あなたが思う「良い映画」とはどういった定義でしょうか。深みのある俳優の演技、映画にぴったりの挿入曲、男女の主人公が繰り広げるキスシーン、それとも特徴的なスタイルの字幕・・・。映画の良し悪しとは相対的なモノでしかなく、絶対的ではありません。しかしそこに優れた字幕があれば、登場人物の境遇に深く感情移入でき、喜び、切なさから遺憾や悲観などの感情や葛藤までつかみ取ることができます。こういった点も映画字幕の利点といえます。
ダイナフォントストーリーは、フォントファンに向けてフォントの様々な側面を知ってもらうことを目的として展開しています。今回は手書き文字であると共に字幕文字でもあるシネマ凜について掘り下げていきましょう。
こちらはシネマ凜の制作が決定した後、作者が書いた手書き原稿の写真です。上部に×印が付いていますが、これは作者自身がNGを出した文字で、こういった点からも作者の自身に対する厳しい姿勢が垣間見えます。
映画を見る時に、大スクリーンの下にある字幕を気にしたことはありますか? 字幕はストーリーに入りやすく、映画の内容をより効率的に理解しやすくする効果があります。またそれだけではなく芸術的な価値も持ち合わせています。字幕は映画製作における一部分ではありますが、様々なスタイルの字幕があり、画面のコントラストや音響効果、雰囲気などで使い分けられています。テイストに沿った字幕が使用されている映画ほどストーリーに入り込みやすく、逆に映画とマッチしていない字幕では心が揺さぶられることは少ないでしょう。そのため質の高い映画では字幕のスタイルを把握して使用しており、その字幕を作る映画タイトルライターもまた欠かせない存在だといえます。
2013年フォントデザインコンテスト入賞作品
シネマ凜は、元映画タイトルライターが書いた手書き文字であり、2013年フォントデザインコンテストの入賞作品です。作者は以前映画字幕制作会社に在籍していたことから、字幕の特徴を完璧に捉えており、躍動感と感情表現豊かなフォントを作成しました。独自のスタイルを残しつつ、同じ文字の繰り返しでも、シーンや感情に寄り添うような字幕文字というコンセプトのもとでデザインしています。
「凜」という一文字に込めた想い
書体名を決める際、作者から本名の一部もしくは三味線を演奏する際の芸名である「都一凜」(みやこ いちりん)から一文字取りたいという思いを伺いました。この芸名には「何があっても揺らがない、唯一無二の存在を目指して芸道に精進する」という思いが込められて命名されており、今回の書体もこの精神のもとにデザインされていることから、「凜」という文字が書体名として採用されました。
シネマ凜は漢字だけではなく、仮名やアルファベットにも字幕文字をベースに作者がアレンジを加えています。
▼シネマ凜 書体見本
おすすめの活用方法
シネマ凜は手書き文字の個性が存分に引き出されており、温かみを感じることができる書体です。コラムのタイトルや手帳、短歌、散文、絵本、 カード、しおり及びセリフなど細かい部分に使用することで、柔らかい雰囲気をもたらしてくれます。
Q.文字組みの際、シネマ凜と合う書体はどれだと思いますか?
ユーザーA:「毛筆系書体だと思います。筆順からは起承転結が感じられ、手書き文字の雰囲気を存分に感じることができるからです。」
Q.作者に伝えたいことはありますか?
ユーザーA:「このフォントの存在を知らなかったのですが、シネマ凜がこんなにも幅広い用途があると知ってからは、とても驚きました!」
ユーザーB:「同じ文字を書き続けることができるなんて、本当に尊敬します。今回このような味のある手書き文字と出会えてとても嬉しかったです。有難うございます。」
※映画字幕の豆知識:
1.字幕では一般的に1秒間に読める文字数が4文字とされ、1行では13文字、1画面で2行が原則です。
2.1つの映画で、約1,500個の画面分の字幕が必要となります。
3.映画字幕は句読点がないので、半角スペースは読点、全角は句点の代わりとしています。
4.映画字幕は隣り合わせになる文字に合わせて、文字間のバランスを調整しています。 More Information