【はじめに】
古籍黒檀は清朝末年の著名な文学家「范当世」(1854~1904)によって創作された詩文集「范伯子集」の書帖をもとに開発された書体です。扁平な字形と重厚なストロークが特徴で、転折が力強く、彫刻の質感のような雰囲気に溢れています。視覚的に黒く艶がある感じが原始の熱帯森林に生きている黒檀の木のようで、静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。
【デザインの発想】
晩酌は父の至福の時間。
一日が終わり、夜が更けて家族全員が深い眠りにつく頃、父親は小さな明かりを灯し、お酒を一杯注いで、読書や音楽を楽しむ。ほんのひと時だけ父親としての自分から解放され、あの頃の自分に戻っていく。どれほど日中が騒がしかったとしても、このひと時だけは晩酌をしながら、一人の時間を楽しんでいる。
【撮影】
撮影担当者は古籍黒檀に対して、優雅で個性的な紳士のようなイメージを持ちました。
ひっそりと静まった夜に、一人だけで過ごすほろ酔いの時間。
焦点をグラスに合わせるために画面のコントラストを落ち着きのある暗色にし、酔いを誘う黄金色の淡い光を用いて、自然とグラスに目がいくようにしました。また、ルビーレッドのグレープフルーツと翡翠色のローズマリー、荒削りのシーソルトを配置することにより、静かな画面に明るさを与え、全体を引き立たせています。
レイアウトを通じて読み取れるストーリー性から、黒檀の控え目で優雅な質感を感じとる事ができ、画面から溢れ出て来る物憂げなムードに浸ることができます。
【制作秘話】
黒檀は探すことが大変難しいため、撮影スタッフは深い色の塗料を用いて木片を塗り替える事で、黒檀のような味わいのある風合いに仕上げました。主役となるお酒に関しては、色合いが似ているレモンティーを代用し、溶けない偽の氷を入れてウィスキーに見立てました。
全ての撮影用の小道具が揃った段階で、画面に命を吹き込むという大切な作業に入ります。夜更けに晩酌をしているようなロマンチックな情景を表現しながら、古籍黒檀の静かで落ち着いた雰囲気を融合させていくか、撮影担当者はライトの上下に工夫を凝らして光の強弱や方向などの微調整を行いながら、画面に命を吹き込んでいきました。その過程で、美術スタッフからライトがグラスに当たった時にグラスの中の液体と机の色が同じような色になって見えにくいかもしれないとの懸念の声が上がり、試行錯誤した結果、丸型に切り取ったコースターをグラスの下に敷き、グラスが際立つ仕上がりへとなりました。
また、今回は真上からの視点で撮影を行ったため、全体的な一体感だけではなく、ローズマリーの置き方や角度等、非常に細やかな箇所にも細心の注意を払い、何度も確認と撮影を繰り返しながら、納得がいくまでクオリティを高めて完成に至りました。
こうして、光、小道具、配置などによるほんの少しのストーリー性を持たせることで、一人で晩酌をしている際の優雅な雰囲気を醸し出すことができました。
撮影において、思い通りの情景を再現することの難しさ、そして奥深さを改めて感じることができました。
カテゴリー:古籍書体
書体の太さ:W7
中国の古籍「范伯子集」の書帖をもとに開発された書体です。「范伯子集」の文字は、扁平な字形と重厚なストロークが特徴で転折が力強く彫刻の質感のような雰囲気が溢れています。また黒く艶がある感じが原始の熱帯森林に生きている黒檀の木のようで静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。表紙タイトルや横書きにもオススメの書体です。
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