PICK UP 書体
2018年07月16日

DynaFont PICK UP書体-金剛黒体 タミル語

文字が伝える異国の香り「金剛黒体 タミル語」


黄、オレンジ、赤、茶・・・・・、カラフルで種類も豊富な香辛料は
そのどれもが魅力的だ。
インドの文化も香辛料のように多様性に富み、各地域で
独自の文化を発展させてきた。
活気に満ちあふれた市場では、金色や真っ赤に輝く香辛料が香りを放ち、
訪れる人々の心を刺激し、掴んで離さない。

 

マサラ
 
南アジアの熱帯地域に位置するインドは香辛料が豊富に存在している事で知られており、現地の料理は幾種類もの香辛料で味付けされています。インドを訪れる旅行者は、混ざり合った香辛料が放つ鮮烈な香りに五感を刺激され、惹きつけられることでしょう。現地の人たちは、こうした様々な香辛料を混ぜ合わせた調味料を「マサラ」と呼んで使用してきました。
この「マサラ」同様にインドという国もまた、多民族や多言語、多宗教といった様々な要因が混じり合い重なり合って発展してきた国家といえるでしょう。
インドの神秘的な神々
 
多面性を持った国 インド
インドといえば、「カレー」「ボリウッド」「神秘的な神々」などをイメージする人が多いかもしれませんが、それらはインドの一面に過ぎません。インドという国の文化は深く掘り下げる程に多様で複雑な一面を見せ、各地域の歴史に基づいた言語と習慣を知れば、これまでインドに持っていた固定観念が砕かれてしまう事になります。
インドの紙幣

シンガポールの看板▲英語とタミル語の2か国語が使用されているシンガポールの道路標識
 
インドには地域毎にそれぞれ異なる文化が複雑に存在しています。
言語を例に挙げると、インドには公的に認められている指定言語でも22種類あり、そこに方言も含めると実に1,600余りの言語が存在しています。言語の種類の多さに驚かされてしまいますが、インドの紙幣も複雑で、一般的に使用されているヒンディー語と英語以外に裏面には各地域で使用されている15種類の言語が記されています。
またインドには全ての地域で通用するような言語は存在せず、使用人口が最も多いヒンディー語ですら全体の40%に満たない人にしか母語として使用されていません。政府や学校など公的な場所においても複数の言語の併用か英語でコミュニケーションを取っている状況です。その複雑さを示す例として世界的に有名な某炭酸飲料水の広告でも南インドとインド北部地域では異なるイメージキャラクターが採用され、それぞれ別々の言語でPRを行った程です。

また、南インドはインド洋とベンガル湾に面しており、人々が航海技術に精通していたことと外交的な民族性から、言語もまた外の世界に向かって伝わることになりました。そのため現在では30余りの国々で使用されるようになり、シンガポールでもタミル語を公用語の1つとして採用しています。
タミル語を研究する言語学者の間では、タミル語は「世界の言語」と認識されています
コウリバヤシの葉
▲古代インドやミャンマーなどの地域ではコウリバヤシの葉に仏教の経典を書いていたことから「貝葉経」と呼ばれています。
熱帯地域に生息するシュロの葉が丸い文字を生み出した 
古い歴史を有するタミル文字は、大小様々な丸い形の文字の組み合わせでできているので、思わず「これは落書きですか?それとも文字ですか?」と質問したくなってしまうほどです。しかし実はこうしたタミル文字の特徴には、れっきとした由来があります。もともと南インドとスリランカは熱帯に属しており、ヤシの一種であるコウリバヤシが数多く生息していることから巨大な葉を筆記媒体として活用していました。
横向きに流れる葉脈に合わせて、文字を書く際に葉が破れないように丸い形の文字へと変化したのです。隣国のミャンマーでも早期の頃は葉に文字を書いていたため、同じように文字が丸くなるなどの影響がありました。
タミル文字の構造は、現在わずかに残る「貝葉経」からも分かる通り、気候が大きく影響しています。近代において、伝統的なタミル語を改革したいという意見が出ましたが、タミル語を母語とする人々にとって文字の存在自体が誇らしいものであり、完璧なまでに滑らかな弧線や文字全体が織りなす何とも言えない美しさを有する言語を容易に変更することは許されませんでした。
「貝葉経(ばいようきょう)」とは?
早期のインドとミャンマーでは、仏教を布教しやすくするために宗教の教義を葉に記していました。そして貝葉経は仏教が広まるにつれてアジア各地で作られるようになり、唐代の玄奘(げんじょう)が白馬寺に持ち帰ったものこそが、この貝葉経です!
ミャンマーや雲南などの地域では現地の言語で書かれた貝葉経が現在も残っていますが、この貝葉経の制作は実はとても手間がかかります。
巨大な葉を切り取り、煮沸、乾燥、研磨、裁断、穴あけ、書写、インクの塗り込みなどを経て、最後に何枚もの葉を重ねて冊子化します。側面には防虫効果を高めるために漆を塗り、金粉もまぶされています。
タミル語の表現
タミル語の表現
*タミル語の改革
以前、タミル語の改革を行い、より書きやすく学びやすい文字にしたいという意見が出たことがありました。しかし改革を行えば、タミル語の伝統文化が終わりを告げることになります。歴代の指導者達も伝統を壊して批難を浴びせられることを恐れ、誰一人としてこの厄介な問題に手を付ける事はしませんでしたが、1979年になりようやくE.V.ラーマサーミの提案によってタミル語の改革が行われました。このとき発案から既に40年余りの時が経過しており、タミル語の改革が容易ではなかったことを改めて垣間見れます。
タミル語の言葉

