PICK UP 書体
2019年05月28日

DynaFont PICK UP書体-欧風花体

DynaFont PICK UP書体-欧風花体


陽の光が溢れる昼下がり、西洋庭園を舞台として、
美しく、華麗なピルエットを舞う。

DynaFont(ダイナフォント)シリーズの多くは、古くから伝わる文字に手を加え、新たな書体として開発することで、過去と現在をつなぐ「文字文化を継承する架け橋」のような存在となっています。同じような考え方で、異国情緒の雰囲気を取り入れることで漢字にも「異文化」というベールを被せることはできないのでしょうか。フォントデザイナーは漢字のデザインに異文化という要素を取り入れることで、芸術性に溢れた「欧風花体」を開発しました。
それでは皆さん、「欧風花体」のフォントストーリーを読み進めながら時空を超えた異文化の旅に一緒に出発しましょう!


デザインはいつも大胆なアイディアから生まれる
2008年、フォントデザイナーは日本の書籍でカリグラフィーを目にしたことをきっかけに、新たな手書き文字へのアイディアを閃きました。カリグラフィーのデザインは漢字文化圏でも早くから看板やブランドロゴなどに使われてきましたが、そのほとんどがグラフィックデザインとして作られたもので、今まで多言語に対応したカリグラフィーのフォントは存在しませんでした。当時、デザインを担当した本人も、まさかカリグラフィーのような装飾性の高い書体を作るために骨の折れるような作業が待ち受けているとは思いもしなかったと後に語っています。この大胆なアイディアを実現しようと、すぐにデザインに着手し、ひらがなと漢字のデザインの一部を作成しましたが、思いがけず10年間も作業が中断することになってしまったのでした。
それから年月が過ぎて2018年、フォントデザイナーは書体のデザインに再び着手することになりました。10年にわたって積み重ねてきた経験を活かし、全体のバランスを考慮しながらカリグラフィーの要素を調整するなど元々のデザインに大幅な修正を加えました。更にストロークの滑らかさやふところの取り方に工夫を施す事で、格段にデザインの精巧さが増していき、機能性と視認性に優れた「欧風花体」が誕生しました。


イタリアルネサンス期の文字を参考にした理由とは
「欧風花体」は、軽やかにダンスを舞っているような動きのある見た目ですが、この書体が生まれた背景には人文主義思想が深く関係しています。フォントデザイナーがカリグラフィーの中でも特に気に入った書体として挙げているのがイタリアルネサンス期に生まれた「チャンセリー(CHANCERY)」です。
チャンセリー(CHANCERY)は、人文主義思想から生まれた書体でローマ教皇の書記官が書いた文字がきかっけとなり、後にローマ教皇庁に勤める書記官が様式化した手書き書体としてヨーロッパ全土に広まっていき、その後様々な変化を経て、贅沢品などにも使われるようになった書体です。チャンセリー(CHANCERY)の伝統的な趣と優雅で落ち着きのある見た目は、当時の知識人や収集家などから愛され、特に華やかな装飾が特長的なイタリアのカリグラフィーでは、ヨーロッパの豪華な装飾を施した書籍で使用されています。
「欧風花体」には、こうして16世紀のヨーロッパから時を経て伝わってきた書体からのインスピレーションが加わり、古典の高貴で正統な息吹を取り入れつつ、古典文字の華麗さを現代に復刻させる形でデザインが行われました。
また、17世紀にはロンド体(RONDE)という丸文字が誕生しました。ロンド体(RONDE)もチャンセリー(CHANCERY)と同様に公式な場面で使用される書体で、書き方にも厳格なルールが決められており、「欧風花体」のデザイナーもこの厳格さから大きな影響を受けました。ロンド体(RONDE)とチャンセリー(CHANCERY)は、どちらもやや直立した丸みのある形状の文字であり、「欧風花体」の漢字とひらがなも傾斜を付けずまっすぐな形状にしました。逆に欧文と数字には筆記体らしい傾斜を残す事で、様々な言語で組版をした際、見た目がすっきりした印象になるようにデザインしています。


