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2018年04月17日

DynaFont PICK UP書体-新篆体

千年前に各地でバラバラに存在していた書体は紆余曲折を経て、規則という枠組みの中で統一された。新篆体


千年前に各地で
バラバラに存在していた書体は
紆余曲折を経て、
規則という枠組みの中で
統一された。

小篆という書体は、戦国時代の古代文字を引き継ぎながら隷書や楷書の見本になるなど今日の漢字を作り出す重要な基礎となった書体です。フォントデザイナーはこの書体への理解を深めるため推敲を重ねた末、小篆の字形を現代の文字へと取り込むことで今日の私たちにとっても分かりやすい新たな篆書体「新篆体」を誕生させました。さぁ皆さんもご一緒にフォントストーリーを通して、篆書体の歴史の旅に出かけましょう!
 
古代文字と現代文字の境界線
新篆体はその細長く素朴な線で、文字の歴史において古代文字と現代文字の境界線を繋げる書体です。
千年前の中国はまだ文字に基準がなく、文字の統一がされていない時代でしたが、その時代から名山の石に文字を刻みこむことで段階的に文字に基準が確立されていき、秦の始皇帝により文字が統一され「小篆」が誕生しました。その小篆が普及する以前の甲骨文字、金文体(鐘鼎文)は、石鼓文(せっこぶん)に用いられた経緯から「大篆」と呼ばれていました。
「小篆」は戦国時代に発達し、隷書や楷書へと発展する際の基礎の書体です。滑らかな曲線は古代文字と現代文字の境界線に位置付けられるような字形であり、秦の公式文書でも使用される文字であることから「秦篆」とも呼ばれています。
その秦は北西辺境の地から起こりました。
素朴で堅実な風土は文字にも影響し、これまで使用されてきた大篆の装飾は取り除かれることになり、均衡の取れたシンプルな筆画と象形文字の要素が大幅に取り除かれた文字として、情報を正確に伝えることができるようになりました。また小篆は四角形であり、漢字はこの段階をきっかけに、つくりや筆画などが徐々に今日の文字へと近づいていきました。


小篆は帝国の堂々たる風格を誇示した書体である
漢字が進化する大きな転機となったきっかけとして、秦の丞相(秦の行政官の最高位)・李斯(紀元前284年~208年)が深く関わっていると言われています。
統一初期の秦は領土が広大で、使用されていた文字も春秋戦国時代の字形を踏襲していたことから字形にバラつきがあり、政治を行う上で様々な支障をきたしていました。そこで李斯は秦始皇帝に「統一文字」の制作を進言し、大篆をもとにした新たな文字整理が行われました。
李斯が作り上げた小篆は、一文字の大きさが均等かつ等間隔に配置されているので、荘重で謹厳な風格が秦の堂々たる姿と重なりあった書体です。
重臣であった李斯、趙高、胡毋敬は、それぞれ「蒼頡篇(そうけつへん)」、「爰歴篇(えんれきへん)」、「博学篇(はくがくへん)」という漢字学習書を作り、標準書体として確立しました。その後、秦の文書や公示に関しては全て小篆で公布されました。
こうして、小篆で書かれた勅命を度量衡器に刻み込むという皇帝の命により、民衆に広く知れ渡るような書体になりました。
また巡幸の際に名山の石に文字を刻みこんでいき、秦が政治、軍事能力に長けているということを民衆に知らしめると共に≪
山刻石≫、≪瑯台刻石(ろうやたいこくせき)≫、≪泰山刻石≫といった石碑などに全て始皇帝が東巡した際に李斯に書かせることで、文字を統一するといった役割も担っていました。

新篆体は、篆書の美しい装飾を際立たせた書体である
小篆は当時、秦が公的文書として提示する場合に使用されていた書風で、円弧をなす字画と均等な大きさにより、一種の貫禄や荘重といった風格を感じることができました。しかしながら、今日の小篆を見てみると、はるか昔の古風な趣が垣間見られ、左右対称の字形がとりわけ装飾の美しさが表現されています。
20年程前、繁体字中国語フォントの種類がまだあまり無かった頃、書道に精通したデザイナーは、フォントを通じて篆書の美しさを伝えていきたいという願いから、小篆の手本である「山刻石」をもとに現代人でも分かりやすい小篆をフォント化しようとプロジェクトをスタートさせました。
その際、「識別性」の問題をクリアするため、小篆の字形をそのまま使用せず、文字の大きさが均等であることや古風で素朴な趣を把握した上、象形文字のような特徴をそのまま残しつつ、経験を頼りに「新篆体」を作り出しました。

象形文字▲大篆と比較すると小篆は簡素化されており、象形文字の要素が大幅に削減されていることから四角形の文字の基礎が構築され始めた段階の書体といえます。
 

頌徳碑▲始皇帝は国内巡幸の際に功績を民衆に宣伝するために山に頌徳碑を建てた。

*「山刻石」とは?
篆書は等幅で丸みを帯びた起筆と収筆であるということ、構造が左右対称であり計算し尽されたようなバランスでデザインされた水平、垂直の筆画であることから、荘重な雰囲気が醸し出される書体ですが、こうした文字は日常生活の中で速記することが難しいために書きやすい書体として「隷書」が誕生しました。隷書は程
(ていばく)が作ったという説もありますが、秦末期に公的文書が行き交う中で業務効率を上げるためにより簡単に速記できるような書体として生まれたのが「隷書」とも言われています。こうして筆記体を通じて文字に抑揚が生まれたことで、後世の書芸術の道が切り開かれました。篆書が荘重で公的な雰囲気の文字だとすれば、隷書は下層の役人が使用するような動きのある民間の文字であると言えます。
新篆体の特長
新篆体は古い歴史を持つ小篆の書風から誕生しました。回転するような曲線の筆勢と細長い字形からは千年前の遥か遠い昔の漢字の姿を感じることができるでしょう。均等で丸みのある線質と篆書の特長である藏鋒という筆の穂先があらわれないようにする書法を取り入れ、高い重心と縦長で垂れ下がるようなデザインの収筆に、左右対称の構造により一味違った美しい装飾が際立った書体になっています。


新篆体の特長


▼新篆体 書体見本
新篆体 書体見本

おすすめの活用方法
見出しやタイトルに適しており、中華風を表現したい時や、メニュー、印鑑や雑誌書籍などで伝統的な古代文字の優美な趣を表現したい時にもおススメの書体です。

新篆体 活用法

※新篆体は、ダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録されています。DynaSmartシリーズの詳細はこちら

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