っ掛かりやちらつきを抑えることができ、読み心地を向上させています。また、余分な装飾を取り除き、シンプルですっきりとした見た目にすることで筆画同士がくっついて判別できない部分や、文字がぼやけるといった問題を大幅に改善しました。


小さいサイズの文字やぼやけていも判別しやすい明朝体

目に優しい光を灯す
UDフォントは見やすいデザインの反面、文字本来の美しさが損なわれ、人々が慣れ親しんだ自然な形から逸脱しやすい面もあります。例えば、文字の内側の空間が大きく余白の部分が明快であると、文字がかすれにくくなるため、低視力(ロービジョン)の方や特定の環境下においては必要な情報を即座に読み取ることができますが、反面、漢字はふところが広くなると本来の階層やリズムが低下し、字間も狭まるのでかえって読みにくくなってしまう場面もあります。
はっきりと判別できるという原則のもと、明朝体らしい美しさを出しつつ可読性を向上させるため、デザインチームは、ふところをバランスのとれた比率で拡大し、漢字本来のメリハリが崩れないように調整を行いました。また、かなは、落ち着いた雰囲気とシンプルな筆画や、角に丸みを付けた漢字のデザインに合わせたほか、日本語の母語話者が、かなに抱くイメージや文字を見る時の習慣に基づいて修正を繰り返していくことで、機能的なUDフォントを見た目にも自然で心地よいデザインに仕上げました。



UDフォントの用途は無限大
UDフォントは判別しやすいという特性から、標識、掲示板、道路標識、看板などに適していますが、文字数の多い本文は得意としていません。明朝体は一般的に、ゴシック体と比べて文字のサイズを大きくする場合や、見出しや大型の表示画面に使用する場合には向いていないと考えられています。デザインチームは、UDフォントと明朝体のこうしたセオリーを打破すべく、開発当初から、より広範囲で多目的に使えるユニバーサルデザインの明朝体を目指して開発されています。
完成したUD明朝体は、細いものから太いものまで全6種類のウェイトで、小さな文字から大きな文字まであらゆる場面で使用できるフォントになりました。前項で触れたように、UD明朝体は、メリハリをそのまま残しているので読み心地を良くし、本文組みでもバランスを取りやすくしています。また、横線を太くし、筆画の引っ掛かりを抑え、さらに太いウェイトまで展開することで、今までネックとなっていた大きな文字には向かないという問題点を解決しました。印刷での使用はもちろんのこと、各種デジタルデバイスから今や一人一台は手にしている小さな液晶画面での表示で使用する際も、シンプルではっきりとした印象を作り出すことができます。そのほか、ウェイトによる用途の違いを踏まえ、各ウェイトで字面の大きさを調整しました。太いウェイトは見出し向きで高い視認性が求められるため、字面を大き目に調整しています。逆に細いウェイトは本文向きなので、字面を小さめにすることで、文字間が広がるので風通しが良く、より一層スムーズに読み進めることができます。

このように、デザインの細部まで工夫を凝らし、UD明朝体の用途を広げることで、文字による社会貢献を行える書体になりました。


UD明朝体ファミリー


DynaFont UD明朝体の特長
UD明朝体は、通常の明朝体に比べ、文字のふところを広げ、横画を太く調整し、収筆部分には丸みを持たせ、過度な装飾を省いて文字をシンプルで読みやすくした誰にとっても見やすく読みやすいユニバーサルデザインフォント(UDフォント)です。また、明朝体らしさはそのままに、機能性と人間らしさのバランスが取られた、人の温もりと視覚的な美しさに回帰したUDフォントです。

UD明朝体  漢字の特長
UD明朝体  かなの特長
UD明朝体  英数字の特長

▼UD明朝体 書体見本
UD明朝体 書体見本



おすすめの活用方法
UD明朝体は6種類のファミリーで展開し、大型のキャッチコピーや見出しから本文の小さな文字、印刷物からディスプレイ表示まで様々なシーンで幅広くご活用いただけます。
UD明朝体 活用例



「UD明朝体」フォントデザイナーへの質問
Q. 明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体、楷書体のうち、どの書体がお好きですか?
デザイナー:一番好きな書体が明朝体です! UD明朝体の担当になった時、とても嬉しかったことを覚えています。明朝体はかつて職人が文字を彫刻していた時代の経験が積み重なってできた書体であり、元々の筆跡が残されていながらも綺麗に仕上げられた、とても美しい書体だと思います。美しい明朝体を見ているだけでとても良い気分に浸れます(笑)


Q. UD明朝体の開発にはどの位かかりましたか?
デザイナー:引き受けてから1万字まで量産した段階で、2年近くかかっています。


Q. ゴシック体や丸ゴシックと比べて、明朝体にUDを取り入れる場合、どういった点が特に難しいと感じましたか?
デザイナー:デザインしていて、明朝体はある程度決まった特長があるため、ゴシック体にUDを取り入れる方が柔軟に調整することができると感じてしまいました。明朝体らしい特長と全体的な見た目を崩さずに、UDの要件を満たすことにとても苦労しましたね。

UD明朝体は、ダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録されています。
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