ダイナフォントストーリー
2016年03月22日

カバーデザインを彩る“いま”のフォントの使い方

アフターグロウに聞く

アフターグロウに聞くカバーデザインを彩る“いま”のフォントの使い方
マンガの装丁をはじめ、最近は個性的なデザイン書体を使った制作物を目にする機会が増えている。
ただし、こうした書体は使いどころを間違えばデザインの調和を乱すだけの結果になりかねない。
プロのデザイナーはどのようにそれらのフォントの魅力を引き出しているのか。
数多くのマンガのカバーデザインを手がけるアフターグロウの寺田鷹樹さんに、書体の選び方や使い方を伺った。

 

Interview 寺田鷹樹[アフターグロウ]
正統派少女マンガからスタイリッシュな青年マンガ、サブカル系まで幅広いジャンルを手がける寺田さんの場合、タイトルに使うフォントの方向性は表紙カバーのイラストを見た瞬間に決めてしまうことが多いそうだ。
「方向性を決めたら、全体のデザインをイメージしつつ、使う書体の候補をいくつか絞り込みます。そして“この書体とこの書体を組み合わせてみよう”とか、“この部分は作字しよう”など細かい部分を詰めていきます」
もっとも一口に書体を決めると言っても、さまざまなベンダーから多彩なフォントがリリースされており、その数は膨大なものとなる。そのため、寺田さんは各社の書体見本を参考にしたり、所有しているフォントをパソコン上で試してみたりしながら、イラストに合う書体を吟味していく。また、書店の売り場に並んでいるマンガや書籍のチェックもかかさない。

マンガタイトルデザインのトレンド

寺田さんの印象では「ここ最近、トリッキーな書体やクセのあるデザイン書体を使った作品を見かけることが増えている」とのこと。
「とくに少女マンガはその傾向が強い気がしますね。私自身も、作品によっては特徴のあるデザイン書体を意識して使うことがあります」
そういったオーソドックスではない“ニューウェーヴ”な書体を選ぶ際に寺田さんが大切にしているのが「文字の形のきれいさ」だという。
「マンガのタイトルの場合、縦組みや横組みだけでなく、あえて斜めに配置したり文字をばらつかせたりすることもあります。そのため、文字を並べたときの美しさはもちろんですが、一文字だけ見てもバランスよく“きれい”であることが重要。その方が意図的に崩してレイアウトする場合でもデザインが破綻しづらいんです」
もうひとつ寺田さんが重視しているのが「書体のメリハリ」。見た目に特徴のある書体ばかりを使うと、お互いの個性を殺して全体の印象が散漫になってしまうからだ。
「それを避けるため、特徴のある書体を使うところはなるべくタイトルのみに絞り、著者名などのほかの要素はそれを邪魔しないオーソドックスな書体を使うように心がけていますね」

ダイナフォントの魅力

装丁のイラストによっては、既成フォントをそのまま使うといまいちしっくりなじまないこともあるため、書体の一部を加工したり作字したりするそうだ。
「ただ、文字によっては加工前の方が結局きれいだったりするので、極力元の書体を生かす方向で考えることが多いですね。例えば文字ごとに大きさを変えて変化をつけたり、文字の配置に動きをつけたり、文字の色を工夫したり」
その例として、寺田さんは自身が担当した『人魚の王子さま ~マーメイド・プリンス~ 1巻/和深ゆあな』(徳間書店)を挙げた。
「このときはかっちりポージングされた止め絵のイラストだったので、あえて文字は斜めに傾け動きを出しています。また、淡い色調のふわっと
したタッチのイラストを生かすため、タイトル文字や巻数のマークをブラックにして全体を引き締めました」
ちなみに、同書のタイトルはダイナコムウェアの「優雅宋」を使用しているが、部分的に加工も施しているという。
「“魚”の文字のエレメントを尾びれに見立てたり、文字に切れ目を入れることでウロコ感を出したりして、イラストのおしゃれポップなテイストを強調しています。ダイナフォントは一文字で見た場合でも形のバランスが良いですし、ちょっと手を加えるだけでこのようにイラストの雰囲気をより引き出してくれるのが魅力ですね。このときも、“このイラストにはこの書体しかない”と思って購入したんですよ」
最近はマンガが映像化されるケースも増え、それにともなってタイトルロゴの二次使用のしやすさを気にする機会も多くなっているという。
「最初からフォント製品の使用許諾範囲に印刷物だけでなく映像やゲームも入っている方がありがたいですね」
最近は『DynaSmart V』のように収録フォントが使い放題の上、映像作品やゲームなどにも商用利用ができる年間ライセンス製品が登場してフォントの選択肢や使いやすさが広がっている。使い勝手やコスト面においても、こうした製品やサービスはふだんのデザインワークに取り入れやすいだろう。

Profile
寺田鷹樹 [てらだ・たかき]
1983年8月4日生まれ。千葉県出身。2009年、有限会社アフターグロウに入社。ゴリゴリの男性系からキラキラ女性系まで幅広いデザインを手がけている。最近のマイブームはモンハン。
url. www.afterglow-inc.jp

人魚の王子さま
「人魚の王子さま ~マーメイド・プリンス~
1巻/和深ゆあな」2014/徳間書店
人魚の王子さま
美しい人魚に恋をした主人公の男性と、人間の男性に生まれ変わった人魚の純愛を描いたBL風ラブ・コメディ漫画のカバーデザイン。イラストがかっちりとした止め絵の構図だったため、文字要素を斜めに傾けて配置するなどして遊びを加え、動きのあるレイアウトに

人魚の王子さまタイトル「優雅宋」

エレガントでファンシーな書体の魅力をそのまま生かす
タイトル文字はエメントの先端に明朝体のウロコのようなアクセントを持ったデザイン書体「DFP優雅宋」(ダイナコムウェア)。横画と縦画が交差するところに切れ目を入れて魚のウロコのような加工を施している。「連載時はタイトル文字に“人魚”を意識したかわいらしい雰囲気でしたが単行本ではそれらを省き、元の書体を生かすデザインにして大人っぽさを強調しました」
(寺田鷹樹[アフターグロウ])

月刊「MdN」2016年4月号より転載

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