連載コラム
2017年01月20日

ぬらくら 第68回 ギター

ボブ・ディランが2016年のノーベル文学賞を受賞したのに刺激を受けて……

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いかにも侘しいシャッター街を抜けて質屋の前を通りかると、何か気になるものが目の端に留まりました。立ち止まって中を覗いてみると、それは壁に無造作に掛けられたいかにもくたびれ果てたオンボロギターでした。

『あのオンボロギターは売り物ですか?』と出てきた、これも年老いた店主に声をかけると、老人は口元に笑みを浮かべながらそのオンボロギターを外して私の方に寄こし、呟くように『お前さんは見るからにこのギターにピッタリだネ。』
ギターを受取って鳴らしてみると、気のせいかギターの周りに何かヒンヤリとした妖気のようなものが纏わりついているのです。

昔、田舎でやっていたような雑なやり方でコードを二つ三つ鳴らしてみると、何処で覚えたのか自分でも分からないくらい指が早く動いてさながら稲妻のようでした。その時の私は立ち上がってまるで火がついたようでした。本当ですよ。

時間が経つのも分からず、ネックを上下にゆすって演奏を続けフレットをミスすることもなく、演奏できない曲などありませんでした。
その内にギターが勝手に鳴り始めて私のすることはなくなり、とうとう誰が演奏しているのか分からなくなってしまいました。

ようやくギターを置いた時は息も絶え絶え、両腕は震え生臭い死の匂いに包まれてしまった気分です。老人が立ち上がって『どこか地獄にでも行ってきたのかい? 私はこの数年ずっとお前さんが来るのを待っていたんダ。』と言います。

老人は古ぼけて薄汚くなったケースを取り上げ『これに入れて持ってお行き。金は要らなから、これで上手くおやり。』と言います。老店主の顔つきはどこか暗く、声も何やら不気味です。
店主が蓋をバタンと閉めると、なんとケースの上に私の名前があるではありませんか。


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ボブ・ディランの曲ではありませんが、私の好きな Guy Clark "Somedays the Song Writes You"に収録されている"The Guitar"を少し脚色して紹介しました。オリジナルの歌詞はガイ・クラーク(Guy Clark)とヴァ―ロン・トンプソン(Verlon Thompson)の手によります。

以下のサイトで元の歌詞(英文)を見ることができます。
https://www.metrolyrics.com/the-guitar-lyrics-guy-clark.html
https://mojim.com/jpy155246x2x2.htm
https://www.songlyrics.com/guy-clark/the-guitar-lyrics/


2016年10月に配信したメールマガジンからの記事を掲載しています。

タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
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  著者 Information

ダイナコムウェア コンサルタント
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

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