連載コラム
2015年08月21日

ぬらくら 第57回 色絵文字

インターネットの利用が一般的ではなかった1995年頃までの電子メールは、 その都度、パソコンに繋いだモデム (MODEM) で電話回線にダイアルアップ接続して利用する、いわゆるパソコン通信サービスの一つでした。
読者の中には電話回線を切り忘れて高い電話料金の請求に冷や汗をかいた方も いらっしゃるのではないでしょうか。

そんな電子メールの中で、文字だけでは表せない微妙な気持ちを伝えるとき、あるいは文中に添えるチョットしたアクセントが欲しいとき、顔文字 (エモティコン/Emoticon)(*1)を利用したものです。やがてその顔文字が日本で独自に発展して絵文字と言われるものになります。

最初に絵文字が搭載されたのはパソコンではなく携帯電話でした。携帯電話の絵文字(*2)には人の表情だけではなく、電車や自動車、家やビル、 カクテル・グラスやビール・ジョッキなど幅広い題材が、それも色つきで採用されています。

そしてその絵文字が、今はスマートフォンやタブレットPC、パソコンなどで 利用されているのは皆様がご存じの通りです。

その絵文字の新しい規格が発表になりました。
既に、この規格をご覧になった読者もいらっしゃると思いますが簡単にご紹介します。

ユニコード(Unicode)(*3)の最新バージョン8.0が2015年6月に発表されました。
Unicode8.0には41の新しい絵文字(民族の多様性に対応するための5つの エモジ・モディファイアを含む)と、日本語、中国語それに韓国語の5771の 新しい表意文字、さらにジョージア(グルジア)の新しい通貨記号Lariとチェロキー語の86の音節用小文字が含まれています。

また、既存の書記体系(script)にArwi(アラビア文字で書かれたタミル語)、 Ik(ウガンダ)、Kulango(コートジボワール)などのアフリカの言語を サポートするための文字も追加されました。
バージョン8.0はバージョン7.0に新たに7716の文字と6つの新しい書記体系 (Script)を追加し、合計で 120,737文字を収録しています。

同時に「ユニコード技術委報告書 #51 ユニコード絵文字 (Unicode Technical Report #51 UNICODE EMOJI/UTR #51)」(*4)も発表されています。

UTR #51は、異なるプラットフォーム間で、相互に、絵文字をやりとりできるように するための設計ガイドラインと資料を提供し、絵文字の由来を明らかにし、 それらがどのようにしてUnicodeに収録されるに至ったのかを説明しています。
資料は絵文字として表示されるシンボルの指定、新しいエモジ・モディファイアの 使い方、結合子を使った絵文字の形成方法について述べており、絵文字を実装するときの道案内として利用されます。

Unicode8.0では民族の多様性を表現する手法としてエモジ・モディファイアという 特殊な符号を採用しています。この符号は単独では色見本チップのように表示されますが、 対象となる人の顔や手・足などの絵文字の直後に置かれると、その絵文字と結合して 特定の肌の色調を持った一文字に変化します。エモジ・モディファイアは5種類あり、それぞれに「フィッツパトリック・スケール (Fitzpatrick Scale)」に基づいた肌の色調が割り当てられています。

絵文字の世界が文字集合の世界標準である Unicode に Emoji として採用された わけですが、日本で独自に発展した絵文字とその文化が、世界のネットワーク上 でも愛される環境が、いよいよ整ってきたようです。

ここで裏話を一つ。

民族の多様性に対応した絵文字が実現するきっかけになったのは、なんとSEPHORAという化粧品会社の Twitterに書き込まれた、

“RT if you want more colors for the nail emoji”
(もっと沢山のカラー・ネイル絵文字が欲しければリツイート)

……なのだそうです。

このツイートから始まった、絵文字の「民族の多様性」への流れを、文字と コンピュータのフリーライター・小形克宏さんが「どんな人々がUnicodeの絵文字に 『民族の多様性』を求めているのか?」(*5)と題して詳しく書かれています。

奥の深い話が展開されているので、ユニコード8.0の絵文字に興味をお持ちになった読者には一読をお勧めします。


*1 顔文字(エモティコン/Emoticon)
顔文字。フェイス・マーク(Face mark)とも言う。 ラテン・アルファベットの記号を組み合わせて、文中で表情を持った顔のように表現したもの。 代表的なものに :-)笑顔、:-(しかめ面、:-o 驚き顔、:-p 舌を出す、などがある。

*2 絵文字
絵文字は日本生まれ。
携帯電話で絵文字を利用できるようになるきっかけを作ったのはNTTドコモで、 1999年2月に絵文字のサービスを始めたことによる。NTTドコモを追いかけるよう にして同年の4月にはDDI(現KDDI)が、そして10月にはJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル) が絵文字を搭載している。
当時の絵文字は同じ電話会社同士なら問題は起こらなかったが、他の電話会社の 携帯電話に絵文字を送ると文字化けを起こした。

*3 ユニコード(Unicode)
符号化文字集合や文字符号化方式などを定めた文字コードの業界規格。
1980年代にゼロックス社が提唱し、マイクロソフト、アップル、IBM、 サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード、ジャストシステムなどが 参加するユニコード・コンソーシアムによって作られ、現在に至っている。
1993年に国際標準との一致が図られ、Unicode 互換の ISO/IEC 10646 が制定されている。

*4 ユニコード技術委報告書(Unicode Technical Report/UTR)
ユニコード技術委報告書は技術仕様(Specification)ではない。 有益な情報の提供を目的としている文書。提案書。

*5「どんな人々がUnicodeの絵文字に『民族の多様性』を求めているのか?」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141128_678029.html

【参考資料】
1.ユニコード・コンソーシアムのホームページ
https://www.unicode.org/
2.ユニコード・コンソーシアムのブログ
https://blog.unicode.org/
3.インターネット・ウォッチ
https://internet.watch.impress.co.jp/
タイトルの「ぬらくら」ですが、「ぬらりくらり」続けていこうと思いつけました。
ぬらくらは、ダイナフォント News Letter(ダイナコムウェア メールマガジン)にて連載中です。
いち早く最新コラムを読みたい方は、メールマガジン登録(Web会員登録)をお願いいたします。
メルマガ登録はこちら

  著者 Information

著者
ダイナコムウェア コンサルタント
mk88氏

PROFILE●1942年東京都生まれ。
1966年桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。
設備機器メーカー、新聞社、広告会社を経て、
総合印刷会社にてDTP黎明期の多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。
1998年よりダイナコムウェア株式会社に勤務。
Web印刷サービス・デジタルドキュメント管理ツール・電子書籍用フォント開発・
フォントライセンスの営業・中国文字コード規格GB18030の国内普及窓口等を歴任。
現在はコンサルタントとして辣腕を振るう。
Blog:mk88の独り言

次 : ぬらくら 第59回 ウエブ・ページの文字組み   
前 : ぬらくら 第57回 色絵文字