ダイナフォントストーリー

カテゴリー:ダイナフォントストーリー
2016/10/26

大河体誕生秘話 「大きく、そして繊細に、河のように流れていく筆遣いの妙。」

毛筆系新書体タイプフェイスデザイン 河本聡子氏インタビュー

大河体
「ダイナコムウェア フォントデザインコンテスト2013 毛筆部門」入賞作品の1つであり、ダイナフォント2016年新書体「大河体(たいがたい)」。
2016年10月28日にリリースした「DynaSmartシリーズアップグレード 2016」により「DynaSmartシリーズ」に初収録となる毛筆系書体「大河体」をデザインされた書道家の河本聡子氏に、デザインコンセプトや制作プロセス、また文字を書く事への想いなどについて伺いました。
「大河体」書体見本および活用例
書体名「大河体」命名理由:書体を一目見て、力強い筆遣いと同時に女性が書いた文字ならではの穏やかさも感じました。そこで思い浮かんだのが幅が広く水量が豊かな、大きな河でした。もちろん書体発案者の河本聡子氏の苗字「河」の一文字という事も命名理由です。将来的に「大河体」が大河ドラマなど壮大な時代劇や歴史ドラマなどのタイトルやテロップに使用されることに願いを込めて命名させていただきました。

Q.はじめに、現在なされている創作活動内容などをお聞かせいただけますか?
毎日書道展(会友)等の書道展に作品を出品しています。現在は主に中国の古典の臨書や篆書、隷書を書いています。

Q.普段から文字を書く事に対してこだわっていることがあれば教えていただけますか?
年賀状は住所・氏名も含めて、全て毛筆で手書きしています。こだわっているというよりは、レイアウトやデザインを考えながら自分自身が楽しんで書いています。特に年賀状に関しましては、干支が年ごとに変わるので、どのようにその年の干支文字をデザインするか考えるのが恒例になっています。

Q.今回はダイナコムウェア側で書体名を決めさせていただきました。「大河体」という書体名に関しての感想をいただけますか?
とても素敵なネーミングだと思いました。自分では思いつかなかったと思います。名付けていただいて本当に良かったです、ありがとうございました。大河のように幅広く長くこの文字が使われるようになること を願います。

Q.それでは今回の書体のデザインコンセプトをお聞かせいただけますか?
筆文字ならではの勢いと力強さを表現した書体になっています。また起筆では、強く力を入れて押さえた後、筆先を残して軽く抜くやり方で力強さの中にも計算された繊細さも添えています。

Q.作品を書かれた際の筆の種類を教えていただけますか?
硬めの筆による書体を作りたいと思っており、鼬(いたち)の毛の筆を使用しました。鼬毛の筆は、毛が硬いため使い続けると1年程ですり減ってしまいますが、1年毎に買い換えして、15年以上、同じ銘柄の筆を使い続けています。

Q.その筆で作品を書いてみようと思った理由をお聞かせいただけますか?
鼬毛の筆は、私が楷書や行書、隷書を書く際に愛用してきた筆です。硬めの筆は、勢いのある強い線を表現するのに適している為、今回の書体デザインにおいても、この筆で書いてみたら面白いかもと感じて使用しました。

Q.書体をデザインしていく過程で、ご苦労なさった点などがありましたらお聞かせいただけますか?
画数の多い漢字やアルファベット、記号といった部分は、筆書きによる書体のデザイン性を保つ事に難航しました。その分、フォントとして使用された方がどう評価頂けるか楽しみでもあります。

Q.デジタルフォント化に際して、ダイナコムウェアのフォント開発に参加された感想をお聞かせいただけますか?
フォント開発に参加するのは、生まれて初めての経験でしたので大変興味深く、また勉強になりました。書体の文字を書いていく作業も、一文字一文字毎に大きなやりがいを感じる事ができました。

Q.作品を実際、デジタルフォントとして使用してみた感想をお聞かせいただけますか?
自分が書いた書体の一文字一文字が、手書きした通りにデジタルフォントになっている事が感慨深く、こうしてデジタルフォントとして使用してみて、その嬉しさがこみ上げてきます。

Q.今後、多くのデザイナーが河本様の「大河体」作品を使用する事についての感想をお聞かせいただけますか?
作品がデジタルフォントとして様々な視点を持った方や場面で使用していただける機会が生まれました。たくさんの方々に「大河体」を使用していただけるとありがたいです。

Q.今後、書いてみたい書風(デザイン)など、次作のアイデアなどはございますか?
柔らかい風を感じるような書風の作品を書いてみたいと思います。

Q.最後になりますが、河本様がお勧めする書体の活用法、またこう使用して欲しいといった願望などがありましたらお聞かせいただけますか?
私自身が思い描けないような、そんな素晴らしい書体の活用法に、これから先、たくさん巡り会っていける事を今から楽しみにしております。「大河体」をよろしくお願いします。

 
「大河体」コンテスト出品時とデジタルフォント化
上段はコンテスト出品時に河本氏が書いた文字の一部。下段は実際にデジタルフォントとしてリリースされた「大河体」。作品は、河本氏の手書きでしか表現できない線を出したいという思いから生まれている。


「大河体」デザイン使用筆
「大河体」をデザインした際に使用した鼬毛の筆。鼬毛は毛に弾力があり、毛先がよくまとまり、墨含みも申し分ないといった特徴がある。


「大河体」書体の特徴
グリフからも毛筆、墨ならではの特徴が随所にあふれており、力の強弱などに重きを置いた筆遣いが文字に存在感を生み出している。

河本聡子氏
PROFILE●書道歴およそ20年。きちんと『読める正しい文字』で有ることを基本に、その中でいかに芸術性の高い文字を書いていく事を目標に書の道を日々、追求。
 
大河体 StdN W12 OpenTypeは、2016年10月28日リリースした「DynaSmartシリーズ アップグレード2016」により「DynaSmartシリーズ」に初収録されます。

大河体「河」
大河体
カテゴリー:毛筆系書体
書体の太さ:W12
筆文字ならではの勢いや力強さを表現した毛筆系書体です。筆は鼬(いたち)の毛の筆を使用しており、その特徴である優れた弾力性が、起筆や払いの勢いに見事に反映されると共に、流れるような筆運びにも色濃くあふれています
大河体 書体見本

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