連載コラム
2018年12月04日

ぬらくら第92回 「鬼を笑わせる」

(本記事掲載後に明らかになった情報を追記して再発行しました。)

平成も後6ヶ月を残すのみとなりました。

既に読者の皆さんもご存じのとおり、政府は今上天皇の退位日を2019年4月30日、皇太子の天皇即位日を2019年5月1日にすると決定しています。
新天皇の即位とともに元号も改まります。

2019年5月1日からは未だ発表になっていませんが新しい元号がスタートします。
これを改元と呼ぶことが多いようですが、改号とか称元(しょうげん)と呼ぶのが正しいようです。

この改号を受けて、今年の9月末に開かれた「文字情報技術促進協議会 (* 1) 」の会合でIT業界としてどのような対応が必要になるのかが論議されました。

フォントに関しては、新元号の合字 (* 2) の収録があります。

Adobe Japan1-0 (* 3) には合字の明治・大正・昭和が、Adobe Japan1-1には合字の明治・大正・昭和に加えて合字の平成が収録されています。

それぞれの合字のCID (* 4) は以下のようになっています。

 明治:7621
 大正:7622
 昭和:7623
 平成:8323

ユニコード (* 5) でもそれぞれの合字に以下のコード・ポイントが与えられています。

 明治:U+337E
 大正:U+337D
 昭和:U+337C
 平成:U+337B

アドビ社はAdobe Japan1-6の補足(Supplement)として新元号のCIDを検討しているようで、以下のCIDコードポイントが準備されるようです。

 新元号:23058(横書き用)
 新元号:23059(縦書き用)

 
【追加情報】
上記のように書いたが、その後アドビ社は2018年12月6日の文字情報技術促進協議会主催のセミナーで、この二つの合字を追加した文字コレクションをAdobe-Japan1-7とすると発表している。 

また、フォント名にAdobe-Japan1-7を明示せず、フォント内部のROS (*) 情報をAdobe-Japan1-7とする、としている。

*  ROS:CIDSystemInfo辞書のRegistry、Ordering、Supplementの略語

また、ユニコード・コンソーシアム (* 5) でも、以下のコードポイントを新元号にあてると発表しています。

 新元号:U+32FF

合字をフォントに収録する準備は整っています。
新しい元号の名前が発表されないと、フォントに合字を収録することができませんが、その発表がいつになるのか、一説には一ヶ月前という情報もあるようです。
これでは新元号を収録したフォントのリリースが、新元号スタート時に間に合いそうもありません。

フォントに収録した新元号の合字も IME (* 6) で簡単に呼び出せるよう、IMEの辞書もアップデートが必要になります。

さらにWindowsやmacOS、AndroidやiOSなどのオペレーティング・システム (* 7) も新元号への対応が必要になります。

2019年は平成31年と新元号1年が併存する年になります。
1年を元年とも表記するのでこの表記を考慮すると、来年は……

 2019年
 平成31年
 新元号1年
 新元号元年

の四つの表記が存在する年ということになります。
また、平成31年5月や新元号4月は存在しないので、そうした誤表記への対応も必要かもしれません。

オペレーティング・システムのカレンダー機能が新元号を正しく認識しないと2000年問題と似たようなことが起こるかもしれません。

2000年問題をご記憶の方も多いと思います。

この頃までのコンピューターは内部で年月日を処理するとき、西暦年を下二桁で処理していました。
1999年の年が明けて2000年になったとたんに西暦表記が "99" から "00" になり、これを1900年と誤認識するなど、社会的に大きな混乱が起こることが心配されました。

関係者達の事前の対策と努力が功を奏したのか、結果的には大きな混乱もなくコンピューターの世界は2000年を無事にくぐり抜けることができました。

未だ決まっていない2019年の新元号の下、コンピューターの世界で何事も起こらないことを祈るばかりです。

鬼を笑わせる来年の話しでした。

* 1) 文字情報技術促進協議会
https://citpc.jp

* 2) 合字
[a+e] (U+00E6) や[平+成] (U+337B) のように複数の文字を合成して一文字にしたもののこと。
( )内はユニコードのコードポイント。リガチャー (Ligature) とも言う。

* 3) Adobe Japan1-0
「ぬらくらコーナー 第37回 Adobe-Japan1」を参照。
「ぬらくらコーナー 第37回 Adobe-Japan1」はこちら

* 4) CID
Character IDentifier(文字を特定するもの)。
Adobeが提唱したCID-Keyed Font Formatに基づいたフォントが収録している一文字一文字に付けられた固有の番号のこと。

* 5) ユニコード/ユニコード・コンソーシアム
(Unicode/The Unicode Consortium)
ユニコードはユニコード・コンソーシアムが定めた符号化文字集合の規格。
ユニコード・コンソーシアムはゼロックス、マイクロソフト、アップル、IBM、サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード、ジャストシステムなどが参加して作られた業界団体。 1993年に国際標準化機構(ISO/International Organization for Standardization)が策定する国際規格との一致が図られてUnicodeと互換を持つ規格ISO/IEC 10646が制定されている。

* 6) IME( Input Method Editor)
パソコンで日本語を入力するとき、キーボードから「かな入力」や「ローマ字入力」でひらがなを入力して漢字やカタカナに変換して文章を書くが、この変換の役割を担うソフトウェアを IMEと言い 「日本語入力ソフト」とも呼ばれる。

* 7) オペレーティング・システム(Operating System/OS)
コンピューターを操作するのに必要な最も基本的で中心となるソフトウェア。
コンピューターのハードウェアとアプリケーション・プログラムやユーザーの間に位置し、ユーザーやアプリケーション・プログラムに対して標準的なユーザー・インターフェースを提供している。 また、ハードディスク・ドライブ管理や、メモリー管理、ネットワーク管理なども担っている。

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア株式会社
コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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