欧文と漢字の出会い 文化の違いを越える旅の始まり
四角い漢字のデザインにカリグラフィーの要素を取り入れるためには、カリグラフィー本来の特性と画数の多い漢字という2つの要素のどちらも考慮しなければならず、フォントデザイナーにとっては苦労に苦労を重ねた部分でした。
その解決策として、カリグラフィーの滑らかな動きのある書き方を利用して、漢字の直線的な線に羽根のように柔軟性のある曲線を取り入れて柔らかく見せることにしました。しかし、カリグラフィー特有のループを取り入れすぎてしまうと漢字自体が過度な装飾で覆われ、見た目にも複雑で可読性がより一層低くなる可能性があります。そこで、ループの数を調整することだけではなく、線の太さを細くすることで、より美しく、空間にメリハリのついたデザインにすると共にループが読み手の目線を遮らず、読み心地を大幅に改善できました。


欧風花体の特長
優美で動きのある文字を引き立たせるように飾り付けられたループは、まるで華やかな衣装のようで、また、文字の抑揚が軽やかに舞っているようにも見え、見る者の心を揺さぶります。
「欧風花体」は、欧文の手書き文字特有の美しさを参考に、漢字とひらがなに緩急をつけた滑らかな曲線を取り入れています。全体的に丸みのあるスタイルでありながらも軽やかさが感じられ、飾り付けられたループが上品さを際立たせています。

欧風花体の特長

欧風花体のラフ
▼欧風花体 書体見本
「欧風花体」書体見本
おすすめの活用方法
「欧風花体」は、見出し書体として開発した書体であり、ポスターや招待状、雑誌などのタイトルに適しています。また、用途によって様々な表現が可能なフレキシブルな書体なので、見出しだけではなく、デザイナーによる書体へのインスピレーションを以て「文字で遊ぶ」ようにデザインすることもオススメです。

「欧風花体」活用例

「欧風花体」フォントデザイナーへの質問/デザイナーの制作秘話
Q.2008年に欧風花体の初期デザインは完成していたそうですが、10年を経た2018年にデザインを再開するまでのこの10年という期間はどうしても必要な時間だったのでしょうか?
デザイナー:はい、必要でした。この期間にたくさんの経験を積んだからこそ、この書体を完成させることができたと思います。改めて10年前の初稿を見てみると、考え方が甘かったのかデザイン面で雑な部分がたくさんありますし、時間をおいて修正を行ったからこそ、やっとカリグラフィーらしさを表現することができたのではないかと思います。

Q.欧風花体のような難易度の高い書体制作から得たものは何ですか?
デザイナー:この10年間で私自身、数多くの多言語書体を手掛けてきましたが、欧風花体が初めて漢字のデザインを手掛けた書体なので、私にとっても学ぶべき点が数多くありました。また、違う視点から見てみると、欧風花体も多言語のデザインにあたり、日本語、漢字、欧文、符号、キリル文字、ギリシャ文字…といった全てのデザインを統一しなければならず、通常の書体よりも難易度が高い書体でした。こうした難易度の高い書体を完成させることができたのは私一人の力ではなく、周りの皆さんからの貴重な意見やアドバイスがあったからこそ完成させることができたと思っています。

Q.欧風花体をデザインするために、欧文書体のデザインを勉強しましたか?
デザイナー:今回は特別にカリグラフィーの授業を受けました。伝統的なカリグラフィーの書き方を学んだほか、数々の書籍からカリグラフィーの書き方や歴史の流れ、文化的な側面も学びました。

Q.将来的に別のカリグラフィー書体を開発する考えはありますか?
デザイナー:カリグラフィーという概念自体の範囲が広いので、中でもデザインできそうなタイプの書体を選んでデザインを試してしてみました。将来的には試したデザインをベースに、カリグラフィーを漢字に取り入れた書体を開発していきたいと思っています。

※欧風花体は、ダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録されています。
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