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ダイナコムウェア株式会社の前身であるダイナラブジャパン株式会社は、1993年に設立されました。 それ以降、私たちの製品である「DynaFont」は、いろいろな場面で皆様に愛用されて今日に至っています。 しかし実際には、「DynaFont」はそれ以前から日本のIT関連製品に搭載されて、人知れずに皆様に使用されていたのです。 ここで、皆様に「DynaFont」の生い立ちと、その後の展開を簡単にご紹介しましょう。
「DynaFont」の生みの親である 華康科技開発股份有限公司 (DynaLab Inc.) は、1987年に台湾台北市で設立されましたが、そのきっかけとなったのは、日本と同じく漢字圏である台湾での、優秀なフォント技術の発明と、その事業化への努力でした。 それまでコンピューターで使用されていた文字は、ドットで構成された、いわゆるドットマトリックス型のフォントで、構成するドット数も少なく、従って品質も低いものでした。 このようなフォントでも、当時主力であったインパクト型のプリンターでは、プリンター自身の性能を考えれば充分でしたが、その後にレーザービームプリンターに代表される高性能のノンインパクト型のプリンターが登場してきたことで、市場ではフォントに対して、 a.文字品質の向上 b.出力する文字の種類、大きさの自由度の拡張 に対する要望が強くなってきました。
これらの要望に応えるために開発されたフォント技術が 「DynaFont」で、日、米、台湾をはじめとして、主要な国々で特許を取得しました。 「DynaFont」は、いわゆるアウトライン・フォントで、基本的に各々の文字それぞれの輪郭情報を全て持っていて、それを印字の際の設定に応じて高密度のドットマトリックス上に展開する方式のフォントです。 一方で、アウトライン・フォントでは全文字の詳細な輪郭情報を持つことから、データのサイズが大きくなることが一つの問題点でした。 しかし、「DynaFont」では、それぞれの書体の全文字を解析して、各々の文字を作り出すために必要な数百個の共通部品(ストローク)を抽出し、文字毎にその部品をどの位置に、どの大きさで組み合わせるかを定義することによって、一書体の全部の文字を作り出すことに成功しました。 この独自のストローク方式という一種の圧縮技術により、高品質を保ちながらデータ量を比較的小さくすることが可能となり、これにより容量が小さく高価であった当時のメモリーを、機器に実装し、文字生成する際に大きなメリットをもたらしました。 これらの優れた独自の技術が、この特許に盛り込まれています。
この「DynaFont」を販売するにあたっては、地元の台湾も勿論重要でしたが、市場の規模がはるかに大きい日本市場に先ず着目しました。 しかし実際に日本市場をターゲットとした営業を展開するにあたっては、日本市場を熟知したパートナーが必要でした。 そこでDynaLab Incの人的チャネルを通じて、ある日本の航空・宇宙関係の中堅ハイテク技術専門商社に打診し、その商社が独自に「DynaFont」の技術面と市場での可能性を徹底的に分析した上で、1988年半ばにお互いに手を結ぶことになりました。 この商社では、「DynaFont」プロジェクトを担当する新規事業部門を設け、技術者を主軸としたチーム編成で、それ以降実質的にDynaLab Inc.の日本での営業技術部門としての役割を果たしていくことになります。
当時(1988年頃)の日本のPC市場は NEC 社のPC9800シリーズ(16ビット機)が普及していた時期で、PC-AT互換機は皆無の状態で、文書作成などの分野では日本語ワープロが圧倒的に大きなシェアを占めていました。 そこで、一般のPCユーザーに販売する方向ではなく、先ず日本語ワープロのメーカーに対して「DynaFont」を紹介することから事業を展開していくことになりました。
当時は、書院(シャープ)、すらら(松下)、文豪(NEC)、ルポ(東芝)、オアシス(富士通)、などの他、キヤノン、カシオ、など多くのメーカーから日本語ワープロが発売されていました。 これらのメーカー各社に、「DynaFont」の技術と書体を紹介することから始めていきましたが、その過程で今では考えられないようなこともありました。 技術と書体の紹介をするために、台湾での「DynaFont」開発のプラットフォームであった IBM PC-AT 互換機を客先(メーカー)まで携えて行き、説明とデモを行ったのですが、最初に出た質問は「そのPC は何なのか?」というものでした。 先ずIBM PC-AT 互換機の説明を済ませてから、初めて本題の「DynaFont」の技術と書体の説明に入っていくような状況でした。 「DynaFont」書体といっても、当時は「明朝体」と「ゴシック体」の2書体が開発されていただけでしたが、それでも「DynaFont」の高い品質と、文字サイズに対する柔軟性には大きな関心が示されました。
