連載コラム
2017年12月28日

ぬらくら 第82回 「ことば遊び」

 "To be or not to be, that is the question."

シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の有名な一節です。
読む人によって解釈が分かれると言われていますが『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。』と言う訳が一般的なようです。

ぬらくら子がこのハムレットの台詞をもじった次の一節を覚えたのは中学生の頃でした。

 "To be, to be, ten made to be."

これ、どんな意味でしょう?
分かった方には、次の一句をプレゼントします。
さて、今度は何と言っているのでしょう?

 "Oh my..., much much care no salt."

こうしたことば遊びには、子供の頃に親しんだ「しりとり」、「へへののもへじ」や「つるニハののムし」のような絵かき歌などがあります。

ことば遊びには他にも色々とありますが、古くからあることば遊びをいくつかご紹介します。

1.回文(かいぶん)
頭から読んでも後ろから読んでも同じ言葉になる短文です。
「田植え歌(たうえうた)」や「竹藪焼けた(たけやぶやけた)」など簡単な回文は、皆さんも子供の頃に一度は口にして遊んだのではないでしょうか。

正月二日あるいは三日の夜、宝船の絵を枕の下に置き、次の歌を三度唱えてから寝ると吉夢を見ることができるという、詠み人知らずの有名な回文歌があります
(資料によっては藤原俊成(1114 - 1204)の作と書いたものもあります)。

 長き夜の 遠の眠ふりの皆目醒めさめ 波乗り船の 音の良きかな
(なかきよの とおのねふりのみなめさめ なみのりふねの おとのよきかな)

回文歌は他にも沢山残されているようです。
以下の二首は藤原基俊(1060 - 1142)が著した『悦目抄』に収められている小輪尼の回文歌です。

 村草に くさの名はもし具はらは なそしも花の 咲くに咲くらむ
(むらくさに くさのなはもしそなはらは なそしもはなの さくにさくらむ)

 惜しめとも ついにいつもと行く春は 悔ゆともついに いつもとめしを
(をしめとも ついにいつもとゆくはるは くゆともついに いつもとめしを)

回文を読むのは面白いけど作るのは難しそうです。

2.字謎(じなぞ)
短文から漢字を当てる謎々です。
徒然草 第六十二段に字謎が出てくるので謎解きの例題にします。

 ふたつ文字 牛の角文字 直ぐな文字 歪み文字とぞ 君は覚ゆる

「ふたつ文字」は「こ」、「牛の角文字」は「い」、「直ぐな文字」は「し」、
「歪み文字」は「く」で、ここまでで「こいしく」、「とぞ君は覚ゆる」をつなげて解は、

 恋しくとぞ君は覚ゆる

となります。以下は字謎の問題です。

 1)口をつけて知る
 2)怠け心が無い
 3)分かれると一人
 4)日があると明るい
 5)棒の右をとって戒める

3.造り字
漢字二文字を組み合わせて別の漢字一文字に見立てます。
次の造り字はなんと読むでしょう。

 1)豆人
 2)女竹
 3)石生
 4)花老

4.謎たて
短文から文字を足したり引いたり、あるいは文字の順番を入れ替えたりして、
その短文の意味を説く遊びです。回文と同じように古くからあることば遊びです。

未だに正解が見つからないという徒然草 第百三十五段には有名な謎たてがあります。
藤原資季大納言(ふじわらのすけすえ)が、源具氏中将(みなもとのともうじ)に向かって、
『お前が質問してくる程度のことだったら、何だって答えてやろう』というのに対して
具氏中将が出した問題がこれ。

 むまのきつりやう きつにのをか なかくぼれいり くれんどう

漢字交じりに直して

 馬退きつ了 きつにのをか 中窪れ入り くれんどう

これを国文学者・鈴木棠三(1911 - 1992)は「馬退きつ了」は馬が退く、
「きつにのをか(『きつに』は『狐』のこと)」の真ん中の「にの」が窪んで(無視して)
「きつおか」、それが「くれんどう(転倒の意)」で、解は「かおつき」と解いています。
他に歌人や国語学者などが解いた「かり」「かき」「かれき」など、「かおつき」とは
異なる解があるそうです。

では、簡単な謎たてを二題、解を見つけてください。

 1)いかを真っ二つに切って漆を注ぎ、イルカを逃がす。
 2)返して悔し 桃の木の数珠

最後に「折り句」というのを紹介しましょう。アクロスティック(Acrostic)と言った方が
分かる人が多いかも知れません。
折り句の説明をするよりも、詩人・谷川俊太郎のポストカードから、その一例を紹介します。

 あくびがでるわ
 いやけがさすわ
 しにたいくらい
 てんでたいくつ
 まぬけなあなた
 すべってころべ

各行の始めの一文字を縦に読むと「あいしてます」となります。
これが折り句です。

冒頭に書いたアルファベットで書いた謎々を知ったと同じ頃に、いろは歌には
別のメッセージが隠されていると、自慢したのを思い出しました。
いろは歌を七文字で折り返します。

 いろはにほへと
 ちりぬるをわか
 よたれそつねな
 らむうゐのおく
 やまけふこえて
 あさきゆめみし
   ゑいもせす

各行の最後の一文字を拾う折り句もあります。
上のいろは歌の各行の最後の文字を縦に読むと「とかなくてしす」となります。
これを漢字交じりに直して「咎無くて死す」、誰のことを指しているのでしょう。

新聞に掲載されるテレビ番組の野球やサッカーの中継番組紹介文に、折り句が仕組まれていると
インターネット上で話題になることがあるので、折り句をご存知の方は多いでしょう。

以下は上に挙げてきた謎の謎解きとその答えです。

2.字謎
 1)矢(「矢」に「口」を付けると「知」)
 2)台(「怠」から「心」を無くすと「台」)
 3)大(「大」を「一」と「人」に分けて「一人」)
 4)月(「月」の側に「日」があると「明」)
 5)械(「棒」の右側(旁)を「戒」にすると「械」)

3.造り字
 1)「豆」のような「人」で「一寸法師」
 2)「竹」から「生」まれた「かぐや姫」
 3)「石」から「生」まれた「孫悟空」
 4)「花」を咲かせた「老」人は「花咲かじじい」

4.謎たて
 1)うし
 「いか」を二つに切ると「い」と「か」、
 その間に「うるし」を入れると「いうるしか」、
 「いうるしか」から「いるか」を外すと「うし」。
 2)尺八
 「返してくやし」は「くやし」を「返す(逆にする)」、「しやく」です。
 「桃の木」は「百退き」、
 「数珠」の珠は百八個ある、
 「百八」から「百」を除(退)くと「八」
 「しゃく」と「八」で「しゃくはち」

最後は冒頭のアルファベットの謎の答えです。

 "To be, to be, ten made to be."

答えは「飛べ飛べ天まで飛べ」。
これは英語ではなく、日本語をローマ字で綴っただけの謎です。
始めにハムレットの台詞を英語で示すことで、この謎謎が英語だと思い込ませるところがミソです。

 "Oh my..., much much care no salt."

こちらはローマ字ではありませんが、意味のある英語でもありません。
「オーマイマチマチケァノーソート」と読めます。

この読みの音を日本語の音に当てて漢字仮名交じりに書き直すと

 お前待ち待ち蚊帳の外

……と、なんとも乙な一句が浮かんできました。
ぬらくら子が中学生の頃、子供にこんなことを教える粋な人がいたんですネ~。

【参考資料】
「事典日本の文字」樺島忠夫・続木敏郎・関口泰次:編 大修館書店 1985年刊

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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