ダイナフォントストーリー
2018年11月30日

「舞風隷書体」誕生秘話

書体デザイン竹内利映氏/開発フォントデザイナー・サンディーインタビュー

女流作家による個性際立つ新隷書「舞風隷書体」
 
舞風隷書体「隷」
舞風隷書体コンテスト出品用の文字の一部
 
 
「舞風隷書体」は、気鋭の女流書家である竹内利映氏が書いた隷書をダイナコムウェアがデジタルフォント化したダイナフォント2018年新書体です。伝統的な隷書体をベースに、書家である竹内利映氏による強く伸びやかな個性を感じさせる毛筆書体です。 今回、書体の完成に伴い、竹内利映氏とフォントデザイナー・サンディーへインタビューを行っています。

舞風隷書体のコンセプト
伝統的な書道の様式を基に隷書体特有の横長の骨格と波打つような運筆である波磔を取り入れ、力強さの中にも躍動感のある運筆で、伸びやかなはらいと滑らかな提按(上げ、押さえ)といった隷書体の個性を際立たせ、文字の美しさを表現した書体です。

フォントデザインコンテスト2013 毛筆部門優秀賞受賞
竹内利映氏の書いた作品をダイナコムウェアがダイナフォントとして開発させていただくことになったそのご縁は、ダイナコムウェアが2013年に開催したコンテスト「ダイナコムウェア フォントデザインコンテスト2013」でした。
竹内利映氏の“書家の書く美しい文字を、もっと色々な人に知って欲しい”という想いを込めて書かれた作品は審査員の目に留まり、毛筆部門で見事優秀賞を受賞しました。
その書風には、これまで自身が様々なフォントを見てきた中で、隷書体らしい隷書体というフォントに触れたことが無かったことで、コンテストの書体として、隷書に挑戦したいという想いもありました。こうして書き上げられた作品は、これまでの隷書体とは一風違った竹内利映氏の個性が際立った書風となりました。

 
書家・竹内利映氏およびフォントデザイナー・サンディーが語る「舞風隷書体」
ご自身の作品が初めてデジタルフォント化される竹内利映氏と実際に書体をデジタルフォント化したダイナコムウェアのフォントデザイナー・サンディーの両名に「舞風隷書体」について語っていただきました。

■書家・竹内利映氏への質問と回答
コンテストでは隷書を書かれていましたが、普段から書かれる隷書もこの書風ですか?
この隷書体の書風はコンテスト用に初めて書いた書風です。隷書自体はたくさん練習している書体ではありますが、コンテスト出品用に、通常はわずかな動きで書いていく線を、少し大袈裟な動きにして、筆に任せて書かせてただきました。一般の隷書より横画のうねりを少なくしています。また、はらいの部分は基本的に収筆の部分で筆をやや持ち上げて真っ直ぐにして、最終的に筆を寝かせて軽く戻す書き方をする場合が多いと思うのですが、私は力を入れたまま筆を回転させて、はらいに持っていく形にしました。
こうして、より躍動感が伝えられる文字になったと思います。

デジタルフォントへの作業の上で、ご苦労された点などはありますか?
苦労した点は、マスの中にきっちり字を入れる作業がこれまであまり経験が無かったため、慣れるまで書き辛さがありました。また、記号類を筆で書いた経験がないので、隷書らしい記号の考案には苦労しました。

ご自身の作品がデジタルフォント化される事に対して、またデジタルフォントとして感情が伝えられる事に対して、どういった感想をお持ちですか?
フォント開発に参加させていただく中で、フォントの開発には、文字を書く、それをデータ化する、字形を検討する等、実に様々な工程があり、また、それぞれのプロフェッショナルの手が掛かっている大変なプロジェクトなのだという事を感じました。本日は、そうした工程を経て完成したフォントで出力した文字を見る事ができて、とても感動しています。
大変お恥ずかしい限りなのですが、私はこれまで、感情を伝えたい時は手書き、無機質なものはフォントというふうに漠然と考えておりました。今回、フォントの開発過程を拝見させていただき、この考えが大きな間違えであったことが分かりました。そのため、フォントで感情を伝えるという概念は、私にとってとても新鮮で、大変勉強になりました。

今回、デジタルフォントとしてリリースされた「舞風隷書体」が、今後、ユーザーにどんな形で使用されると思いますか?
またオススメの使い方はありますか?

