ダイナフォントストーリー
2016年11月28日

なぜ童話を基にしたミステリー小説の本にこのフォントを使ったのか

ぼくらはフォント探偵団♪ 調査9/月刊「MdN」2016年10月号特集

レトロで可憐な雰囲気のこのフォント、何か気になるわ!
調査9の答え…麗雅宋W5(一部エレメント加工)
なぜ童話を基にしたミステリー小説の本にこのフォントを使ったのか
 
深みのある色合いの可愛らしいイラストに、細めのウェイトのレトロな書体を合わせた書籍「土曜はカフェ・チボリで」。そのデザインを手がけた西村弘美さんは、作品の内容ごとに幅広いフォントを使い分けているのが特徴だ。『土曜はカフェ・チボリで』で使用したフォントとその使い方について西村さんにフォント探偵団が直撃した!

西村弘美さんは主に書籍のカバーデザインを手がけるデザイナー。多様なジャンルの中でも、ライトノベルと文芸の中間に位置づけられた「ライト文芸」という、今注目のジャンルを手がけることもある。そういった場合、どのようなフォントを使っているのだろうか。
「ライト文芸は親しみやすいイラスト系の装画が中心なので、イラストそのものを生かして、その他にあまりニュアンスを入れたくないときは、シンプルなゴシックやオーソドックスな明朝系の書体を合わせることが多いですね。とはい え豊富な選択肢の中から一番しっくりくるものを選びたいので、フォントの数は常にたくさん用意してあります」 近年では作品のイメージを強調し、よりわかりやすく伝えるアクセントとして、タイトルにデザイン系の書体を使うことも増えてきたそうだ。
「以前はデザイン系のフォントは、文字を大きめに配置し、フチにグラデーションをつけたりして、とにかく目立たせてほしいというクライアントの要望も多かったんです。でも、最近ではイラストや作品の印象の兼ね合いを考え、〈ア クセント〉という感覚で、比較的シンプルに使いますね。例えば、現代に生きる陰陽師が登場する作品には、ちょっと和風な雰囲気のデザイン系の書体を取り入れてみたり」
「マッチ売りの少女」や「人魚姫」などアンデルセンをモチーフにしたミステリー小説『土曜はカフェ・チボリで』の タイトルには、レトロな雰囲気のデザイン書体を使用した。
「麗雅宋W5(
麗雅宋W5 Win版麗雅宋W5 Mac版)を使っています。秋の夜の深みのある風景と女の子のイラストのイメージに合わせ、なおかつ童話を題材にしたストーリー性をフォントで強調したかったんです」
このフォントは、明朝体をベースに大正ロマンのイメージを表現したものだという。さらに「カ」の文字の左はらいや 全体の形を変えたり、「で」部分に装飾を加えている。
このように文字の一部を加工することで、細めのウェイトでも存在感があり、レトロな中にも洗練されたイメージを感じさせるタイトルに仕上げたという。これで使われている書体やその使われ方の謎が解けた!
この麗雅宋W5を収録したフォントの年間ライセンス「DynaSmart V」は、表情豊かなフォントが数多く取りそろっており、従来の印刷物だけでなく、映像、デジタル、ゲームソフトなどでも幅広く使用できるのが魅力。
DynaSmart Vに収録されている「娥眉明朝体やロマン鳳などは、レトロなイメージに合わせたり、強調したい時に使うことが多いのですが、今後はそのような印象に左右されず、さまざまな場面で使ってみたいですね。実際に試してみると、案外合うという再発見が多いので」と西村さん。
自由な発想で柔軟にデザインに取り入れてみたくなる個性的なデザイン書体。これらを手に入れたら、さらに表現の幅を広げることができそうだ。
 
 
カで
左は麗雅宋W5の「カ」と「で」の文字。これをカバーにレイアウトしたタイトル文字では、形に調整を加えて右のようにしている。結果、レトロかつ洗練されたイメージになった。麗雅宋W5 Win版麗雅宋W5 Mac版
情報提供者
西村弘美[ にしむら・ひろみ]

角川書店装丁室勤務を経て、2013年4月よりフリーランス。主に本の装丁を手がける。
url. nishimura-h.jimdo.com
 
なぜ童話を基にしたミステリー小説の本にこのフォントを使ったのか
月刊「MdN」2016年10月号より転載

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