早くから航海技術を駆使し、海外貿易を行っていたタミル人は、0~9、10、100、1000などの数字及び日、月、貸、借、など独自の文字を生み出しました。

DynaFont金剛黒体 タミル語のデザインコンセプト
タミル語の数千年に及ぶ悠久の歴史を理解した上ではるか昔の文化が宿る文字の雰囲気を壊さないように、「金剛黒体 タミル語」のデザインでは特に丸みを帯びた弧線を重視しました。文字の奥底に潜んでいる歴史的な重みが文字からも感じ取れるようなデザインはこうした工夫により生まれました。

タミル語の言葉
「金剛黒体 タミル語」は、その他の多言語とのスタイルを統一しており、英語、数字などの転折部分と弧度を参考にデザインされた書体です。字間についても、実際に視認した時の感覚で細かい修正を行い、均一な太さで流れるような読み心地を実現しました。
タミル語の言葉
タミル語をデザインしたフォントデザイナーが語るタミル語の印象とは
Q. タミル語の第一印象はどのような印象でしたか?
デザイナー:タミル語は丸みが特徴的な文字で、様々な表情を垣間見ることができます。例えば電話のコードのような形をしていたり、ホットドックやハンバーガーのような見た目の文字もあり、非常に興味深い文字です。

Q.書体の完成後、タミル語に対する見方は変わりましたか?
デザイナー:タミル語に対して理解を深めていく過程で、タミル語に大変深い歴史と文化があり、また伝統を重視していることから、その文字に手を加えて簡素化したくないという考えがあったとことを知りました。そのため、私たちが文字を製作する際も、その文化を尊重して丸みのある弧線のデザインにおいて、専門家と何度も検討を重ねて慎重に文字の美しさを追求しました。

Q.文字に隠された文化的な背景を知ることで、デザインにどのような影響がありましたか?
デザイナー:私は中国語を母語としているので、外国人が書いた中国語を見た時、形は合っていても、どこか違和感を覚えるような感覚に陥ってしまう時があります。タミル語も同じで、現地の人が文字に滑らかな丸みがなければ美しくないという感覚を持っていることを理解していなければ、タミル人が感じる「調和」や「完璧な美しさ」といったものが失われたデザインになってしまいますので、その点を意識してデザインしました。

 

【世界中のデジタル社会に向けた新たな書体で「GOLDEN PIN DESIGN AWARD(金點設計獎)」を受賞】
金剛黒体が「GOLDEN PIN DESIGN AWARD(金點設計獎)」を受賞
「金剛黒体」はHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)がトレンドとなる昨今、PCなどの機械においても生き生きとした感情を宿した文字でありながらデジタル社会にフィットするデザインコンセプトの下、開発されました。一般的なシステムフォントとは異なり「金剛黒体」は現代に適したシンプルで洗練されたデザインを採用しています。はっきりとした構造でHMIにおいても呼吸をしている時のような自然な心地良さを実現し、液晶表示の視認や可読においてストレスを大幅に軽減できるフォントです。
使う人に寄り添うデザインという事を高く評価され、2018年度の中華圏向け商品をターゲットとしたデザイン賞である「GOLDEN PIN DESIGN AWARD(金點設計獎)」を受賞しました。また、ベストデザイン賞候補に選出されています。

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