連載コラム
2011年05月26日

ぬらくら 第9回 車内放送

ぬらくら子は通勤に地下鉄とJRの相互乗り入れ線を利用しています。
記録しているわけではないので確かなことは言えませんが、この数年、朝の通勤ダイヤの乱れ(遅延)が増えているように感じています。
遅延の主な理由は混雑、車輌故障、車輌点検、車輌整備。
乗降客が多くて発車が遅れるというのは乗客の安全を考えれば理解できます。
けれども運用中の車輌を点検、整備するっていうのが不思議です。
普段の車輌メンテナンスはどうなっているのでしょう。
疑問が浮かんできますが、きっと諸般の事情があるのでしょう。
さて、気になるのは電車が遅延した時の車内アナウンスです。
言い様は丁寧なのですが、とても気になる言葉遣いです。
例えば次のように…
『ただいまこの電車は約○分ほどの遅れをもって運転させていただいております。 お急ぎのところ電車が遅れまして皆さまには大変ご迷惑をおかけしております。 深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。』
この車内放送の何処が気になるのか、皆さんお気づきになりましたか。
『…遅れをもって運転させていただいております。』
というところです。
この言い方だと、誰か第三者が『遅れを持って』運転させているように聞こえてしかたがありません。
「○分」の部分は一分から十数分まで幅があるようですが、わずか一分の遅れで『心よりお詫び申し上げます』なら、三十分も遅れたらなんと言ってお詫びするのでしょう、人ごとながら心配になってきます。
最後の『心よりお詫び申し上げます。』からは、暗記した言葉が口をついて出ているというのが伝わってくる車内放送です。
頻繁にこの車内放送を繰り返しているわけですから無理もないと思いますが、これも気になります。
おかしな言葉遣いの車内放送はこれだけではなく、次のようなものもよくに耳にします。
近頃定着した通勤時間帯の女性専用車についての車内放送です。
『この電車の先頭車両は女性専用車とさせていただいております。』
言葉尻を捉えるようですが、この『…させていただいております。』という言い方は、先ほどの電車遅延に対するお詫びの車内放送と同類です。
『この電車の先頭車両は女性専用車です。』
では何故いけないのでしょう。
おかしな言い回しは他にもあります。
『車内が混雑してきたのでこれからしばらくの間、空調を入り切りとさせていただきます。』
『車内がすいてきたので空調を切りとさせていただきます。』
これらの言い回しを、おかしいと感じないのでしょうか。
耳障りな言い回しは通勤電車の車内放送ばかりではありません。
街中で、あるいは日常のビジネスシーンで、次のような言い回しにもしばしば出会います。
『…できればと思います』
『…を考えてございます』
『…をされています』
『…よろしくどうぞ』
当事者の言葉が主体性を持たないこのような言い回しは、責任回避の気持ちが現れたものなのか、あるいは余計なトラブルを避けるための婉曲な言い回しなのか、ぬらくら子には分かりません。
言葉は時代と共に変わってゆくということは理解しているつもりですが、こういう言葉尻が気になるのは、歳をとってきたということなのでしょう。

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

著者
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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