
【はじめに】
古籍銀杏は、明朝の学者であった宋應星(1587~1663)によって書かれた古籍「天工開物」をモチーフとして開発された書体です。文字の重心が高く穏やかで、文字を読む際にイチョウ並木にいるような視覚的な美しさが感じられます。また、半円形となったストロークが繊細で、銀杏の葉っぱのような優雅さがあります。実用的で味わい深く、あか抜けたような書体です。
【デザインの発想】
あなたの心を表現する言葉となる。
恋をしている瞬間は、とても心地良い時間に思えますが、長い時間を経た2人にも格別の味わいが生まれます。
女性にとって、長い月日を一緒に重ね、互いに助け合い、支えあう場面こそが、最もロマンチックなシーンです。互いに年を重ねていく事で、互いが唯一の拠り所になり、いつ何時も支え合う。これは中国のことわざにある「子の手を執りて、子と偕に老いん(手を繋ぎ、共に老いる)」に当てはまります。
そんな夫婦になる事に想いを馳せる事ができる、幸せな結婚式に立ち会うことは友として生涯、忘れ難い一日になるでしょう。
【撮影】
花嫁となる女性の想いが詰まったストーリーを引き出すため、画面は柔らかい暖かみのある色を基調としました。小道具の色合いと配置、照明を柔らかく繊細で、上品な雰囲気で仕上げています。純白な便箋を画面の中心とし、全体を適度に配置したことによって、色合いから比率まで整っていて、統一感のあるイメージを持たせています。また、画面が物静かになりすぎないように、上部に花束をレイアウトすることで全体の雰囲気にロマンチックな印象を加えました。
これらの演出により、花嫁となる女性が机の前で便箋を開き、友人に結婚の報告をしたためているようです。結婚の報告を手書きの手紙でしたためることで、より一層の真心や温かさを友人に伝えることができるでしょう。
【制作秘話】
嫁ぐ前の花嫁はどのような心境かを、製作スタッフは花嫁の視点から考え、少女の机をイメージしました。バラの花束は、花嫁の心躍る気持ちとロマンチックな心を表現しています。また、便箋やそのそばに置かれた万年筆は、結婚の報告をしたためようとするシーンを表現しました。製作スタッフが選定した文房具はどれも美しくかつ可愛すぎないようなテイストであり、落ち着きとロマンチックな趣があります。
照明、花束、純白な便箋、それに合わせる文房具全てが揃ったにもかかわらず、画面にはどこか物足りなさがありました。その時、スタッフの一人が何かに気付いたように、自分の指輪を外して机の上に置き、「多分これが足りないのではないですか?」と欠けていた最後の1ピースを見つけ出してくれました。
シンプルな小さな指輪が、画面を引き立たせ、ポイントになりつつも決して目立ちすぎないという大事な役割を果たすことができました。スタッフ全員が納得する形で、この小さな指輪こそ画面を完成させる1ピースであるという認識となり、作品が完成となりましたが、まだ何かが足りないという感覚もありました。そこでもう1つ指輪を取り出して、少し大きめの指輪と小さな指輪を重ね合わせる事で、画面上で夫婦としての形を表現することができ、調和した完璧な仕上がりになりました。
こうして今回の撮影を円満に終えることができました。

カテゴリー:古籍書体
書体の太さ:W3
中国の古籍「天工開物」をモチーフとして開発された書体です。「天工開物」の文字は、半円形となったストロークが繊細で、銀杏の葉っぱのような優雅さがあります。文字の重心が高く穏やかで、文字を読む際にイチョウ並木にいるような視覚的な美しさが感じられます。古籍ならではの情緒を活かしたキャッチコピーにオススメの書体です。

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