次のステップでは、「DynaFont」搭載に興味を持っていただいたメーカーで、この「DynaFont」を日本語ワープロに搭載するためにはどうすればよいかという点について、各メーカーの開発技術者と討議して解析していく必要がありました。 当時の日本語ワープロは、各社の独自のプラットフォーム上に構築されていたので、お互いに詳細な部分まで議論し、確認しながら進めていく必要がありました。 一方では、「DynaFont」の搭載による市場での競争力強化について、マーケティングと販売の視点から徹底的な分析が行われました。
これらの過程を経て「DynaFont」の採用が正式に決定されたメーカー各社と、日本のメーカー事業所、及び台湾のDynaLab Inc.の双方で、お互いの開発技術者間の詳細、且つ高度な共同作業が徹底して行われました。 一例としてDynaLab Inc.側では、「DynaFont」を日本語ワープロ上で使用する際のインターフェースの問題を解決するために、専用のASIC 2個を開発しました。 それらは、フォントデータを収納するASICと、そのデータを展開する際の高速演算を行うASICで、これにより日本語ワープロのプラットフォームへのインプリメントの親和性が大きく向上しました。 又一方で、ワープロ・メーカーからの要望をうけて、新しい書体(楷書体、丸ゴシック体など)の開発も平行して行われました。
このような努力の結果、「DynaFont」搭載の第1号として、1990年初頭にシャープ(株)から、ラップトップ型ワープロ「書院」 スーパーアウトラインフォント(DynaFont)搭載 WD-A340 が発売されました。 この機種は、圧倒的に優れた印字品質と、自由に文字サイズを変更できる(スケーラブル)機能によって、市場で長期間トップシェアを維持する成果をもたらしました。 後を追って、松下電器産業(株)(現パナソニック)からも、同じく「DynaFont」を搭載した「すらら」が発売されました。 これらの機種に代表された「DynaFont」のもつ高機能・高品質は、その後の日本語ワープロの世界で不可欠なものとなっていきました。
これらの高機能化によって日本語ワープロは全盛時代を迎え、その総生産量は最盛期では年間数百万台に達しました。 一方PC 側では、PC-AT 互換機の普及や、Windows 95の発売などによって、より使いやすい環境が徐々に整ってきました。 PCの性能が向上するにつれ、多様なアプリケーション・ソフトウェアが開発され、ワープロ・ソフトの分野でも、より使いやすいものになっていきました。 これらの背景の変化に伴って、文書作成などでも徐々に日本語ワープロとPCの立場が入れ代わることになっていきます。 このような大きな将来動向の変化を見据えた形で、ダイナラブジャパン株式会社が1993年に設立されました。 そして、それ以降の PC の世界で、「DynaFont」が皆様のお役に立つために、さらなる展開を示していくことになります。
明朝体、ゴシック体、楷書体などの基本書体は何れも重要な書体ですが、私どもは将来のPC の世界では、いろいろな書体がより広く一般の方にも使われるであろうことを予測して、基本書体とともに多くの書体バリエーションの開発に取り組みました。 従来の基本書体に加えて、新しいバリエーションの書体が付け加えられた最初の商品である「DynaFontプレミアム17書体パックTrueType版」が発売されて、市場で大きな反響を呼びました。 その後も、プリンターの高性能化とも相まって、フォントが使われる場面が非常に多様化していくことになりました。 この多様化していく応用面をフォントの立場から予測して、将来の市場からの要望に的確に応えるべく、当社独自の特色ある書体の開発と、そのバリエーションを計画し、多くの種類の高品質フォントを市場に供給しながら現在に至っています。
一方で、最近では一般的な用途だけではなく、機器や装置に組込むためのフォントに対する要望が高まってきました。 様々な機器、カーナビゲーション・システムなどで、高精細で大きめのディスプレイが採用されるにつれて、文字の種類や大きさの自由度、高い品質、多言語などが求められています。 一方で、機器の搭載上の条件などから、さらに軽量で柔軟な性能が求められ、これらの要望に応える形で、「DynaFont」のもつストローク方式の利点を最大限に生かした組込み用フォント「DigiType」が開発されました。 皆様が日常何気なく使っている機器の中でも、組込み用の「DynaFont」や「DigiType」がお役にたっているかも知れません。
これからも私どもダイナコムウェア株式会社は、アジア最大手のフォントベンダーとして、フォントはもとより、文字に関わる様々な事業を展開して参ります。