PICK UP 書体
2018年05月18日

DynaFont PICK UP書体-甲金文体

2018年度グッドデザイン賞受賞書体

舞い上がる 古代の息吹 -甲金文体


舞い上がる 古代の息吹

漢字はその起源として「象形」に見られるような自然の姿や形をかたどって作られたものが始まりとされていることから、古代文字の多くが絵文字で刻まれています。2018年新書体として発表された「甲金文体」は、ダイナコムウェアが開発するDynaFontシリーズの代表書体である金文体に続き、改めて古代文字の美しさに着目して甲骨文や金文体の特徴である幾何学的な模様を取り入れた素朴ながらも気品さも備えた書体です。
【古代文字の美しさを再現した甲金文体が国際的デザイン賞であるグッドデザイン賞を受賞】
古代文字の美しさを再現した甲金文体がグッドデザイン賞を受賞
「2018年度グッドデザイン賞」において数々の応募作品の中からダイナフォント2018年新書体「甲金文体」が受賞いたしました。
甲骨文と金文の特徴を融合させた「甲金文体」は、私たちを漢字の起源とされる何千年も昔の世界へと誘います。古代文字を復刻させるという理念のもと、西周早期の「大盂鼎(だいうてい)」に刻まれていた金文を参考に、台湾国立故宮博物院と中央研究院歴史語言研究所が収蔵している青銅器に見られる銘文や甲骨文の実物から着想を得て、古代文字の絵のようにも見える象形的な要素が取り入れられた書体です。 難解な先秦時代の古代文字を識別しやすいようにリファインすることで、デジタルフォントにおいても脈々と続く文字文化の素晴らしさが取り入れられている点で高い評価を受けました。

 
漢字の成り立ちとは
漢字の成り立ちとは
数千年前のまだ文字が出来上がっていなかった時代、人々は岩壁や陶器に記号や符号のようなものを刻むことで意思の疎通や情報の伝達を行ってきました。この時代の記号や符号は、目にした天体や山、川などの風景をかたどって作られており、その一文字一文字に大きな意味があります。先史時代の遺跡から出土された文物に刻まれている原始的な絵文字は漢字の起源を知る上でも重要な要素であり、また子供が描いたような絵に見えるなど興味深い魅力も備えています。古代中国人は、絵文字を表意文字、そして形声文字などへと段階的に発展させることで複雑な文字の構造を構築することでより豊かな意思の疎通や情報の伝達を可能にしてきました。
こうした数多くの文字は一体、誰の手によって天地万物から作り出されたのでしょうか?
中国の伝説によると、四つ目を持った蒼頡(そうけつ)という人物が生まれながらに文字を書くことが出来たと言われています。四つ目があることから、見るもの全ての特徴をつかむことができ、鳥獣を詳しく観察しているうちに自然の風景を文字にしたそうです。蒼頡が文字を発明すると、天は喜んで粟を降らせ、文字によって迷信が打破されることを恐れた鬼は声を上げて泣いたそうです。この蒼頡が作り上げた文字こそ、漢字の原型と言われています。

 
千年の時を越えて誰もが使いやすい古代文字へと変貌を遂げる
漢字が生まれた当初は正方形というデザイン上の規則もなく多くの漢字は自然の姿や形をかたどったもので、こうした古代文字は、現代人には難しく、想像力を働かせなければ図形や符号の意図を理解することはできませんでした。
DynaFontシリーズを手掛けているデザイナーは、古代文字を現代のフォントとしてリリースする際、現代人の誰もが理解できてなおかつ古代文字らしさも損なわない馴染み深いフォントデザインをテーマに掲げました。
試行錯誤を繰り返す中、西周早期の「大盂鼎(だいうてい)」に刻まれていた三百余近い文字をベースに、正方形に近い形と素朴な印象のデザインにすることで、同様に古代文字をコンセプトにしているDynaFontシリーズ「金文体」とは一味違った書体として「甲金文体」を開発していきました。
古代文字と現代の文字構造を見てみると、二つの文字には識別性に明らかに差があることからデザインのバランスをどう取るか、台湾国立故宮博物院と中央研究院歴史語言研究所が収蔵している青銅器に見られる銘文や甲骨文の実物などを幅広く研究しました。研究の中で古代文字の骨格をベースに文字の雰囲気やイメージを記憶した状態に新たに解釈を加えつつ作り上げることで、「甲金文体」は現代人でも理解できる古代文字として、また象形文字を取り入れるなど漢字の起源を感じられる要素も含んだ最古にして最新のフォントとして、完成に至りました。
開発の最中に古代文字の中で甲金文体のイメージの1つである「甲骨文」が2017年ユネスコの世界記憶遺産(Memory of the World)に選ばれました。
「甲骨文」に注目が集まったこのニュースは「甲金文体」開発チームにとっても大変喜ばしく、博物館などでしか目にすることがないような古代文字が甲金文体を通じて現代で使われることで世の中に広まり人びとの記憶に残るようになって欲しいという気持ちを強く持つ事ができました。