クライアントからオーダーを受けて文字を書く場合は使われるコンテンツは決まっていましたので、自分の文字がフォントとしてどのように使われるのかとても興味があります。 文字の使い道としては伝統ある古い題材を扱った印刷物などに使いやすいのではないでしょうか。 また隷書体ですので、書体にあまりお詳しくない方には「中国風」というイメージを持つ方が多いのではないかと思います。実際に私の周りには隷書体に関して、そのように捉えておられる方もいらっしゃいますので、中華風のデザインにも良いかもしれません。

最後に「良い文字を書くために大事な事は何ですか?」
技術はとても重要ですが、感性もとても大事です。多くのモノに触れて、様々なモノを吸収することで、良い文字が書けるようになると思います。
竹内利映氏
 
竹内利映氏本人が舞風隷書体を再現
今回のインタビューの中で、竹内利映氏が普段、使用している筆で作品の文字をなぞりながら、文字を書く時の様子を再現していただきました。実際に文字を書いていなくても、真剣な面持ちで一文字一文字に集中していた様子から、良い文字を書くための秘訣を垣間見ることができました。

竹内利映氏PROFILE
書家。独立書人団準会員。書玄堂代表。趣味は小林一茶とお酒と株主優待。
URL:https://ameblo.jp/toshie-takeuchi
■フォントデザイナー・サンディーへの質問と回答
「舞風隷書体」の第一印象について教えてください。

とても個性的な書体だと思いました。
「舞風隷書体」は、隷書体特有の幅広で扁平な字形と波磔(はたく)という波打つような横画以外に、ダンスで跳躍する時のような美しい抑揚の筆遣いが特長です。
モダンな新しさがあり、仮想ボディの枠の中でも自由奔放でのびやかな運筆が表現されています。
私はこういった強く印象に残るような手書き風書体が大好きなので、待ちきれずにデジタル化に着手しました。


どのようにして紙に書かれた手書き文字をデジタルフォント化したのですか? また、工夫した点があれば教えてください。
通常、私たちが紙に文字を書くと、大きさや太さにバラつきが出てしまいます。そこでデジタルフォント化の際にはそうした点に注意しながら、元々のデザインが持つ雰囲気を壊さずに全体のバランスを整えることに注力しました。


デジタルフォント化にあたって、書体の個性を把握するために何か行ったことはありますか?
これまで習いやすい楷書体を練習してきましたが、元々隷書体が好きだったこともあり、いつか隷書体を綺麗に書いてみたいという思いがありました。初めて「舞風隷書体」を見た時、流れるように滑らかで生き生きと動きのある個性あふれる、この隷書にとても感銘を受けました。こうした書体を書くことができる竹内さんに対して、尊敬の念と憧れの気持ちを抱きました。
開発当初、どうすれば流れるように滑らかな筆遣いをデジタルで表現できるかとても悩みました。
何度も舞風隷書体を模写しながら、この書体を書いた竹内さんの思いを感じ取りつつ、書体の特長を掴んでいく事ができたと思います。練習を繰り返し書けば書くほどに「舞風隷書体」という書体を好きになれました。そして、書体を制作していく過程で一文字一文字の美しさを心穏やかにじっくりと味わうこともできました。


その他のDynaFont隷書体シリーズと比べて、舞風隷書体最大の特長とは何ですか?
舞風隷書体はふところが広く、一般の隷書より横画のうねりが少ないほか、左右対称のはらい、偏と旁のバランスが均一、重心が高いといった特長があります。
他の隷書体にはないオリジナルの構造と筆画が際立つ書体です。


「舞風隷書体」の中で好きな文字があれば教えてください。
これは難しい問題ですね。この書体はとても個性的なので、どの文字も大好きです。
特に「家、易、麥、戌」は舞風隷書体の特長が分かりやすいと思います。
重心が高く、筆に任せて書いているかのような滑らかさがあり、波磔の先端の部分がクルッとしていることや左右対称で落ち着いた雰囲気があるなど、まるで筆が紙の上でダンスを舞っているように見えてきます。
「舞風隷書体」は、本当に魅力的な書体だと思います!


フォントデザイナー・サンディーが取り上げた舞風隷書体の4文字

フォントデザイナー・サンディーが取り上げた舞風隷書体の文字

舞風隷書体の特長
舞風隷書体の特長

舞風隷書体 書体見本
舞風隷書体 書体見本

舞風隷書体の活用法
舞風隷書体は伝統的な隷書体から生まれた書体です。他の隷書体シリーズと比べて運筆に強弱が付いており、手書きの流れるような筆跡が再現されました。食品や飲料品のラベル、看板、製品パッケージ、メニュー、書籍のタイトル、年賀状などの葉書での使用に適しています。

舞風隷書体の活用法

DynaFont隷書体シリーズ
DynaFont隷書体シリーズ

ダイナコムウェアでは、今回、リリースとなった新書体「舞風隷書体」以外にも「隷書体」「雅風隷書体」「唐風隷書体」と豊富なラインナップがございます。是非、場面ごとに様々な隷書体を使い分けてご使用ください。
「隷書体 Win版」の詳細はこちら
「隷書体 Mac版」の詳細はこちら
「DynaFont PICK UP書体-雅風隷書体」の詳細はこちら
「DynaFont PICK UP書体-唐風隷書体」はこちら

 
※舞風隷書体はダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録されています。DynaSmartシリーズの詳細はこちら

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