ダイナフォントストーリー
2015年09月02日

絶対フォント感を身につける。

とりぱん/趣味じゃないのデザインを手掛けた葛西 恵さんのフォントの使い方

Q8. 筆で書いたような形が印象的なこのフォント、なに?
Q9. 丸みを帯びた漢字がかわいいこのフォント、なに?

雑誌『S p o o n . 』のアートディレクターを経て、現在は漫画や書籍のデザインを中心に活躍するグラフィックデザイナーの葛西 恵さん。作品の世界観をしっかりと表現しつつも、枠にとらわれない自由な書体選びが印象的だ。ここではそんな葛西さんの漫画の仕事を例に、フォント選びや使い方について話を伺った。

● Q『とりぱん』のタイトルロゴは流れるような筆使いが印象的な書体です。
葛西 これはDF華康楷書体Bを使っていますね。デザイン上のバランスを取るために、ディテールを修正することも多いのですが、この時は加工していません。既存のフォントをそのまま使うのは、珍しいケースかもしれませんね。

●イラストの描線と響きあっていて、とても柔らかな印象を受けます。
葛西 作者のとりのなん子さんの細密画を拝見した時、どこか色紙のような印象を受けたんです。この書体を使ったのも、色紙に筆でさらっと書いたような味わいが欲しかったからです。

●使う書体はすぐに決まるのでしょうか。
葛西 いえいえ(笑)。マンガのタイトルを組むときは、毎回100書体くらいを比較、検討しています。明朝にするかゴシックにするかという感じで、大まかな方向性を決めたうえで、まずはモニター上で組んでみる。そこから100書体くらいに絞って、紙に出力しています。

●じゃあ『とりぱん』の場合も……?
葛西 はい。いったん「とりぱん」という文字の並びをいろいろな書体で組んでから、内容にそぐわないものをどんどんふるい落としていきました。

フォントをアレンジして表現を高める

●打って変わって、Q9『趣味じゃない園芸』はポップな印象です。このフォントはどのように選んだのでしょうか?
葛西 もともと、カバーは動きのあるイラストでいきたかったので、タイトルはスペースのバランスを考えて正円の中に入れようと思っていました。ロゴとしての一体感を持たせるために、この正円と同じ太さの書体を探していてDF POPミックスにたどり着きました。他のゴシック体だとどうしても同じ太さにはならなくて。「味」という漢字のくちへんの形もかわいかったのでこれに決めましたね。

●ハンコのような処理も印象的です。
葛西 印鑑を作る時、漢字の両端のハネが上を向いて円の縁に接していると縁起がいいと聞いたことがあったので、このロゴでも「趣味」という字の両端を上げて縁にくっつける処理をしています。

●これらのダイナコムウェアの書体に触れたのはいつ頃でしょうか。
葛西 デザイナーとして独立した当初から使っています。書体数が多いのにリーズナブルな価格帯が魅力的で。手描きっぽさが残るフォントが多くて、堅苦しくないのがいいですね。

●既存のフォントのアレンジではなく、オリジナルで作り起こすこともありますか。

葛西 連載時のロゴは一から作ることが多いですね。雑誌の場合、ロゴだけを独立して使うことも多く、その分、キャッチーなものが求められます。単行本のみの依頼の場合は、装画との相性を考えながら既存の書体で構成することもあります。どの書体も専門家がきちんと設計したものですから、やはり収まりがいいなあと思います。

DynaSmart
「とりぱん 17巻/とりのなん子」
コミック/D:葛西 恵/2014/講談社


DynaSmart
「趣味じゃない園芸/駒倉葛尾」
コミック/D:葛西 恵/2013/芳文社
葛西 恵[かさい・けい]
漫画や書籍の装丁から、ページデザインも含むブックデ ザイン、グッズまで幅広いデザインを手掛ける。
主な仕事に『チーズスイートホーム』(講談社)、『すみれファンファー レ』(小学館)などがある。

Q8.のこたえ:DF華康楷書体B/Q9.のこたえ:DF POPミックス W5(漢字のみ。一部エレメントを加工)

月刊「MdN」2015年6月号より転載

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