 
千年の時を越えて誰もが使いやすい古代文字へと変貌を遂げる
*「大盂鼎(だいうてい)」の銘文
今から三千年前に書かれた「大盂鼎(だいうてい)」(周康王23年鋳造)の銘文は、文字とも図形とも言えないような何とも可愛らしい文字で鋳込まれています。
この三百文字近い文字には朝廷で起こった一大事が記されています。中には盂という名の貴族が周康王から褒賞を貰ったため大盂鼎を作って王を讃える文章が鼎に記されいます。これらの文字は大きさに多少のバラつきはあるものの、全体的に漢字の特徴と同じく正方形で、西周早期の代表的な金文とされています。一般的に中国殷周時代に青銅器に鋳込まれた文字は、貴族など政治権力を握っている者による政治的な活動や祭事といった内容が書かれており、まさに古代中国の「国の大事は祭祀と軍事にあり」という概念を垣間見ることができます。
書体デザインで古代文字の文化的背景を語る
古代文字は、現在のように紙の上に文字を書いていたのではありません。フォントデザイナーは当時の時代背景に関する詳細な調査を行い、文字が刻まれた道具や記された場所の影響を受けた文字を甲金文体の特徴として再現しています。

甲骨文と金文の特徴を融合させた甲金文体は、まさに古代文字の姿を追求しています。丸みを帯びた画線は、「大盂鼎(だいうてい)」などで見られるような殷周時代の青銅器に刻まれていた銘文が反映されており、型を用いて鋳込まれているため文字の太さが均一で丸みを帯びてといった特徴があり、「標準文字」として使われていました。また、動物の骨に手彫りされた甲骨文の特徴を表現するために、当時の手書き文字とされている起筆と収筆に先が尖ったようなシャープな画線をデザインの一部として取り入れられました。
その他、甲金文体には円形もしくは方形の塊のような形を取り入れられています。青銅器と甲骨文で見られるような象形の幾何学的な模様を文字の偏旁に取り入れることで、文字にグラフィカルな要素を強めています。絵文字のような文字で、象形の意味を伝える
古代文字は一見難解に見えますが、実際には私たちにとっても遠い存在ではありません。甲骨文や金文は面白味に富んでおり、その幾何学的な構造は、絵文字のようにも見えます。「鹿」、「象」、「虎」など動物を表す文字の多くは、私たちも良く知っている動物の姿をかたどったものです。食器や兵器などを表す文字に関しては、千年前に使われていたものに近い形になっています。

甲金文体は象形の面白さが表現されており、象形の要素が高いため、識別性に問題がある象形文字は異体字として残しました。また日本語のかなは甲金文体A、甲金文体Bとして2書体を用意し、甲金文体Aでは古代文字の字形に近く、いにしえの趣を感じることができます。甲金文体Bでは余計な装飾を省き、文字の可読性を高めたデザインとなっています。ユーザーは状況に合わせて文字を切り替えることができるので、あらゆるシーンにおいて活用することができます。甲金文体を使用することで、象形文字という文字文化とその魅力、そして象形化された文字での情報伝達を体験できるでしょう。
甲金文体「焔」「定」

甲金文体「鹿」「象」「虎」 甲金文体の象形化された異体字。


甲金文体「矛」「皿」 甲金文体の文字の多くは、象形に見られるような特徴を持ち合わせています。左の文字は兵器を表す「矛」、右の文字は日常生活で使用する「皿」を表しています。
甲金文体の象形化された文字 甲金文体の象形化された文字
 
甲金文体の特長
甲金文体は中国殷・周時代の古代文字を取り入れつつ、現代でも普及しやすいように文字の構造と線質を、現在、使用されている漢字に近づけています。全体の60%の漢字は見た目ですぐに識別出来るようなデザインで35%の漢字は偏旁の組み合わせによって漢字の意味を理解することができます。残りの5%は漢字の原初形態である象形のデザインをそのまま採用することで、絵文字の面白さを感じることができます。
漢字における識別度の比率
文字の構造-「象形」をベースに、古代文字に新たな印象を与える。 筆画、線質-甲骨文や金文のように動物の骨に刻み込まれた文字や青銅器の上に鋳込まれた文字のようなデザインを追求。 ▼甲金文体 書体見本(甲金文体A) 甲金文体 書体見本(甲金文体A)
甲金文体A 書体見本
甲金文体 書体見本(甲金文体A)
甲金文体B 書体見本
甲金文体 書体見本(甲金文体B)

おすすめの活用方法
甲金文体は千年前の古代文字の姿を再現しつつ、現代でもそのまま使えるようにデザインされた書体です。漢字のデザインを日本語のかな、欧文、数字、符号、記号などに応用することで、現代においても各種印刷物やデジタルデバイスに活用いただけるようなデザインで開発されています。 甲金文体の活用例

※甲金文体Aおよび甲金文体Bは、ダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録されています。
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